会計ビッグバン

 会計ビッグバンは会計基準の世界標準化という流れを背景にしている。会計基準改訂の特徴は連結決算重視、時価主義、キャシュフロー計算書の作成に要約される。会計システムは企業経営の根幹をなすものであり、それが大きく変化すれば、人事・賃金体系ばかりか、投資や関連会社との関係など、広く経営システム全般に影響を及ぼすことになる。終身雇用や年功型賃金に代表される日本型経営は終焉し、それに替わって、より欧米のスタイルに近い競争社会に変わっていく。

項 目

内 容

影 響

時 期

連結決算中心主義 有価証券報告書には連結財務諸表の作成と、連結ベースのキャッシュフロー計算書の作成が義務づけられる。 業績が悪かったり、含み損を抱えているグループ会社の持ち株比率をわざと低く抑え、連結対象外とし、その実態を隠し続けることができなくなった。キャッシュフロー計算書の開示は、会社が本当に儲けたキャッシュ(現金)が明らかにされる。会社としては、在庫を減らす、売り掛けを減らす、リターンの少ない投資は行わないといった、キャシュフロー重視の経営への転換が迫られる。 2000年3月決算より
税効果会計の導入 会計上の収益・費用と法人税の課税所得における益金・損金の認識のズレを是正するために、法人税などを適切に期間配分する。 税法に影響されない企業業績がわかるようになり、交際費・寄付金等が注記により明らかになる。 2000年3月決算より
金融商品の時価評価の導入 金融商品とは、金融資産、金融負債、デリバティブ取引に係る契約を総称したものを言う。時価とは、公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配、または指標その他の相場に基づく価額を言う。 時価と簿価の差をクッションに利用するような「含み益経営」を大幅に制約する。また、時価評価の流れは、株式持合い解消の動きを加速する。持合株式にも時価主義が適用され貸借対照表の株主資本に計上する。 2001年3月決算より
年金会計(退職給付会計の導入) 退職給付引当金と年金資産の合計額と、計算上の積み立て必要額である退職給付債務を比較し、不足があれば企業は穴埋めしていかなくてはならない。積立不足額は、最長15年で処理する。 企業年金は危機的な状況を迎え、不足額は60兆円から80兆円とも言われている。
年金債務が貸借対照表に計上される。そうなると、資本市場や格付け機関の評価が厳しくなる。さらに労使の間に一層の緊張関係が生まれ、従来のようなわが国特有の労使一体型の経営スタンスを取ることが難しくなる。
退職給付水準の引き下げ、退職金制度の見直し、年金基金の解散といった対応が必要である。
2001年3月決算より