ラッファエル前派展
2月2日(日)に六本木ヒルズ52階の森アーツセンターギャラリーで行われている「ラファエル前派展」に英国ビクトリア朝(1837−1901)の絵画72点がテート美術館から出品されていました。
「ラファエル前派兄弟団」は1848年にロンドンで前衛美術運動を起こし7人の若者によって結成された。中心になったのはロイヤル・アカデミーで学ぶ3人の学生でジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント。彼らはルネッサンスの巨匠ラファエロを規範としてその形式だけを踏襲する当時のアカデミズムに反発しラファエロ以前の素直で誠実な初期ルネサンスを理想としてこのグループ名を付けた。
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| 作者名 ジョン・エヴァレット・ミレイ 作品名 オフィーリア 制作年 1851−52年 | |
| シェークスピアの『ハムレット』でオフィーリアは恋人ハムレットに捨てられ、
父ボローニアスを殺害されたことによって狂気に陥ります。 そして狂気のまま水の中での死を迎えることとなる。 『ハムレット』第4幕第7場において ハムレットの母、デンマーク王妃ガートルードがオフィーリアが溺死した時の状況をオフィーリアの兄のレアティーズに語り聞かせている台詞です。 柳の木が一本川の上へ横にのび出て、その裏白を水鏡にうつしているところへ、あの子が来ました。 キンポウゲ、イラクサ、ヒナギク、そして、はしたない羊飼どもが、卑しい名で呼びますが、清い乙女らは「死人の指」と呼んでいる紫の花(ミソハギ)などから作った花輪を手に持って来ました。 あの子がしだれ柳の枝に その花冠をかけようとよじ登ったとたんに、つれない枝は一瞬にして折れ、あの子は花環もろとも川の中に落ちたのです。 裳裾は大きく広がって しばらくは人魚のように川面に浮かびながら、古い歌をきれぎれに口ずさんでいました、まるでわが身に迫る死を知らぬげに、あるいは水のなかに生まれ、水のなかで育つもののように。 だがそれもわずかなあいだ、身につけた服は水をふくんで重くなり、あわれにもその美しい歌声をもぎとって、川底の泥のなかへ引きずり込んでいきました。 夏目漱石は33歳の年(明治33年 1900年)に文部省から英語研究のためイギリス留学を命じられ、その年の10月から明治35年の12月まで、2年あまりロンドンに滞在しました。その時にこの作品を見たのでしょう。夏目漱石の『草枕』にオフィーリア(オフェリヤ)が登場します。 余が平生から苦にしていた、ミレーのオフェリヤも、こう観察するとだいぶ美しくなる。何であんな不愉快な所を択(えら)んだものかと今まで不審に思っていたが、あれはやはり画(え)になるのだ。水に浮んだまま、あるいは水に沈んだまま、あるいは沈んだり浮んだりしたまま、ただそのままの姿で苦なしに流れる有様は美的に相違ない。それで両岸にいろいろな草花をあしらって、水の色と流れて行く人の顔の色と、衣服の色に、落ちついた調和をとったなら、きっと画になるに相違ない。しかし流れて行く人の表情が、まるで平和ではほとんど神話か比喩になってしまう。痙攣(けいれん)的な苦悶はもとより、全幅の精神をうち壊わすが、全然色気のない平気な顔では人情が写らない。どんな顔をかいたら成功するだろう。ミレーのオフェリヤは成功かも知れないが、彼の精神は余と同じところに存するか疑わしい。ミレーはミレー、余は余であるから、余は余の興味を以(もっ)て、一つ風流な土左衛門(どざえもん)をかいて見たい。しかし思うような顔はそうたやすく心に浮んで来そうもない。 |
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| 作者名 エドワード・バーン=ジョーンズ 作品名 「愛」に導かれる巡礼 制作年 1896−97年 | |
| 中世の詩人チョーサーが翻案した「薔薇物語」の一場面を描いているといわれ、巡礼者の姿をした詩人が、恋い焦がれる特定のバラを求め、有翼の寓意像「愛」に導かれイバラの茂る荒野を歩いてゆくというものです。 | |
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| 作者名 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 作品名 プロセルピナ 制作年 1874年 |
作者名 ウィリアム・ホルマン・ハント 作品名 良心の目覚め 制作年1853−54年 |
| プロセピルナはローマ神話の女神。冥府(冥土)でザクロの種を食べてしまったため、冥府の食べ物を食べた者は、冥府に属するという神々の取り決めにより、1年のうち半分を冥府で、残り半分を地上で過ごすこととなった。 深緑の衣裳に身を包み、やはり深緑の神秘的な瞳で虚空を見つめる。彼女の手に握られた石榴と背後の壁に這う蔦はいずれも死と再生の象徴であり、これらのものに囲まれて女神はとらわの身を嘆き、地上への帰還を切望し、しかしどこかでそれを諦めた、複雑な翳を帯びる表情でひとりたたずむ。 |
金持ちの男に囲われている女が子供の頃歌った歌を聞いて今の生き方の間違いに気づき、立ち上がる様子を描いたもの。 |