1999年3月 EJインタビュー その2
出典:EJ-l Mailing List dd 24/Sept/98
copyright: Park Street/Eric Johnson, 1998
原text transcribed: Laura Small
「日本語文責: 山巻 由美子」
PS: 次の質問。「英国人ギタリストLarry DiMarzioのインタビューを読んでたら、Fenderのためにノイズレス・ピックアップを開発していたとあった。 そういったピックアップを試したり、考えてみたりしたことがある? Harmony CentralのピックアップやChris Kenmanのやつや、新しく出てくるノイズレス・ピックアップとか」
EJ: 何年も前にはね。ここ数年は試してない。本当にいいものもあるんだろうとは思うけど、いいシングルコイルの音だとは、僕は思わなかったんだ。そりゃハムは取り除きたいけど、いいトーンまで取り除くのはいやだもん。
PS: 君が使ってるChandlerのチューブ・ドライヴァーだけど、チューブはどんなのを使ってる?
EJ: えーと、一番いいのはユーゴスラヴィア製のやつだよ。当然、今じゃ入手は難しい。
PS: それ、どういうメーカー?
EJ: わからない。横のところにユーゴスラヴィアって書いてあるだけなんだ。Chandlerにはすごくいいよ。
PS: じゃ、二番目にいいやつは?
EJ: Sovteksのやつをつけることもあるな。
PS: 次。「Ah Via MusicomとVenus Isleではラップ・スティールが使われている。 どちらもずいぶん聴いてみて、ラップ・スティールをメロディをなぞるものとして使ったり、和音転回して使ったりしていると思う。
どういうチューニングをしていて、どんなラップ・スティールを使ってるんだろう?」
EJ: 古くてイカした50年代初期の6弦ラップ・スティールを2つ持ってるんだ。 1つはNationalで、もう1つはSupro。どちらも、トップに古い磁気ピックアップがネジでつけられてる。どういうピックアップなのかは知らないけど。 古いタイプの、びゅ〜んというこもったハワイアンな音がするんだよ。 それぞれ違うチューニングをしてるんだ。色々変なチューニングもするよ。バックにラップ・スティールのコードを入れようと思ったら、やりたいパートにはどんなチューニングが合うのか探り出すんだ。だから、ほんとに突飛なチュニングになることもあるよ。
PS: Pete Cornishに会ったことは?
EJ: 彼について聞いてはいるけど、会ったことはないな。
PS: 何かスポーツをやっている? どこかのチームに特に関心があるとかは?
EJ: 水上スキーが好き。
PS: 水にどっぷりつかる水上スキー?
EJ: そう、ラグビー式水上スキー。
PS: 次の質問。「自分のいつものやり方以外の方法で、自分のアンプとギターから違ったサウンドやトーンを引き出してみようとしたことはある? 例えば、Jimmy Pageはマイクを1本は正面、もう1本を背面に置いたり、階段の下や野原のまん中で録音したりして違ったサウンドを得ていたし、Duan Eddyはアンプを500ガロンタンクの中に落としてギター・トーンを録音したりする。Alex Lifesonは、Moving Pictures制作中に、スタジオの駐車場やら湖のほとりやらにアンプとマイクを出してギター・トラックを録ったと言っていた。何かそういったようなことをしている?」
EJ: 実験はしてない。でも、やりたいとは思うけど。室内で色々違うポジションや違うマイク技術を実験したりはしてるけど、僕がやってるのはそこまでだね。 今でもアンプがちゃんとした音を出すように努力してるんだ。スピーカーからちゃんとした音が出るようにね。でも、そうね、アンプとスピーカーに満足したら、今度はそれを使って色々な実験を始めてしまうような気がするな。
(笑)
PS: アンプのマイク位置はどうしてる?
EJ: Shure 57を使ってて、正面から4インチ離してセットしてるだけ。時々ルームマイクを10フィート離すこともある。
PS: アルバムのトラッキングだけど、それぞれを全部録ってひとまとめにする?それとも一度に一曲やる? それとも他のプレイヤーと一緒にライヴ(訳注)で録ることもあるかい? (訳注: この場合はlive performanceのことではなく、録音方法のライヴとデッドのライヴのことである)
EJ: そりゃそうだよ! そんなのいつも違うさ。
PS: トラックによるんだね。
EJ: そう。
PS: ParkerやPaul Reed Smithのような、比較的新しいギターをどう思う?
