チェンジ・リーダーの条件みずから変化をつくりだせ!       P・F・ドラッカー著

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 マネジメントの基本的なものの考え方を理解し、マネジメントすることによって、成果をあげることができる。第1に、マネジメントは、人間に関わることであり、人の強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである。第2に、マネジメントは、人と人との関係に関わるものであり、それぞれの国、それぞれの土地の伝統、歴史、文化と深い関わりをもつ。第3に、あらゆる組織がその成員に対し、仕事について共通の価値観と目標をもつことを要求する。第4に、マネジメントは、組織とその成員を成長させなければならない。第5に、組織は、異なる仕事をこなす異なる技能と知識をもつ人たちから成り、したがってそこには、意思の疎通と個人の責任が確立していなければならない。第6に、組織とマネジメントにとって、成果の評価基準は、産出量や利益だけではなく、マーケティング、イノベーション、生産性、人材育成、財務状況などのすべてが、組織の成果として、また組織の存続に関わる問題として重要である。第7に、企業の成果は、顧客の満足であり、組織の外部に存在し、組織の内部には、コストが発生するにすぎない。

 企業の目的は、顧客を創造することである。顧客が財やサービスを手に入れるための代金を支払うという自発的な行動だけが、経済資源を富に、物質を財に変換するからである。企業の目的が顧客を創造することであるための企業には基本的な機能が、マーケティングとイノベーションである。マーケティングは、顧客を理解し、製品やサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。イノベーションは顧客の新しい要求の満足をもたらす製品とサービスの創造である。企業活動とは、マーケティングとイノベーションによる顧客の創造である。

 組織には、いくつかの原則がある。第1に組織が透明であり、誰もが自分の働く組織の構造を知り、理解できなければならない。第2に、組織は最終的な決定を下すものを必要とし、危機にあっては、その者が指揮をとる。第3に、権限には責任が伴わなければならない。第4に、階層の数を少なくしなければならない。組織の構造は可能な限りフラットのほうがよい。さらに、それぞれの組織構造の強みと弱みを知っておき、仕事の性格の変化に応じて、組織構造を変えていく。

 たとえば人口構造の変化といったすでに起こった未来を見つけ、その影響を見ることによって、未来において新しい事業を築くことは可能である。すなわち、新しい経済、新しい技術、新しい社会についてのビジョンを事業として実現するということである。未来に何かを起こすには、勇気を必要とする。信念を必要とする。その場しのぎの仕事に身を任せていたのでは、未来はつくれない。明日を築く土台となるビジョンは不確実たらざるをえない。リスクを伴う。成功するかもしれないが、失敗するかもしれない。しかし、明日は必ずくる。マネジメントたる者は、自らの手にゆだねなれた人的資源に仕える怠惰な執事にとどまらないためにも、未来において何か起こす責任を引き受けること、すなわち企業における最大の経済的課題に関わる責任に意識的に取り組むことこそ、単なる優れた企業から偉大な企業を区別し、サラリーマンから事業家を峻別するものである。偉大な企業家的イノベーションは、理論上の仮説を現実の事業に転換することによって、これまで実現されてきた。

 ベンチャーは、キャシュフローの分析と予測と管理を必要とする。つねに1年先を見て、どれだけの資金が、いつごろ、何のために必要になるかを知っておかなければならない。1年の余裕があれば、ほとんどの場合手当ては可能である。しかし、切迫した状況のもとで資金を調達することは、事業がうまくいっているときでも困難であり、法外なコストがかかる。ベンチャーの本質からして、チャンスがもっとも大きくなるとき、資金繰りがもっとも苦しくなるからである。急激な成長は、既存のコントロールシステムを陳腐化する。ベンチャーが成長していくためには、つねに3年先を見越し、コントロールシステムを確保していかなければならない。大雑把な数字を把握して、必要に応じて迅速に対応できるようにしておけば混乱は生じない。

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第百五十三回国会における小泉内閣総理大臣所信表明演説

平成13年9月27日

(むすび) より抜粋
 いよいよ、改革は本番を迎えます。我が国は、黒船の到来から近代国家へ、戦後の荒廃から復興へと、見事に危機をチャンスに変えました。これは、変化を恐れず、果敢に国づくりに取り組んだ国民の努力の賜物であります。私は、変化を受け入れ、新しい時代に挑戦する勇気こそ、日本の発展の原動力であると確信しています。進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われています。
 私たちは、今、戦後長く続いた経済発展の中では経験したことのないデフレなど、新しい形の経済現象に直面しています。日本経済の再生は、世界に対する我が国の責務でもあります。現在の厳しい状況を、新たなる成長のチャンスと捉え、「改革なくして成長なし」の精神で、新しい未来を切り開いていこうではありませんか。