もっと言ってはいけない       橘あきら

 行動遺伝学では人格は遺伝と環境によってつくられ、環境(育ち)は共有環境(子育て)と非共有環境(友だち関係)に分けられる。
行動遺伝学が発見した「不都合な真実」とは、知能や性格、精神疾患などの遺伝率が一般に思われているよりもずっと高いことではなく、ほとんどの領域で共有環境(子育て)の影響が計測できないほど小さいことだ。
音楽や数学、スポーツなどの才能だけでなく、外向性、協調性などの性格でも共有環境(子育て)の寄与度はゼロで、子どもが親に似ているいるのは同じ遺伝子を受け継いでいるからだ。

 行動遺伝学では、遺伝の影響が身体的特徴だけでなく、「こころ」にも及んでいることを明らかにした。
遺伝率とは身体的特徴やこころの特徴(知能や性格、精神疾患など)のばらつきのうち、どの程度を遺伝で説明できるかの指標だ。

「身長の遺伝率66%」、「体重の遺伝率74%」と身体的な特徴は遺伝の影響が大きい。
「身長の遺伝率66%」というのは、背の高さのばらつきのうち66%を遺伝で、34%を環境で説明できるということだ。

 精神疾患の場合は症状が重いほど遺伝率が高くなる。神経症傾向の遺伝率は46%だが、統合失調症は82%、双極性障害(躁うつ病)は83%だ。自閉症の遺伝率は男児で82%、女児で87%、ADHD(注意欠陥・多動性障害)は80%と推計されている。

 一般知能(IQ)の遺伝率77%できわめて高く、知能の分布のばらつきの約8割を遺伝で説明できるという意味だ。
知能に及ぼす遺伝の影響は発達するとともに増加する。
認知能力に及ぼす遺伝の影響は、幼児期・児童期は40%強で、残り50%強は共有環境(子育て)と非共有環境(友だち関係)で説明できる。
だがその後、青年期に向けて遺伝率は着実に上昇していき、成人期初期には約70%に達する。
知能に対する遺伝の影響は成長とともに高まり、幼児教育の効果は思春期になるとほぼ消失する。

 近年のDNA解析では、日本列島の人口が3000〜4000年前に急減している可能性が示されている。縄文時代の人口は最盛期で約30万人とされるが、それが約8万人まで減っているのだ。弥生人のジェノサイド(集団殺害)によって縄文人の男は皆殺しされ、女は犯され混血が進んだのだ。人類史のなかで日本列島の住人だけが「平和主義者」で、弥生人は穏便に縄文人の生活圏に入植し、ともに仲良く暮らして愛し合ったなどというお話よりずっと説得力がある。

 東アジアでの日本の一足早い近代化は地理的・歴史的・文化的な偶然(幸運)によるもので、条件が整えば他の東アジア諸国でも同じことが可能だった。なぜなら他の東アジア系は同じように知能が高いから。(日本105.4、中国106.8、韓国106.4、台湾106.2、シンガポール110.6、香港108.8)
東アジア系は混血が進んでおり、遺伝的にはとても良く似ている。日本人だからといって、あるいは中国人、韓国・朝鮮人だからといって、特別なところはなにもない。

 知識社会においては、知能が高い方が有利であることは間違いない。社会的・経済的な成功で違いがある。
しかし、極端に高い知能がなんらかの神経症や精神疾患と結びついているかもしれないし、社会のなかでの少数派として差別されているかもしれない。
IQ130以上は人口の2.3%、IQ145以上は0.13%しかいない。
どのような社会も、多数派である平均的な知能のひとたちがもっとも楽しめるように最適化されている。
多数派の人たちが最大の消費者だから。
そう考えれば、高知能の少数派は、使い切れないほどの富と引き換えに、多数派が安楽に暮らし娯楽を楽しめるように奉仕しているともいえる。