9:15  エェェェェェックス・・・!


「ソロモンを焼け〜男たちは4百万枚の鏡の制御にかけた〜」

(あのナレーション)


緒戦の不利を挽回し、反撃を始めた連邦軍はオデッサを奪還。

地球での戦局が、連邦軍に傾き始めた1年戦争は、宇宙へとその舞台を
移しつつあった。

圧倒的物量を背景にサイド3への道を切り開いて来た連邦軍。
しかし、ここで恐るべき壁が立ちはだかった。


宇宙要塞ソロモン


分厚い岩盤によって守られた要塞の外壁は、連邦軍の現用兵器の攻撃を
全く寄せ付けない強度を誇り、ソロモンを国防の生命線と考えるジオンの
兵力の集中は、常軌を逸していた。

そして、ソロモンを預かる司令官は

ドズル・ザビ中将

ジオンきっての武闘派でならすドズル旗下の兵士の志気は高く、
ドズルもまた、歴戦の兵だった。


ここを突破できなければ、ジオンに安全圏、戦力回復の時間を与えることとなる。
しかし、連邦軍にはソロモンを攻略する鍵が無かった。

「このまま戦っては、ルウムの二の舞いを踏みかねない」

情報将校の報告に、
連邦軍最高司令官レビル将軍は、眉間に皺を寄せた。


「策なら、無い事も有りません」

レビルの横で、こう言った人物が居た。


ティアンム将軍。


再編成された、連邦軍宇宙艦隊の総司令官だった。

序盤の敗戦を乗り越え、MSを開発・量産する連邦軍が
そう遠く無いであろう将来に、再び制宙圏を獲得する事を見越し、
宇宙艦隊再編成計画「ビンソン計画」を立案。
ジオン最大の宇宙艦隊が駐留する、宇宙要塞ソロモンを攻略し、地球圏の制宙圏を奪取する
大規模な軍事作戦「星一号作戦」にまで漕ぎ着けた、立役者の一人だった。

「策が有ると言うのかね?」

レビルは、この先見の明に長けた名将に問うた。

「有ります」

ティアンムは答えた。
彼には心当たりがあった。

連邦軍技術開発部門に籍をおく、技術者がいた。
コロニー鏡制御のエキスパートである、セキ大佐、その人だった。

セキは、オデッサ作戦までは、対ホワイトベース用補給部隊の技術顧問として
帯同していたが、作戦終了後は、連邦軍本部ジャブローへ帰還しているはずだった。

ティアンムは、セキの元を訪ねた。

しかし、そこでティアンムが見たのは、失意に沈んだセキの姿だった。

セキは、サイド3からの亡命者だった。
開戦よりも遥か前に軍籍に就いてはいたが、彼を色眼鏡で見る者は、少なく無かった。
ハンデを背負った彼は、懸命に軍の為に尽力した。知識・技術・閃き。
彼の努力に彼の才能は答えを出してくれた。

連邦軍で、今の地位を獲得した時、彼はやっと連邦軍の一員として認められたと思った。

思ったはずだった。

オデッサ作戦終了後、本部に戻って来たセキを見る眼が、普段と一変していた。

「セキは、一体何をやっていたのか」

「ホワイトベースの修理がもっと早く終了していれば、補給隊は壊滅しなくて済んだはずだ」

「補給隊が無事なら、マチルダ中尉だって死なずに済んだ・・・!」


ただ、一度の不手際が、セキの権威を失墜させた。

「やはり、ジオンの人間だから」


この、一言がセキの心には堪えた。

「自分に力が足りないばかりに、このような事になったのです」

自分をわざわざ訪ねてくれたティアンムに、セキはこう言った。
ティアンムは言葉に詰まった。

「それは、自惚れというものです」

ティアンムと共にセキを訪ねて来た士官が口を開いた。

ウッディ大尉。
オデッサ作戦遂行中、戦死したマチルダ中尉の婚約者だった。
彼は言った。

「戦争が、一個人の力で、マチルダが助けられたり、戦局を左右出来ると言う程、
 甘いものでは無い事は大佐もよく御存じの筈です!」

項垂れていたセキは、顔を上げた。

「パイロットも、技術者も、その時の戦いに全力を賭け、
 後悔しなければそれで良いのです!
 私も技術者の端くれです。大佐の力は良く分かっております。
 大佐は全力を尽くされた。それで良いではないですか」

ウッディ大尉のこの言葉に、セキは救われた気がした。
そうだ、周りが何と言おうと、私は私の出来る事を全力で行えば良いのだ。

「ありがとう」

セキはウッディに頭を下げた。

ティアンムは、2人の前でおもむろに図面を広げた。

「これは…」

セキとウッディは息を飲んだ。

偏光ミラーを利用し、太陽光と太陽熱を一点に収束。
そして、目標地点へと放出するというシステムの原案が、
そこには書かれていた。

ソーラ−システムの原形だった。
ティアンムはセキに

「作戦開始までに、これの実現は可能だろうか?」

と、尋ねた。
「星一号作戦」までのタイムリミットは、わずかだった。

セキは、

「可能です。尽力致します」

しばし熟考してから、力強く答えた。

「及ばずながら、私もお手伝いします」

セキの手を握り締め、ウッディが言った。

ソーラ−システムの開発が、始まった。

ウッディの呼び掛けで、セキの元に技術者が集まった。
セキ同様、ジオン出身の技術者も混じっていた。
しかし、連邦の技術者達の中で、ジオン出身者を色眼鏡で見る者など皆無だった。

