2030年世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」        米国国家情報会議編 谷町真珠訳

 米国国家情報会議は1979年に設立され、CIAや国防総省、司法省、国土安全保障省ほか、アメリカの各種情報担当機関や著名大学の学者から提供された膨大な情報をもとに、15〜20年程度のスパンで世界情勢を予測を行う国家の諮問機関です。米国国家情報会議がまとめた「国家情報評価」と呼ばれる指針はアメリカ合衆国大統領が政策や決断のための参考にするなど、米国国家情報会議は世界で最も精度の高い予測を行う機関です。

  出典:OECD

現在、世界で約10億人が「極度の貧困状態」にあり、栄養失調であるとされています。極度の貧困とは、1日の収入が1.25ドル以下の状態と定義されています。2010〜2030年の間に、極度の貧困層人口は5割減るとの予測もあります。

どの発展途上国でも、今後15〜20年の間に中間所得層が拡大することは確実です。人数が増えるだけでなく、国民全体に占める割合も増加します。ひかえめに見積もっても、世界の中間所得者数は現在の約10億人から20億人超に増えるといわれています。2030年までに30億人を見込む試算もあります。

2000年から2050年進むにつれて日本の中間所得層の購買力が世界に占める割合は約10%から2〜3%まで急速に落ち込んでしまう。反対にインドと中国の2ヶ国だけで全体の50%に達する。

世界的に中間層が増えることで、先進国の中間層の存在感は薄まります。米国や日本の中間層の購買力は、将来的にはとても小さいものになります。

今後、先進国の経済は低成長を続けます。先進国の中間層は、世界市場に職を求めざるを得ませんが、そこで新たに台頭する新興国の中間層との競争が待っています。北米や欧州の中間層の購買力は今後十数年、年率0.6%しか伸びません。一方で、アジア開発銀行の試算によると、アジアの中間層の購買力は2030年まで年率9%で成長を続けます。

地域別にみると、中間所得者層が一番急速に増えるのはアジアです。アジア開発銀行は、「もし中国が家庭の支出をGDPの増加率とほぼ同じペースで伸ばすという目標を達成できたら、人口の75%が中間層としての生活を楽しむようになり、1日の収入が2ドル以下の貧困層も撲滅できる」と指摘します。また、長期的にはインドの中間層が中国のそれを上回る成長を遂げるとみられています。

中間所得者層の拡大から予測できる事態は、自動車や日用品の需要は急激に伸びるでしょう。同時に、深刻な資源不足を引き起こす可能性も高まります。





旧モデルは「GDP」「人口」「軍事費」「技術投資」の4点から国力を試算して未来をシュミレーションしたものです。
新モデルは「健康」「教育」「統治」の3点を加えた新たな国力統計も算出しました。

新モデルを使うと、中国が米国を追い抜く年は少し後ろにずれます。旧モデルでは、2030年ごろ米国と中国の国力が並ぶとみられていましたが、新モデルでは米国が中国にトップの座を譲るのは、2040年以降になります。

また、どちらのモデルでも日本の国力がじりじりと低下していく点は見逃せません。米国や欧州などすべての先進国のグラフが右肩下がりです。今後、先進国の力は確実に弱まっていきます。旧モデルでは2015年ごろ、新モデルでは2030年ごろには先進国(OECDの加盟国)と非先進国(OECDに加盟していない国々)の力関係が逆転すると予測されています。

中国やインドの経済成長は、19世紀の英国や20世紀の米国や日本の前例とは比べ物にならない速さで進んでいます。こうした短期間で、国際社会の仕組みを変更し安定させるという難しい課題が我々を待ちうけている。2030年までに、一国で国際社会をリードするような覇権国は消滅します。米国も中国もその役割を果たせません。その一方で、国家ではない団体やネットワークが国際社会での発言力を増すようになります。こうした多様な意見が政治の場に反映されるのはいい面もありますが、多様な意見のとりまとめは難しく、政策立案が難しくなるという難点も出てくるはずです。