BACK


Planter in the last resort  
The Ufer! Gallery

・・・

 ウーファー・ギャラリーの三人展で、伊庭靖子作品を見る。植物という形態は直ちに杉綾、唐草模様、花柄という具合に装飾化、デザイン化する傾向をもっている。写真を用いたシルクスクリーンにパステルを施すこれまでの伊庭の作品は、趣味の良さと美しさを湛えつつも田口幸加子のようにその犠牲にはならずに、植物という形態のこの傾向を、まさしくその形態の「写真」による影と光で遮断することでアートに踏み留まり、装飾という抽象的なパターンがもちえない、形態=対象物の暴力性すら微かに感得されうるものであった。微かに、という危惧は、作品によっては、奇妙にも艶めかしい植物たちとでもいえる具象性が際立ち、「形態」がその前で消失するからである。

 今回の油彩による作品は、私にはこの危惧を克服しようという試み、すなわち形態を形態たらしめていた写真性だけを抽出せんとする試みに見える。そこには視覚自体が写真化してしまった現代に「写真」をつくろうという、批評的意識が働いているはずであり、G・リヒターの初期作品のように「油絵で写真を撮る」という方法論(それはスーパーリアリズムとは似て非なるものだ)は明解である。しかし作品の完成度からいえば、新しい油絵は過去の成功したシルクスクリーンのもっていた絵画と写真のあいだのバランス感覚に比べて劣る。

・・・


清水 穣