世界初演の「ボレロ」
・オーチャードホール10周年ガラ (Bunkamuraオーチャードホール) 1999.9.5
指揮: 井上道義 /高関健
東京フィル・新日本フィルダブルオーケストラ
出演: 小山実稚恵(p)/ホーカン・ハーデンベルガー(tp)/須川展也(sx)/東儀秀樹/中丸三千繪(s)/ナムドゥー・キム(T)/
リチャード・ストルツマン(Cl)/
佐藤允彦トリオ/熱帯JAZZ楽団/熊川哲也
第1部クラシック 豊かなる源流
ワーグナー「タンホイザー」序曲
プッチーニ「トゥーランドット」より
モーツァルト「魔笛」より
プッチーニ「マダム・バタフライ」より
アルバン ヴェネツィアの謝肉祭
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第1楽章
第2部 ポップス しなやかな越境
牧神の午後への前奏曲~ふるさと 雅楽・オーケストラ リミックス・バージョン
ピアソラ リベルタンゴ 他
デューク・エリントン、セロニアス・モンク メドレー
Mission Impossible,September,My favorite
things などから
第3部 バレエ 新しき祝祭空間
ラヴェル:ボレロ 10周年委嘱振付 振付:ローラン・プティ(世界初演)
オーチャードホール10周年GALAチラシより
オーチャードホールに向かう途中、渋谷イチ大きな本屋さん「ブックファースト」を通りすぎたところで、『F』のヒカルのおじいちゃん役、そう天本英世さんが前から歩いて来るでないかい!
こんなところから私のハート・ウォーミング・アップは始まってしまった。
第1部、トランペットのホーカン・ハーデンベルガー。
彼の一糸途切れることのない演奏は、聴き惚れたね!
オーチャードホールでの演奏は広すぎるけど、贅沢をいうなら、どこかのレストランバーで肘をつきながら聴いてみたい。
お行儀悪いけどね。
第2部、東儀さんの篳篥(Hichiriki)、生演奏を初めて聴きました。
ドピッシュー/岡野貞一 「牧神の午後への前奏曲」~ふるさと
もう、悠久の世界へタイムトラベルさせられ、それはもう心地よい。
騒音のない日本の昔、文楽・能・狂言・歌舞伎とはまた別の世界を教えてもらいました。
熱帯JAZZ楽団は3年ほど前、新宿にある某ライブハウスで演奏されてたのを観た事があったのですが、そのお店自体の雰囲気があまりよくなく、私的に食事も合わず、居るのもつらいお店で
熱帯にも「こんなところで・・・、可哀想だな。」と思ったものでした。
JAZZというには、賑やかなまさに楽団という名がぴったりな彼らです。
オーチャードホールは、広すぎる感じではありますが、広いステージ上、センター寄りに詰めたセッティングは彼ららしい、と思いました。
第2部が終わり、1階ロビーにあるプティからのメッセージの拡大ボードをデジカメで撮ろうとしたとき、後ろに着替えを終えた東儀さんがいらっしゃる!
今まで結構いろんな場でスターに会ってますが、お写真を一緒に撮ってもらうことはあっても、サインを頂くとか、握手をして頂くということを日本ではお願いしたことないのだ(というのは、以前ロンドンのホントに静かな通りで某UKロックミュージシャン Sに会ったときは握手、サインを求めてしまった)。
東儀さんは、私の尊敬する哲也と親交の深い方、尚且つ初めての鑑賞にも感銘を受け「サイン、頂けますでしょうか?」とお願いしたのですが、ここで書いてしまうと皆に対応しなければならない、という当然の理由でNGでしたが、握手をして頂けました。
私の初右手は、東儀さんに捧げました。あうぅ!
私は1階の34列センターでしたが、段差のある席で障害物なく観れ、いよいよ始まるボレロはもうかぶりつき。
この席は機材もあって、後ろから2列目でしたが、お客様の様子もよく見えました。
人間研究家(うそうそ)ゆりぼうは、ボレロの哲也を見守るお客様も視界に入り、
私より熱いファンが沢山いるんだなー、と思い知り、且つ、私はCoolだわー、とも気付きました。
第3部、ボレロは固唾をのんで魅入りました。
プティの意図するところを観る側に伝えきったと思います。
プティの振付けがどうの、ということを、それ以前のことを知らない私は言えませんが、旧東欧の世相を渡ったこともあるプティのボレロに対する意図がそういった背景から私なりにですが感じました。
例えば戦火の歴史も、日本とはあまりにも違う背景があるし。
そういう背景から、同じ世代の考え方も随分違う。
日本人が受けとめるにはその土壌を知ることも必要でしょう。
以前、同世代の旧ユーゴの方とお話をしたとき、あまりにも日常の価値観に相違があたことに衝撃を受けたものでした。
逆にもしも、日本人のどなたかがボレロの振り付けをとしたら、それは勿論、相当違うもの、日本人万人にそこそこ理解されるものが出来あがると思う。
プティならでは振付けで、世界のコラボレーションを芸術がやってのけた、という感じです。
(と、お、お、お、お前は、わかっちょらんっっっ!という御叱責はご勘弁下さい。超私的な感想です。)。
振付けに圧倒的なインパクトは、というとどうか・・・、なんですが、オーチャードのステージ上の哲也の存在感は群をぬいてます。
哲也の今更言うこともないんですが、優しい動きも素晴らしかった!
今回のボレロを観て、哲也というダンサーが、これまた今更かもしれないけど、大変素晴らしいと納得させられました。
時に振りを観るものの期待の見事裏を進んだとしても、ダンサーは常に熊川哲也=ダイナミック、情熱的、しなやかなで、哲也自身が相乗効果を生むようなダンサーであり、常にチャレンジャーで魅力的なダンサーでいる。
時に、茶番に感じるまで落ちることがあっても(あのルームランナーのような音は気になり、つい足元に目が行ってしまったんですが、あれはやむを得なかったんですかね?)
私達の前に奇跡を見せようをする時、抑制をきかせてあくまで丁寧に具体的に描写しながら、同時に感動的といえる程のダンサーのこまやかな心情も私達は伝わってくる。
今後、何かの機会にボレロを演じることがあっても、今回のような規模のオーケストラの生演奏に囲まれ、踊ることがあるだろうか、と思うと、尚更貴重な公演だったと思います。
盛りだくさんのGALAだったなー!大満足!!
オーチャードホール1Fロビーパネルより、「ローラン・プティからのメッセージ」