ニワトリを殺すな        ケビン・D・ワン著

 本書は、本田技研工業の創業者、故本田宋一郎氏をモデルとし、この物語の中では、本田宋一郎氏の名セリフが引用されている。本田宋一郎氏の言葉には宋一郎氏個人の熱い気持ち、と同時に人間社会にとっても普遍性のある哲学がある。

ニワトリを殺すな
ニワトリ会議を開いてはいけない
人を責めるのではなく、問題の解決に集中して議論をしている

ニワトリという動物は、群れの中の一羽がちょっと血をだしていると、寄ってたかってその傷のところをつついて、殺してしまう。だから、傷ついたニワトリがいる時はそいつを隔離しなければならない。傷ついたニワトリというのは失敗した人という意味で、その人を責めてつぶしてしまうような会議をしてはいけない。


経験のないことをやって誤るのは本当の失敗ではない
研究開発というものは失敗の繰り返しであって、99%以上は失敗を覚悟しなければならない。

欠けているところがあるからこそ進歩がある

人間というものは面白いもので、できてもできなくても、とにかく問題を解決しようと色々考えていくうちに、ユニークなアイデアが出てくる。

何よりも『試したがり』が肝心だ
人間が進歩するためには、まず第一歩を踏み出すことが大切なんだ。勇気を持って『試してみる』ことを大切にしている。何事も『見たり』、『聞いたり』、『試したり』の三つを実践することが欠かせない。

若いうちの失敗なんてたいしたことない
『僕は色々失敗もしたが、だけど、こんな大きな仕事もした』と誇れるような生き方してもらいたい。

失敗をおかした原因を追求して反省し、二度と同じ原因で失敗しないようにすることが肝心
失敗を成功のもとにする真剣な態度や努力が必要なんだ。

自分をベテランだと思った瞬間から没落は始まる
本当にすごいベテランは、死ぬまでベテランと認めないで、日々研鑽を積むという態度を崩さないものだ。ありきたりのやり方や過去の成功体験に満足しているようじゃ、この変化の激しい時代、すぐ世の中においていかれてしまう。

商品は絶対に嘘を言わない
会社にとっては、その会社が扱う商品の一つ一つがその会社の全てになる。それによって世間様の評価を受けることになる。いざという時には誇大な宣伝も、言い訳めいた謝罪も、何の助けにもなりゃしない。うまくいったと思っても、結局はばれてしまう。
それに、消費者の目を甘く見てはいけない。消費者は、非常に厳正で鋭い感覚を持つ批評家だと思ったほうがいい。この商品が良いか悪いかをずばり見抜く力を持っている。しかも、悪いと思った時、言ってくれればまだいいが、黙ったまま、買わないという行動に出るのが消費者というものだ。それだけに決してみくびってはいけないんだ。

犬や猫がお金を出して買うのではない、人間がお金を出して買うのである
人様に対して商品を作って売っているわけだから、やはり人間の研究が一番大切なんだ。ところが、これまで技術者というものは、とかく視野を自分の研究対象のみに向け、人間を理解するための観察を怠りがちだったと言える。しかし、人間の心を理解し、喜怒哀楽を理解し、不満や希望を知らなければ、真に消費者に受け入れられる商品を創造し生産することはできないはずなんだ。

人の心を知ることが商品を創造する根元
人間相手に商売しているわけだからね。人から聞いたり、本を読んだだけでわかった気になるのではなく、自分自身で生身の人間とたくさん触れ合うことだ。

相手の身になって考えることで初めて人間が見えてくる
うれしいこと、悲しいこと、楽しいこと、嫌なこと・・・・・。そういったとても重要なことを置き去りにしたまま、コンピューターを駆使して市場分析したところで、本当に消費者を喜ばせる商品は決して生まれてこない。

必ずしもベテランや上司から良いアイデアが出るわけではない
ベテランや上司と言われる人の面子に給料を出しているわけではない。お客様も私も社員のアイデアにお金を出しているのだ。

真実の前では公平かつ平等であれ
経営で最も大切なこと。

アイデアと時間は切り離すことができない
どんなにいいアイデアがあっても、時間というタイミングがはずれればそのアイデアはタダ同然になってしまう。どんな発明や発見でも、他より一歩遅れればもう発明でも発見でもない。

時間だけはね、神様が人間に平等に与えてくれたもの
どんな星の下に生まれようとも、一日が二十四時間という時間だけは、誰にだって同じだけ与えられている。

創造=アイデア×情熱
人もアイデアも四割任用の原則だ。四割程度いけるレベルにあれば、あとは本人の情熱さえ高ければゴーだ。十割条件が揃うまで待っていたら日が暮れてしまう。それにいくら十割の能力があったり、十割かたいアイデアがあっても、肝心の情熱が一しかなかったら、掛け算して十にしかならない。

力いっぱい人間を愛せよ
本当に人間を愛し、大切にする気持ちから、人間の創造力はかきたてられ、形になり、そして人間にとって真に創造的なものが生まれてくる。