本家ニュース | Topics | Top Page | Albums | Japanese EJ Mailing List |
来日関連 | 楽譜関連 | Interviews | Link集 |
プリアンプも、いつも使っている512 APIプリアンプと、API 560グラフィックEQを使った。エフェクト用に使うのでない限り、ミックスダウンの時にコンプレッションを使うのはあまりいいとは思わないんだが、この曲に限っては、ドラムとベースにもうちょっとパンチを与えようと思ったので、ドラムとベースは全部、SSLQuadコンプレッサーを通したよ。
ベースについては、普段使っている装備とそれほど変わらない。プリアンプとEQはAPIを、アンプのマイク録りにはAKG 414とCountryman D.I.を使った。ミックスダウンの時は、ドラムとベースを一緒に汲み上げ続けるために、ドラムと同じくSSL Quadコンプレッサーを通したんだ。
Kyleが使っていたベースが何だったか憶えているとは言い難いんだが、間違いなくFender Jazzだね。彼はあのパートでは、スティックベースを模してやっていたんだ。どうやってやっていたのかは、彼に聞いてみないとわからないがね。
楽器の色々な方向性もそうだが、彼は曲作りや、書いた曲に自分のギタースタイルをどう統合していくかといったことに焦点を定めたいとも考えていると思う。Ericには出来ることがそりゃ一杯あるし、だから方向は、その時点で彼が何をいいと思うか次第、まあコインの裏が出るか表が出るか次第といったところだろうね
質問1) | よい録音機材やよいエフェクトは別として、ハードドライブベースのホームレコーディングのセットアップに良いとRichardが思う機材を3つ上げて下さい(特定のブランド名ではなく、機材のタイプとして)。
|
質問2) | よいミックスが出来るようにするには、何かヒントがありますか?つまり、あるサウンドをきっちりつかめるのはどのあたりか、とか、ベストサウンドを録音するにはどんな方法がいいか、とか、経験的につかんだコツは?
|
質問3) | スタジオにこもって同じテープや同じテイクをさんざんいじり回している時、どうやってマンネリにならないようにするのですか? |
今度はデジタル機材の方だが、まず、デジタルの長所と短所を心得ておくことが大切だ。操作性や編集機能がデジタルの長所だね。音的には、まだまだ2インチ16トラックアナログマシンに対抗出来るほどのものじゃあない。録音機材にもしデジタルを選択するなら、いいサウンドを録ろうと思ったら、マイク−プリアンプ−EQ−ハードドライブのルートの各過程で、出来ることを総動員することになるのは覚悟しておくことだ。古い真空管プリアンプ、古いNeveやAPIのプリアンプを使って音楽的サウンドを得るのが私の好みだね。ファンキーな安いコンソールすら使ってるよ。Panasonicの、Ramzaというコンソールで、これがEricのギターサウンドに、様々な色づけをしてくれるんだ。
(2)の答
そうねぇ、ミキシングには、絵に色を塗るようなクリエイティヴな才能が必要なんだな。その糸口があるかないかだね。才能の代わりになるようなコツは存在しない。糸口があったとして、私がミスを犯さないように気をつけている事なら、いくつかあるよ。中でも一番大変なのはしっかり実像把握をするということだ。ミキシングをしている部屋でミックス用に使っているスピーカーが、実像の原型。ある部屋で非常にいいミックスが出来たとしても、もしその部屋が適切でなかった場合、結局その部屋でしかいいサウンドにならないミックスが出来上がってしまうんだ。
適切なボトム、適切なトップ、中間レンジの適切なバランスを得るためには、実像と参照出来るようなものを持っていることが大切だ。私は2つの方法をとっている。まず、リアルタイムのアナライザーを使用すること。私が使っているのはPro Audio Analyzerで、周波レスポンスに関しては、どうなっているかはこれで把握する。スピーカーがどの周波でだめなのかといったようなことがわかるんだ。サブソニックが制御不能になっていないことやハイが伸び過ぎていないことなどが確認出来る。自分の好きなレコーディングをアナライザーにかけて、どんな風になっているか目で確かめてみるといい。何がいいか何が 機能しないか参照出来るものが、そうやって得られる訳だ。
もうひとつはヘッドフォンで、録音に関係のないルーム・アコースティック(訳注:室内の音響特性)を取り去り、非常に良いフラットレスポンスを聴かせてくれるやつを2セット見つけたんだ。Beyer 160DTとGreyco Series Oneの2つで、とても使える。
