世界を動かすプレゼン力              ニック・バーリー著 佐久間裕美子訳

 東京のプレゼンチームは、日本人が従来苦手とされてきたプレゼンテーションに、練習に練習を重ねてきて臨み、世界の大舞台で、「東京で五輪を開催してください」とアピールすることに成功しました。今回の最終プレゼンが成功した理由を簡単に言えば、プレゼンの内容、そしてスピーカーたちの力強いパフォーマンスによって、世界が東京に対して抱いていたイメージとは違う東京を見せることができたからです。また、プレゼンが下手だというイメージの強い日本人たちが、力強いプレゼンを見せたことで意外性を演出し、「五輪開催のパートナーに私たちを選んでください」とオーディエンス(audience 五輪の開催都市を投票するIOC委員)を説得することもできました。

 本書では、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会戦略コンサルタントのニック・バーリーのプレゼンを成功に導く7つの戦略が紹介されています。

戦略1 まずは数字から(与えられた条件から計算しよう)
・時間配分を考える。オーディエンスの集中力が続くのは5分。
・プレゼンはチームで行うほうが効果的。実際の組織を反映した性別・年齢・キャラクター構成を。
・オーディエンスは、一緒に仕事ができる相手かどうかをプレゼンメンバーで判断する。
・話すスピードは普通の三分の二ぐらい。英語なら一分に一二〇語程度で。


戦略2 オーディエンスを理解する(相手について、できるだけのことを調べていこう)
・まずはオーディエンスの構成要素を徹底的に分析する。
・オーディエンスが聞きたがっている本当の答えを探る。緻密な情報収集が鍵。
・オーディエンスに合わせてプレゼンをカスタマイズする。


戦略3 インパクトを演出する(プレゼンの中に驚きの要素を入れよう)
・プレゼンのオープニングでインパクトを与えれば、オーディエンスの興味を引ける。
・ビジュアルを有効に使う。一枚の画像がプレゼンを決める。
・レス・イズ・モア(Less is more)。 短くてインパクトのある言葉を選ぼう。
・オーディエンスを「もっと知りたい」という気持ちにさせる。


戦略4 インパクトを持続させる(聴衆を飽きさせないために考えるべきこと) 
・プレゼンのテンションをコントロールする。心地よい緩急を。
・細かい事実関係は「低」、感情に訴えるパートは「高」。
・映像、言語、視線の向きを変えさせるなど、緩急の付け方を多彩に。


戦略5 視覚に訴える(ビジュアルは賢く、適切に使おう)
・スピーチとビジュアルをシンクロさせることで劇的な効果がある。
・話す内容をそのままプレゼン用ソフトに書いてはいけない。
・スクリーンに映っているものを読み上げてはいけない。
・一枚のスライドに情報はひとつ。


戦略6 明確なビジョンを持つ(プレゼンでは必ず新しい視点を提供しよう)
・自分の意見をはっきり言うことは、傲慢なことではない。
・聴衆にとって新しい情報や視点をプレゼンに必ず加える。
・リーダーはプロジェクトの顔。細部よりもビジョンを語ろう。


戦略7 パフォーマンス(優れたストーリーを練習で補強する)
・プレゼンは演技。それは実社会にも通じる。
・スティーブ・ジョブズもバラク・オバマも練習を重ねてうまくなった。
・プレゼンのチャンスは一度しかない。何十回でも練習しよう。