ブリューゲル「バベルの塔」展

4月29日に上野の東京都美術館で行われているブリューベル「バベルの塔」展を見に行きました。

オランダ・ロッテルダムのボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館所蔵の16世紀ネーデルランド絵画の巨匠ヒーテル・ブリューベル1世の油彩画「バベルの塔」とヒエロニムス・ボスの世界で25点しか現存しないと言われているのうちの2点の油彩画が日本で展示されています。

雨宮塔子の音声ガイドで作品の解説をしてもらいました。

『放浪者(行商人)』 1500年頃 油彩 71×70cm
ヒエロニムス・ボス(1450頃-1516年) 
 
放浪者の左側には娼家が描かれている。放浪者を中心にして画面の左側は罪深い誘惑に満ちた世界と、画面の右側は悔悛後の正しい生活を予告する世界とに二分されるが、正しい世界に向かいながらも、まだ多少の未練があるのか、後ろを振り返る放浪者の姿には、微妙に揺れ動く人間心理が巧みにとらえられている。

『聖クリストフォロス』 1500年頃 油彩 113×71.5cm
 ヒエロニムス・ボス(1450頃-1516年)

巨人クリストフォロスは、ある隠者のすすめで貧者や弱い者を肩にのせて川を渡る仕事につく。ある晩、小さな子供を背負って川を渡ろうとすると、不思議にも一足ごとに肩の重みが増し、耐えきれないまでになったが、子供は右手でこの巨人を祝福しながら自分がキリストであり、クリストフォロスは世界の重みを担っているのだと聞かされてようやく納得する。

『バベルの塔』 1568年頃 油彩 59.9×74.6cm
ピーテル・ブリューゲル1世(1526/1530頃-1569年)

ブリューベルがバベルの塔に思い入れた思想はネーデルランドがバビロニアの二の舞を踏んではならないという愛国心である。ネーデルランドのバベルの塔は混乱した民族の精神的統一を願う一つの意志、一つの希望の象徴なのである。

『大きな魚は小さな魚を食う』 1557年 版画 21.8×30cm
ピーテル・ブリューゲル1世(1526/1530頃-1569年)

ボスが15世紀から16世紀の社会批判や社会風刺を行ったように、ブリューゲルは主に16世紀中期の苦悩する民衆の生きざま、政治的・社会的状況に対する不安、怒り、あるいは民衆自身の愚かさ図像化した。

大きな魚(カトリックの権力)が小さな魚(改革派または無知なネーデルランド人)を食うのである。そこで、小さな魚を救助するために市民がナイフで大きな魚の腹を切り裂くと、腹と口から吐き出された魚はまたさらに小さな魚を食っていくという現実が暴露される。
実は改革派を自称しているにもかかわらず権力なき人々を食い物している者がいることを痛烈に批判する風刺画なのである。

『キリストの頭部』 1470年頃 油彩 36×27cm
ディーリック・バウツ(1410/1420-1475年)
『ヨセフの衣服を見せるポテパルの妻』 1512年頃 油彩 26.2×36cm
 ルカス・ファン・レイデン(1489/1494-1533年) 

ある日、ヨセフが務めをするため家に入った時、家の者が誰もいなかったので、ポテパルの妻は彼の着物を捕えて、また寝るよう言い寄ります。

今回もヨセフはともに寝ることを拒み、着物を彼女の手に残して外に逃げて行きます。

彼女はヨセフが着物を残して逃げたのを見て、家の者達を呼び、「彼が自分と寝ようとして入って来たので大声で叫び、それを聞いて彼は着物を残して逃げて行った」と嘘を言います。

彼女は主人が帰って来ると、家の者達に言ったことと同様の話をし、主人は妻の言葉を聞いて激しく怒ります。

そして、主人ポテパルはヨセフを捕らえて、王の囚人をつなぐ獄屋に投げ入れます。

創世記39章