EJ: とてもよく出来たギターだよ。Parker1本持ってるんだ。Parkerの、Joni Mitchellモデル。アコースティックギターね。とてもいいギターだよ。
PS: なるほど。……君のSGは'63か'64の、vibrola tail pieceのついたやつだって言ってたね。SGの場合、本当に気に入ったものを見つけ出そうと思ったら、一山の中から探し当てなければいけないのか、それとも結構いいやつが多いのかちょっと知りたいんだけど。
EJ: そうねえ、SGは長いこと弾いてきたけど、いつもがっくりきちゃうのは、チューニングが狂ってくることなんだよね。CreamのWheels of Fireのトーンが出せるようなやつが見つかったりするたことも時々あるんだけど。でも普通、SGはチューニングが狂ってくる。 カリフォルニアの人に古いヴィンテージのMarshallを譲ったじゃない。装備を簡素にしようと思ってMarshallの山を処分してるところだったんだけど、その人が、'64のSGを持っててさ。ちょっとSGを探してるところだったから、試しにそれを送ってもらったんだ。そうしたらとても良くて、しかもチューニングも狂わないんだよ。それが、僕が見つけた内で一番狂わないSGだね。 SGて変なギターだよ。僕はほんとのSGファンじゃないけど、でも僕が手に入れたこれは、好きなんだ。とても素敵でね。
PS: ギタリストとして記憶されたい? それともソングライターとして?
EJ: 今でも、曲作りをうまくまとめられるように努力してるよ。それって重要だと思うから。もっといいソングライターになるには、まだずいぶんかかるだろうね。中間地点にいると、「自分には曲は書けない」と思ったかと思えば、次の瞬間には「すごいソングライターじゃないか」と思ったりする。多分僕はどっちでもないんだろうけど。ともかく、もっといい曲を書くことを身につけようと努めてるところなんだ。 僕はギタリストとして記憶されるんだろうと思う。それは僕の財産なんだからやめようとなんかしたらバカだよ。と同時に、自分のやってることの、いい媒体を見つけたいんだ。人の曲をやるんであろうと、自分のをやるんであろうとね。今度の新譜用に、人の曲を2曲やるつもりなんだ。 実はさ、僕は猛獣使いとして記憶されたいんだよ、ホントは。(笑)
PS: アコースティックのアルバムはどうなった?
EJ: 今やってる新譜は2巻セットの第1巻で、思ったより早く出せそうなんだ。この2巻セットは、もう曲もほぼ出来てるんだけど、とにかく2巻セットが終わったら、これが次のプランなんだけど-----全部アコースティックのアルバムを作りたいと思ってる。
PS: Morseとまたツアーしてほしいって言う人たちがいるよ。
EJ: いいね。
PS: ギタリストの中には、左手の指が右手の指より長い人がいるそうだよ。Paul Guilbertの左手の指がそうだというし、クラシックのギタリストの多くが同じように言ってるらしい。君のはどう?
EJ: うん、ちょっと長いと思うな。長い短いっていっても、ほんのちょっとの話だよ。たこの出来具合の違いだと思う。多分、機敏さの問題だよ。
PS: この先何年も、Les Paulみたいにずっとツアーしていくと思う? それとも、将来引退する時のことなんか考えるかい?
EJ: 僕はただ、自分の仕事をやり続けていたいだけ。自分のポケットを探って、もっと良くなろうと努力し続けたいんだ。聞いてくれる人がいる限りはね……。
PS: Hot Licks Videoの3本目の予定は?
EJ: 今のところない。けど、もうちょっとやりたいな。実際、ギターとアンプのセットアップや、いいトーンを得る方法なんかについて、小さなパンフレット本を書こうかと考えてるんだ。
PS: あ、実はそれがもうひとつの質問。君の本についての質問がいくつか来てる。
EJ: えーと、ほら、僕ちょっとしたノートとか曲とか色々持ってるじゃない。だからそれはきっと……いや、わからないな。その内やるかも知れない。
PS: 100%のプレイをしてない時はどうする? そういう時はどうやって対処するんだい?
EJ: とにかくプレイし通すことだよ。続けて頑張ったり、現実に直面したりするのは意味のあることだし、重要な点なんだ。その時に自分が置かれた音楽的状況に直面するって、慢心の鼻をへし折られる経験だよ。だから、100%のプレイをしてないことがあった時は、そういう経験が役に立つんだ。もっといいミュージシャンになるために、自分をある程度再調整出来るからね。
PS: 自分の歌唱は好きかい?
EJ: 好きな時もある。
PS: 君にとっての「いい歌唱」ってどういうもの?
EJ: 音の高さが合ってて、比較的よく響くヴォ−カル・パフォーマンスだね。歌唱の全体的なことは……うーん、僕はよくわからない。いい歌唱をする人たちのことをみんなが「ありゃあひどい」と言ったり、全然唄えてないような人たちを、独特の歌唱だから「すごくいい」って言ったりするから面白いよね。 興味深いのは、僕らが、ある人たちを違った例外項目に入れるんだってこと。歌手の良し悪しを何を以て決めるかという証明書のリストは、歌手の個性次第で融通がきくんだよ。
PS: それと、多分マテリアル次第で。
EJ: いい着眼点だね。僕の音楽は、むしろ本職の歌手向きなのかも知れない。だから多分、僕はそれで時々きわどい状況に陥るんだな。本職の歌手向きなのに、ここで唄っているのは僕で、しかもそれが、時には全く平凡でさ。どうひいき目に見ても、自分が素晴らしい歌手だとは思わないもん。時々、一体自分は唄うべきなのかと考えちゃうよ。