九相詩絵巻

 死体と向き合って生きてきた解剖学者の養老孟司(ようろう・たけし)さんが鎌倉時代の「九相詩絵巻」を紹介している。この絵巻には女性の死体が風化していく順に九相が描かれている。

 一番上は生きていたときの女性の絵
 二番目は死んだ直後、洗い清める湯灌をした後、生前身に着けていた着物をかぶせた絵
 その後、死体が膨張し、腐敗し、鳥獣がついばみ、ついには白骨になる絵が描かれている。

 養老さんは、中世の人たちが、日常生活で死体の九相をしっかり見る生活をしており、このリアルさが失われたのが江戸時代であると言っている。

 現代人も、人間の死について目をそらさずに考えることによって、もっと大きな視野で生きていけるのではないでしょうか。

猛獣・猛禽の群れが集い、死体は噛み裂かれて食い荒らされる。
食い終わると、いっそう汚くくずれ果て、ただれるにまかせてしまうから、
幾千幾万と数知れぬ蛆(うじ)がその臭気を慕って群がり出る。
その醜怪なること、死んだ犬よりもさらにひどい。