「暮らす!」技術       辰巳渚著

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 「暮らす!」技術は、ベストセラーになった前著「捨てる!」技術の本編である。筆者(女性)は、マーケティングの仕事をしており、「世の中の人はどんなモノがほしいのか」「どんなふうに暮らしたいと思っているのか」を10年以上にわたり調べてきた。その中で、筆者が直感的に感じたことがまとめられている。筆者の暮らし方の提案には賛同できる点と賛同できない点があると思うが、自分自身の暮らし方を考える上でのたたき台になる。

 日本再生のシナリオを唱え、閉塞感からの脱却を目指しながら、いまだに日本は行き先を見つけられずにうろうろしている。いつまでたっても、不景気だ、不況だという嘆きしかきこえてこない。だからこそ、自分たちの足元を見直し、自分のなかから自分自身の価値観を見出していくのである。それは、生きていく基本である暮らしを自分の手に取り戻すことからはじまる。いつのまにかこの社会には「普通の豊かな暮らし」がなくなっている。無理せず、背伸びせず、しかも楽しく、心豊かな、普通の暮らしこそが、生きる喜びであり基本である。

楽しく暮らす考え方10か条

第1条 ”捨てる”ことでモノを管理する

身近なモノがいるのか、いらないのか、使うのか、使わないのか”捨てる”判断をして、どんなモノがあれば幸せに暮らせるのか、わかってくる。

第2条 ”買う喜び”を大事にする

モノを買うのは喜びだ。消費文明を反省するあまり、モノを”買う喜び”を否定しても、心豊かな暮らしにはつながらない。

第3条 ”家は作るもの”と考える

家はそこで暮らしが営まれる場であり、そこに暮らす人がその人らしく、居心地よく作りあげていくものだ。

第4条 ”DIY(Do it yourself)の限界”を知る

素人がやれることと、プロにしかできないことがある。プロの技が生かされた使い心地のよさも大切にしよう。

第5条 ”食べる楽しみ”を開拓する

食べる楽しみは、生きる楽しみだ。

第6条 ”いつもと違う”ことを楽しむ

”いつも”に埋没して暮らすことなく、”ちょっとだけいつもと違う”ことを試してみよう。そこから、日々の豊かな楽しみが汲み出していけるはずだ。

第7条 ”無駄をする”豊かさを肯定する

無駄を切り捨てて経済成長をなしとげたことは、必要な過程だったのだろうが、そろそろ無駄にしてきたことの大切さに目を向けていい時期にきているのではないか。

第8条 ”ものぐさ”になる

人一人が持っているエネルギーの量は限られている。フル回転すればするだけ、エネルギーは消耗し、目先のことしか考えられなくなってしまう。人の心の深いところにある創造の力、そして体の深いところにある生きるためのエネルギーは、休むなにもしないことで蓄えられる。忙しさに自分の存在価値を求めてはいけない。忙しいと自分を振り返る余裕がなくなる。忙しいというのは一種の逃避なのだ。

第9条 ”インデックス型人間”になる

頭の中に索引があれば、必要なときに探しにいけばいい。

第10条 ”今を基準”に生きる

明日のために今の自分を犠牲にするのではなく、今の楽しさを基準に暮らしてみよう。今から逃げ出さずに向き合うことで、明日はおのずから充実するものだからだ。

豊かに暮らす実践10か条

第1条 モノの適正量を確認する

いらないものを捨ててみよう。それで充分快適に暮らせるのならば、その量が適正量だ。その後は、モノを循環させればいいのだ。

第2条 ほしいものは買う

楽しく生きるためには”ほしい”と思うモノを買おう。

第3条 家にいる

家は自分の居場所で、自分らしく居心地よく過ごすことを考えよう。

第4条 そこに関係あるものだけを置く

モノは使う場所に収納すると使いやすさもしまいやすさも格段に違ってくる。

第5条 おいしいものを食べる

普段の食事をおいしくさせるのは、ちょっとした心づかいや一手間であったりするものだ。

第6条 モノは使いこなす

意識しないと、ついモノはストックしたくなるもの。じょうずにモノを流通させて、使いこなす方向で考える。

第7条 横目で見ておく

モノや情報を全部受け止めるのではなく、横目でちらっと見てみよう。その上で大切なことだと判断したり、関係ないとやりすごせる余裕をもってみよう。

第8条 年中行事をする

変化のない日常に区切りをつけ、ちょっとした気分の転換になるような工夫が、行事やしきたりとして生活に組み込まれていた。それを意味のないものとして軽んじることなく、豊かさがあることに気づかなければならない。時候のあいさつに季節の言葉を入れてみたり、季節を先取りした初物を喜んだり、季節に敏感なのが日本の習慣だった。季節を意識した暮らしを取り戻そう。

第9条 手間ひまがかかることをする

よけいな手間ひまは省いてきたのが過去の歴史だった。でも、手間ひまこそが暮らしや労働の喜びを感じさせてくれるものではないだろうか。暮らしの中に手間ひまを取り戻し、工夫を楽しむ生活をしよう。

第10条 オフを宣言する

いつもオンの日常は、どんどん自分を消耗させるだけだ。きちんとオフを確保できるかどうかで、オンの充実が変わってくる。意識的にオフタイムをとり、オフラインの時間を作ろう。