◆引越し
人生は山あり谷あり、平坦な道を歩もうと願っても決して叶うことはない。それが人生なんだと思う。
人生に転機というものがあるのならば、私の場合、まさに今なのだろう。平穏無事に一生を過ごそうにも、当面は望むべくもない。
8年間住んだ神奈川県秦野市を離れ、東京都小平市に引っ越しました。住所は東京でも23区(特別区)ではないが、東京は日本の首都であらゆる価値観の発信地といえる。小平市はそんな東京の片田舎であるが、しかし秦野ののんびりした風土と比べると、はるかに都会的だ。
ノスタルジーのようで恐縮だが、秦野は私の趣味=ドライブの活動の場として格好の場所だった。
南西に箱根があり、さらに南に足を伸ばすと伊豆半島にたどり着ける。西には富士山があり、北にはちょっとマイナーだが宮ケ瀬というドライブスポットがある。
いずれも1〜2時間の「ちょっとドライブに行ってくる」という感覚でたどり着ける絶妙のロケーションだった。「東京の人は東京タワーに登らない」の格言どおり、それらドライブスポットのもっと近場に住んでいたのなら「ちょっとドライブに行ってくる」とは思わなかったのだろう。
秦野の気候は、今まで住んだ土地の中では温暖だった。
一つだけ怖いのが地震だった。1980年頃から言われてきた、東海地震の警戒エリア内なのだ。また市周辺を活断層が走っており、その中には専門家が一級の危険活断層と断じる場所もあった。そのため、ちょっとした地震の揺れでも、大袈裟なくらい動揺してしまう日々だった。
一方の小平市は、ドライブのための道路網はお世辞にも整備されているとは言いがたい。先日のこと、関越道の所沢ICから降りて新居まで車を走らせたが、ひどい渋滞に巻き込まれてしまった。付近の道路網が複雑で道幅も狭く、また変則的な形状の交差点も多い。もちろん車の交通量も多く、渋滞する要因はあり過ぎるほど存在する。
この付近に快適なドライブを楽しめる道などあり得ないとさえ思える。当面は、主要ICや幹線国道へアクセスする抜け道ルートを探すドライブを楽しむ週末が続くことになりそうだ。
しかし新しい住所の欠点ばかりあげつらっても仕方がない。東京の片田舎でそれなりに都会ということは、それなりに便利さが得られるというもの。
買いたいものは近くで得られるし、気に入らない店があったら他に行ってしまえば良い。たまに本を探したり、あるいは人に会うために新宿あたりまで出かけていたが、それもずいぶん近くなった。決して悪いことばかりとは言えない。
「人間至るところに青山あり」は中国の白居易の言葉だったか。白居易は白楽天とも呼ばれ、晩年左遷の憂き目に遭い辺境の地に引っ越したとき「晩年を過ごすにはちょうど良い」と、極めて楽天的な発想でいたという。
私も同じように楽天的な前向き発想で、この小平市の地でもまた"青山"を探していこう。そう思い至った今日この頃なのです。
[2000.09.30 by かっきい]