月が雲にかくれてく

それを寂しく想ったことなんていちどだってなかった

月のひかりを浴びなくても

あたしは辛くなかったのだ

月が見えなくたっていつも

ほほえんでいられたのだ


あるときあたしは月が見えなくなる瞬間に

はじめてなみだをおとした

なみだのいちぶは心臓から全身へとまわって

からだじゅうにつけていた殻がいっせいに

ぱりんと音をたててくずれていった

あまりにとつぜんでおどろいて

殻をひろってつなぎ合わせようとしたけれど

風がさらさら かけらたちをさらって消えていった


そのとき

あたしは自分が寂しいいきものであることに気がついたのだった



アア ツキガトオイ・・・







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