(3)の答え
今やってることに無感覚にならないようにするコツは特にない。そういうことは、レコーディングにはつきものなんだよ。70年代にバンドをやっていて、初めてのレコードを制作した時、あるプロデューサーと組むことになったんだ。私の好きなレコードをずいぶん手がけた人で、とても尊敬していた。初めて彼の家に行った時、レコードのコレクションを見渡してみて、彼の手がけたレコードが全然ないのに気がついたので、理由を尋ねてみると、「いずれ君にもわかるよ」とだけ答えたんだ。
レコード録音の過程は延々と続く退屈なもので、全てをやり尽くした後では、創り上げた完成品を楽しむなんてことはそうそう出来るものじゃあない。10年たってその作品を聴き返してみて、やっと楽しめるなんてこともあるよ。マンネリ脱出のためにやっていることといったら、なるべく他の音楽から離れている、くらいのものだね。日がな一日音楽の録音やってて、家に帰って音楽聴くなんて、出来たものじゃない。それでは音楽的インプットが多過ぎるんだ。マンネリに陥らない方法としてひとつ有効だと思うのは、プロセスを混ぜこぜにするということ。レコーディングの各過程には、それぞれ楽しい部分、困難な部分がある。以前Ericとやった時、どうにも動きがとれない状況になったことがあったんだ。リズムパートを全部やり、それからリードをやり、その後ヴォーカルを全部やる、という方法がある。その時は、それが有効だと思っていたのでその方法でやったんだが、結局それで皆消耗し切ってしまった。もっと小さな区切りに分けた方が楽しくやれるんだ。後になってわかったんだが、一度に2曲やると楽しく出来る。 そうするとA点からB点への切り替えも、もっとパッと出来るし、努力のし甲斐もあるというものだ。
ハイエンドについては、10K〜16Kの間で少しばかりEQをかけるだけで、その方がハイエンドでもいい音になると私らは思っている。その代わり、ハイは2〜4dbばかり落ちてしまうんだが、それでもEQをかけてしまえば、24ビットよりも心地よいサウンドになる。技術的にがたがたやらずに一番単純にやれる手が、よりアナログなさウンドである16ビットの使用、という訳だ。24ビットはハードエッジでいかにもデジタルなサウンドなのでね。24ビットがしっくりこないのは888(訳注:Digidesignのオーディオ用インターフェイスのシリーズ名。Pro Tools使用時のオーディオI/O用に推奨されている)のせいじゃないという説には頷ける。
888は16ビットの方で使っているんだが、音はとてもいい訳だし。ここまで言ってきた事は、私らが「......と思っている」ことであって、技術的裏付けは全然ないんだ。例えば「出てきた音がどこをどう通るからだ」といったような、コンピューターの内部的要因みたいな裏付けはね。
多分ここで披露した私らの感覚に対して、随分異論もあるだろうとは思うが、個人的にはそれは問題じゃないね。好きなものが好きだし、私は16ビットを気に入っていて、Pro Toolsというソフトも気に入っている、というだけの話だ。私らは、今でも録音の70%は2インチ16トラックアナログでやっていて、録ったものをPro Toolsに落とし込む。その時点で、全部デジタルになるという寸法だ。
ライヴレコード(Live and Beyond)の場合は、Tascam DA-88を3台使って録音して、それを16ビットのPro Tools 888を通して、アナログパスから48KでPro Toolsに落とした。
私らはBernieに、コンプレッションを和らげるように頼んだんだ。彼は、自分もコンプレッションをいいとは思っていないが、なにしろCDの音レベルは最大にするようにという相当な圧力があるのだと教えてくれた。で、いくつかのCDにそれぞれ違った量のコンプレッションをかけてみて、結論として、中間ともいうべきセッティングで行こうと決めてね。このリモートコントローラーの時代に、レベルが最大かどうかなんざ誰も気にしやせんよ。聴き手は、音がデカくないと思ったら、自分のリモートコントローラーで音量を上げるだけの話なんだから。私としては、ぼやけた部分にちょっとコンプレッションかけて引き立たせるのは好きだが、rock物がコンプレッション的にがんがんやられるのはいやだね。コンプレッションのセッティングには、少しばかりの妥協も止むを得まいが、もっとソフトでも全然構わんと思うよ。コンプレッションを最大にしても、何の助けにもならんね。