ウツギ
幹や枝が中空なので空木(うつぎ)の名がある。「卯の花」と呼ばれるウツギはユキノシタ科の落葉低木で、高さは二メートルほどで各地の山野で見られる。五月下旬〜七月に白い五弁の小さな花が集まった十数センチの花序をつけ、人目をひく。卯の花が咲く旧暦四月を卯月といいます。卯月は旧暦では初夏で、四月一日を更衣の日とししていました。
唱歌「夏は来ぬ」(佐佐木信綱 作詞)では、卯の花とホトトギスで初夏の訪れが歌われています。
卯の花の 匂う垣根に ホトトギス 早も来鳴きて 忍音もらす 夏は来ぬ
卯の花を詠まれた歌は、万葉集に24首ありますが、同じ初夏の風物としてホトトギスとともに詠み込まれたものが18首あるそうです。
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(万葉集 巻第十 1899) |
春がやってくると卯の花ぐたしという長雨の中を越えて、私が恋人の許にかよった卯の花の生垣のすき間は、今はもう荒れてしまったなあ。 |
卯の花腐(ぐた)し : 卯の花が盛りの五月下旬ごろ、梅雨にはまだ少し間があるというのに、卯の花を腐らせるほどに、しとしとと長く降り続く雨。 |
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(万葉集 巻第十 1942) |
もうほととぎすの鳴く声を聞いていますか。卯の花が咲いて散りはじめたこの岡で葛を引いている娘さんよ。 |
葛引く : 葛のつるを引っ張って収穫し、その繊維から葛布を織った。 |
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(万葉集 巻第十 1976) |
卯の花のが咲いて散っている岡の上をほととぎすが鳴いて渡って行きます。あたたはその声をきかれましたか。 |