使い分けるパソコン術 タブレット、スマートフォンからクラウドまで たくきよしみつ著
iPadなどのタブレットやスマートフォンなど、次々に出現するデジタルツール。クラウド、ソーシャルネットワークサービスなど、多様なパソコン関連サービス。私たちは今まで、パソコンに代表されるデジタルツールを「使いこなす」ことに懸命になってきました。しかし、これだけ多種多様なデジタルグッズや通信手段が出現してきた現代では、使いこなす前に、「使い分ける」という発想が必要です。目的をしっかり見極めて、道具やソフトを使い分ける。言い換えれば、手段を選ぶことによって私たちの支配権を確立することが大切です。
iPad
iPadで本を読もうという人はいても、iPadで本を書こうと思う人はいません。要するに、受動的なサービスは享受できても、能動的、創造的作業をする道具としてはほとんど使えません。iPadにはLAN端子がありません。LANでネットに接続するためには、無線LAN(Wi-Fi)を使います。
iPadは画面が大きいので、電子書籍を読むための道具として期待されていましたが、目下のところ、肝心の本があまり手に入りません。
iPadにはUSB端子がありません。そのため、USBメモリや外付けHDD、外付けDVDドライブを直接iPadに接続することはできません。iPadに外部からファイルを取り組むには、専用ケーブルでパソコンとUSB接続した上で、パソコン側にインストールしたiTunesを起動し、iTunesを介してファイルをコピー(同期)しなければいけません。これが、実際やってみると想像以上に面倒で時間がかかります。iPadをWindowsパソコンにつなぎ、iTunesを起動すると、自動的にiTunesは「同期」モードになり、iPadの環境をWindowsパソコン側にバックアップし始めます。これが毎回、起動させるたびに時間が長くなり、いざファイルを送り込む作業を始めるまでに延々待たされる羽目になります。iTunesを介さずパソコン側のファイルをiPadに送り込む方法は、Dropbox経由、GoodReaderを使ったWi-Fi経由などがあります。Dropboxは、WEB上のストレージサービスの一種でWindows、Mac
OS X、linux、iOS(iPoneやiPadのOS)、アンドロイド用があり、OSに合わせたDropboxをインストールして使います。Dropbox経由でiPadとパソコンでファイル共有できます。GoodReaderほとんどのファイル形式に対応したビューアーです。ビューアーという役割を飛び越えて、パソコン側のファイルをWi-Fi経由で簡単にiPad側にファイルが転送できます。iPadで何か能動的な作業をしようという発想の人は、iPadを「買わない方がいい人」ということになります。逆に、iPadは完全に受動的なビューアーとして割り切りができる人が「iPadを買っていい人」ということになるでしょう。
ネットブック
ネットブックはタブレットのおよそ倍の重さがあるものの、なんでもできるという安心感はタブレットとは比較にならない。ネットブックはハードのスペックが最低限に抑えられているため、「買ったまま」ではまともに動かないと思ったほうがよいでしょう。とにかく不要なものを削除して、軽くすることが大切です。プリインストールされているセキュリティソフトが常駐した状態で、低性能CPUのネットブックを快適に動かすことなど無理だと思います。プリインストールされているセキュリティソフトをアンインストールしたら、必ず代わりのセキュリティ手段を用意しなければいけません。ファイアウォールは必須です。ZoneAlarmフリー版などを使うことも選択肢の1つです。ほかに、Ad-Awareフリー版、SpywareBlasterフリー版なども併用できます。不必要な常駐するソフトはどんどん削除します。自動起動・常駐プログラムの確認や無効化は「窓の手」などのソフトで簡単にできます。
スマートフォン
