限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択        毛受めんじゅ敏浩著

 今後、日本の人口の減少は加速する。2010年代の人口の減少は273万人、2020年代は620万人減、2030年代は820万人減、2040年代は900万人減、2050年代は910万人減と予測されている。人口激減という大変動の時代に、日本のあらゆるシステムは見直しを迫られ、日本はすべての面で急速に縮小する。

 2050年には全国の6割以上の地域で、人口が2010年時点の半分以下になるという予測が国土交通省から出されている。将来、県庁所在地や新幹線が止まる駅のある自治体程度を境として、その他の地域は急速に衰退が進み、ゴーストタウン化する懸念がある。「限界集落」という言葉があるが、日本列島全体が「限界国家」になる危機を迎えている。

 「2025年問題」という言葉がある。2025年には団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者になって、社会保険制度が危機に瀕することを意味する。しかし、その前にも危機は訪れるのではないだろうか。現在、現役で働いている人も多い団塊の世代が、2020年前後には70歳を迎える。彼らが現役を引退すれば、多くの産業で就業人口の逼迫が起こりかねない。どの先進国も少子化に苦労しているが、決定的な打開策を打ち出せた国はない。アメリカやフランスは出生率が高いといわれるが、いずれも移民を積極的に受け入れてきた国である。国内で高齢者が増え、一方で働く人間が減る以上、税金も上げざる得なくなる。そうなれば富裕層も日本から離れていくだろう。

 人口減少の中にあっても、日本政府が移民政策とらない理由は、移民に対して一般国民が持つネガティブなイメージに配慮して、国民に不人気な政策は触れないでおくということだろう。

 政府は50年後(2060年代)に人口1億人を維持するという大目標を掲げている。地方創生、一億総活躍プランも、最終的に目指すゴールは50年後に1億人という数字である。もし総人口が1億人を下回る減少を続ければ、すでに1100兆円近くまで膨れ上がった国債を返す見通しが立たなくなり、国家破綻に陥る。

 日本はイノベーションを起こすことで生産性を上げることができ、高付加価値社会に転換することで人口減少が続いても大丈夫、日本の復活は間違いないと声高に叫ぶ人びともいる。しかし、平均年齢が上がり続ける日本で、国民全体を潤す高付加価値のイノベーションが果たして次々に起こるだろうか。日本の各産業はこれまで必死になって世界と競争してしてきたが、近年、芳しい成果が上がっていない。現実を見れば、人口減を補うような生産性の上昇が今後、必ず起こるとの確証はない。

 2016年12月末現在、238万3千人の外国人が日本に定住している。国籍別では中国69万6千人、韓国45万3千人、フィリピン24万4千人、ベトナム20万人、ブラジル18万1千人、ネパール6万7千人、米国5万4千人、台湾5万3千人の順になっている。移民政策をとらないはずの日本で、現実には日本に在住する外国人は急増している。人手不足が深刻化するため、働くことを目的にした外国人の日本流入が急増している。在留資格でみると、1年間で技能実習が18.7%、留学が12.4%と急増している。日本にとって望ましい人びとを受け入れるためには、移住を希望する人びとに日本の魅力を積極的にアピールしなければならない。受け入れ体制の充実を図った上で、日本人が歓迎していることなどをアピールする必要がある。ポイントは日本語教育の充実、定住外国人支援策を実施することである。質の高い移民は世界中で奪い合いになっていく中で日本としていち早く有能な人材を確保する筋道を作ることが必要になる。一方、日本での定住が認められていない技能実習生などの出稼ぎ外国人は、賃金が低い上に、日本での消費は極力控えて多くのお金を持ち帰ろうとする。彼らがいくら増えても消費、税金、年金への貢献は期待できない。日本全体がゴーストタウン化してしまう前に、日本が好きで、やる気にあふれた外国人青年を受け入れ、日本の再活性化を図ることは十分に検討に値する。外国人の受け入れを本気で考えないと、やがて日本の衰退が決定的になって今度は日本人が移民として、海外に移り住む時代が来るかもしれない。日本人が移民として海外に仕事を求めて出て行った時代は、わずか50年前には現実にあった。