一匹の狐がいました
彼は吹雪の中 ある場所に向かっています
雪は彼に絶え間なく襲いかかり
そのたびに歩みをほそめては すすんでいきます
その右脚からは血液がどくどくと流れ
雪をすこしづつ赤く染めていきます
その骨には深く弾丸が食い込んでいて
彼にするどい痛みを与えています
しかし彼は歩みをとめないのです
モウスグダヨ モウスグナンダ
遠くに灯りが見えます
ソコニ アルンダ
てっはうの音が響きわたります
彼の耳元を秒速の風が吹き抜けました
イタクナンカ ナイヨ
空が優しく粉雪で彼を包みはじめると
彼は空に軽く おじぎをしてから
一気に駆け出しました
しんとした世界に
血しぶきは綺羅綺羅とひかり
地面にゆっくりと舞い落ちていきました・・・