日本経済再建「国民の痛み」はどうな        吉田和男著

saikenn.jpg (7547 バイト)2001年度末政府債務残高

国(うち普通国債) 506兆円(389兆円)
地方 188兆円
重複分 ▲28兆円
合計 666兆円

 2001年度末には、国・地方を合わせた政府債務残高は666兆円に達すると見込まれている。この対GNP比は128.5%となり、主要先進国としては、断然トップになる。これらの借金については、国民負担として、すべて後の世代へと引き継がれることになる。しかも、今後、高齢化によって、ますます財政需要が拡大することが予想されるので、その税負担から、ますます、財政赤字は拡大していかざるをえない。すなわち、日本国政府は借金を返済できないという状況が、明らかになっている。政府債務残高を国民一人当たりで計算すれば、550万円にもなる。これを四人家族で見れば、一世帯当たり2200万円にもなる。実際、個人の国債保有はほとんどない。しかしながら、国民の多くが郵便貯金や銀行預金などの預貯金を通じて国債を保有しているのであり、同時に将来の税という借金を背負っているのである。

 一方で、2000年度末の段階で家計の金融資産は1400兆円ある。しかし、500兆円の金融負債を差し引くと純金融資産は1000兆円にしかならない。さらに666兆円の政府を通じての負債を差し引けば、純資産は、約300兆円にまで激減してしまう。

国家破綻のメカニズム

 国家が税収を確保できず、歳出を国債発行でまかない、これが消化されないために中央銀行に引き受けさせると、通貨の発行量が拡大して、インフレになる。すると、インフレにともなう為替レートの下落を嫌って海外へ資金が流失し、資金逃避が起こる。これは為替レートをさらに引き下げることになる。そうなれば、為替レートの低下がさらなるインフレを促進し、これがまた資金逃避を呼び起こして、もっとインフレを促進するという悪循環となる。

財政再建プラン

短期的(2002年,2003年)

財政再建の出発点を作るためにプライマリー・バランス(公債費を除いたところでの財政均衡)を回復する必要がある。

・消費税率を3%引き上げ8%とする。

・所得税の課税最低限の引き下げ

中期的(2007年度)

・消費税率を3%引き上げ12%とする。

・医療、年金など、社会保障関係の制度の見直しを行い、社会保障関係費を非増加とできるように改革する。とくに、年金は破綻が目に見えているので、401Kプランような、自ら運用する形態への移行をいち早く行う。

・税における道路特定財源制度を廃止して、ガソリン税や自動車取得税の歳入が道路整備の歳出になるような構造を排除する。

・公共投資の削減

・特殊法人等の整理

長期的(2020年)

・消費税は15〜20%に引き上げる。

・地方分権化を進め、行政サービスの受益と負担を明確化することで、歳出削減する。

日本の現状と展望

 財政赤字がもたらす弊害は、これまでのところ表面化していないが、すでに兆候がみえはじめている。ムーディーズは日本国債の格下げをおこなっている。国債金融市場で調達している政府保証債の金利は、アメリカの国債金利より1%程度高く、プレミアがつく状況であり、国際金融市場での状況はよくない。為替レートは現在、一部の国際競争力の強い企業の力によって支えられており、多くの産業はすでに国際競争力を失っており、基調的に輸入が拡大することになり、これまでの経常収支黒字を維持できなくなる。日本の経常収支黒字の縮小は、やがて為替レートに影響して円安になり、日本も金利の引き上げを避けられないことになる。