docomoのiモードがケータイをパソコンに近づけようと奮闘してきたのに対して、スマートフォンは最初からケータイではなく「小さなパソコン」として出発しているので無理が少ない。スマートフォンを買うぞと決心したらiPoneとアンドロイドケータイのどちらを選べばいいのか悩むことになります。面倒を極力避けて、質感の高さを楽しみたい人はiPone。おサイフ機能や拡張性を重視するならアンドロイドケータイ。
iPone
iPoneはアプリがAppStoreでしか入手できず、ガッチリ囲い込みが完成していますが、その分、アップリの完成度が高く、トラブルに遭遇する確立も減ります。端末の完成度や操作性の品質感も「iPone品質」は常に世界のトップを走っているので安心感があります。iPoneユーザーは、コンテンツは端末に入れずに、基本的にはクラウドに置いて、ネット経由で見るという使い方を求められます。iPoneやiPadに搭載されてた標準WEBブラウザSafariでは、Flashで作成されたコンテンツを見ることができません。アップル社の説明では、iPoneやiPadがFlashを採用しない主な理由は、Flash技術はアドビの独占的な製品であり、将来にわたってオープンに使える保証がないからだそうです。
アンドロイドケータイ
アンドロイドケータイは機種も携帯電話会社も選べるという自由度があります。アンドロイドアプリは玉石混淆ですが、それを選ぶことを面倒だと思わなければ、iPoneにはない自由があり、楽しめます。iPoneには基本的におサイフ機能がついていませんが、アンドロイドケータイのおサイフ機能は、従来型ケータイと変わらなくなりました。iPoneにはmicroSDカードスロットがありませんが、アンドロイドケータイにはあります。動画などのコンテンツを溜め込むとすぐにメモリはいっぱいになるので、microSDが使えるかどうかは大きな違いです。
SNS(Social Networking Service)は、日本ではTwitter(ツイッター)、Facebook(フェイスブック)、mixi(ミクシィ)があります。
Twitter(ツイッター)
東日本大震災の時、政府や東京電力の発表は要領を得ず、原発で今何が起きているのか、どう対処すればいいのかがさっぱりわかりません。その状況の中、最も有効な情報源となったのがツイッターです。事故直後はテレビに出てくるのは御用学者ばかりで、「安全です」「心配いりません」「放射能は全然問題にならないレベルです」といった文言を繰り返していました。しかし、テレビに登場しない研究者や技術者、フリージャーナリストたちが、事故直後からツイッターで猛烈に独自の情報発信を始めていました。140文字という制限があるため、詳細な情報は書き込めませんが、データソースへのリンクを貼り込んだりして、膨大な情報を発信したのです。
Facebook(フェイスブック)
フェイスブック最大の特徴は「実名主義」です。きちんと顔と実名を公開した上で、責任あるコミュニケーションをしようというポリシーです。匿名性の高いツイッターに比べてフェイスブックはまだまだ日本では登録者が少ないのですが、アメリカではすでに1億5000万人がフェイスブックに登録しています。欧米先進国では、フェイスブックはもはやネット上の名刺として、ごく普通に利用されているのですが、日本では、インターネットの社会はまだまだ匿名の世界、責任の伴わない世界として認識されているようです。フェイスブックでは、実際の知人とつながらないと意味のあることができません。言い換えれば、フェイスブックの利用者は、ネットを真剣に利用しようという意思を持った人たちが形成する「大人社会」です。日本でフェイスブックがツイッターほど広まらないもう一つの理由は、システムの「分かりにくさ」でしょう。
mixi(ミクシィ)
ツイッターやフェイスブックがアメリカで生まれたサービスなのに対してミクシィは日本生まれのSNSです。ミクシィの日記機能や「つぶやき」、コミュニティ、メッセージといった機能を駆使して、様々な人たちの情報交換、情報共有の拠点になります。
日々とてつもないスピードで変化しているデジタル技術情報を追いかけるよりも、自分にあったものだけを取捨選択する能力を磨くことのほうがはるかに大切です。自分は何をしたいのだろう、そのために何をどうすることが必要なのだろうかと考える余裕を持てる生活していきたいものです。