豊かさの破綻日本経済はどうなる      水谷研治著


国と地方の長期債務残高

1990年度末 1995年度末 1998年度末 1999年度末 2000年度末

国・地方合計

266兆円

410兆円 561兆円 608兆円 645兆円

対GDP比

61% 84% 113% 123% 129%

 1990年代に景気の下降をおしとどめようとして、何度にもわたり思い切った財政政策が発動された。その結果として長期債務残高は急増した。2000年度の税収予想は49兆円である。そのほか税外収入が4兆円あるため、国の収入総額は52兆円となる。2000年度末の国の長期債務残高は645兆円で年収の13倍にもなっている。国の借金は年々増大し、それにつれて支払金利が増大し、資金手当てができるかどうか異常な事態に近づいている。

 景気をいったん高い水準にまで押し上げた後に、本格的な財政再建はやむをえない、というところまで意見は一致している。ところが、この意見は財政再建を行わないことにつながる。なぜならば我々が満足するほどの水準にまで景気上昇するとは考えられないからである。これまで、これほどの強力な施策を重ねてきた結果が、この程度の景気水準であることを認識する必要がある。民間部門の経済活動が自律的な形での景気の上昇に期待したいが無理である。むしろ、政府がここまで強力に推進してきた景気推進策が減退するにつれて、経済水準が低下する可能性のほうが、はるかに大きい。

 借金の返済が遅くなれば、インフレーションに巻き込まれる可能性がある。その時には金利が自動的に上昇し、大変な事態になる。さらに、それを放置すれば悪性インフレーションになり、国民の生活を破滅させる。そのことを考えれば、現時点において、どれほどの犠牲を払っても、我々の作った借金を、我々の手で返しておくことが必要である。そのためには徹底した支出の削減と大幅な増税を行わなければならない。公共投資を削減すれば、それに伴って、大きく景気は下降するが、やむをえないことである。増税の対象は消費税に求めざるをえない。消費税の先進国であるヨーロッパの場合、平均すると20%になる。日本の場合、2000年度の予算で試算すると、消費税を31%に引き上げる必要がある。景気は5年程度は急落を続けると考えておかなければならない。急上昇する失業率の下で、社会不安は増大し、人々は先行きに対し、ますます悲観的になっていくと考えられる。しかし、将来を展望すれば、この程度の景気の下落で慌てることはできない。5年間辛抱すれば先が見えてくる。支出の削減と大増税を5年間続けた結果が現れるからである。赤字国債を返済し終われば、その財源が浮いてくる。最悪の場合でも10年間見ておけば、日本経済は復活に向かうと考えてよい。改革を先送りしたばかりに、どうにもならない状況になり、永遠にその借金の重みに耐えていかなければならない日本の国民は不幸である。将来の国民の幸せを握っているのは我々である。我々の選択によって、将来の国民の運命が決まる。改革を断行したニュージーランドや韓国では大きな成果を挙げている。

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財政の現状と今後のあり方   大蔵省(平成12年8月)