連邦も、ジオンもなかった。
ただ、セキを助けたい一心で技術者達は集まった。

時間がない。
急ピッチで作業を進めなければならなかった。

ソーラ−システムは、虫眼鏡で光を集め、その熱で紙を焦がしたりする原理と
ほぼ同じ理屈だった。
単純明快だった。

しかし、単純だからこそ難しいと言う事を、技術者達は痛感した。

偏光ミラーは、コロニー用の鏡を流用すれば良かった。
技術者の一人が、岩盤を溶解させるのに必要な熱量を収束させる為には、
どの程度の規模の鏡面が必要なのかを計算した。

恐るべき数字が算出された。

4百万枚。

莫大な量だった。
作戦で使用出来るコロンブス級輸送艦での輸送量を大きく超えていた。

「計算の規模の半分以下に出来なければ、システムの完成はおぼつかない」

食事中も、入浴中も、ありとあらゆる時間に於いて、セキ達は、解決策を模索した。
そして、一つの結論に達した。

鏡面を折り畳む。

偏光ミラーを4分割し、折り畳む。
鏡面自体の厚みがある為、容積こそ4分の1にはならなかったが、
輸送許容量の問題をクリアーする事に成功した。

ハードルを一つ乗り越えた。
しかし、まだ超えねばならないハードルは多かった。

セキは震えた。
武者震いだった。

一つの問題点をクリアしたセキ達は、試験的にソーラーシステムの模型を作って実験を行った。
鏡面に姿勢制御用のバーニアを取り付けた物を複数製作し、無重力の中に浮かべた。

スイッチを入れた。

鏡面は、一斉に動いた。
セキの意のままに、鏡面は、動いた。

しかし、すぐに問題点が見つかった。

ミノフスキー粒子の存在だった。

散布下の空間に於いて、あらゆる電波の進行を妨げるミノフスキー粒子は、
レーダーばかりでは無く、無線誘導にとっても天敵だった。
4百万枚という大量の鏡面の制御は、無線誘導なくしては成立しない。
しかし、ミノフスキー粒子下での正確な無線誘導はほぼ不可能だった。

「ミノフスキー粒子下での鏡面制御を成立させる方法を考えなければならない」

セキ達は、あらゆる方法を模索した。レーザー通信から、果ては手動に至るまで、
様々な方法を試みた。
しかし、無線誘導以上の結果は得られなかった。


「星一号作戦」は間近に迫っていた。

打開策が見つからないまま数日が過ぎたある日、技術者の一人が言った。

「ミノフスキー粒子下での無線誘導の限界点はどこなのか?」

すぐに実験が始まった。
実験用無重力室の中に次第にミノフスキー粒子を満たしていく。
3%、4%・・・
5%を超えたところで、無線誘導は出来なくなった。

ソロモン宙域でミノフスキー粒子濃度の5%以下である場所があれば、
ソーラーシステムは無理なく運用出来るはずだ。
ソロモンで、濃度の薄い場所を懸命に調査した。

見つけた。

サイド1の残骸がある、暗礁空域だった。
開戦当初の1週間戦争以来、放棄されたそこは、戦略的価値の無い場所ゆえに、
ミノフスキー粒子の散布も行われず、濃度が極めて薄い場所だった。

ここならば。

セキ達は色めき立った。
しかし、ミノフスキー粒子が薄いと言うことは、敵に探知される可能性が極めて高いとも言えた。
ソーラーシステムの運用は、一か八かの賭けでは済まされないが、
運用する為の場所はここしか無かった。
セキは、ティアンムに打診した。
ティアンムの答えは、

「ソーラーシステムの展開、運用までの所要時間が1時間を切ること」

暗礁空域の索敵され難いという特性、戦略的価値の無い地点であることの2点を
考慮に入れたとしても、作戦開始後にソロモン駐留部隊の眼をごまかせるのは
その程度の時間が限界だろうとのティアンムの判断からだった。

ミノフスキー粒子、そして時間という2つの敵にセキ達は挑まねばならなくなった。

4百万枚の鏡面の輸送、放出、整列。光を収束させ放出。
時間を短縮させる為の、効率的な運用シミュレーションがくり返された。
光の収束時間の短縮は、出力の低下を意味する。
理想的な鏡面の配列から、輸送艦から放出する鏡面の順序まで、あらゆる見地から
シミュレーションは、鏡面の整列までの過程を如何に短縮出来るかに注がれた。

シミュレーションでの理論値は、熱量放出まで

58分。

タイムラグなどを入れても、ギリギリの数値だった。
作戦遂行時には、一瞬のミスも許されない。綱渡りの運用になる。
しかし、ソロモン攻略には不可欠な作戦だった。
セキはティアンムに現状をありのままに伝えた。

「セキ大佐、我々はやるしかない。やらねば負けるのだ」

ティアンムは、この巨大な「アルキメデスの鏡」の実戦配備に断を下した。

ソーラーシステムの運用にメドが立った11月末。ある事件が起こった。

ジオンのジャブロー本部への降下作戦。
キャリフォルニアの殆どの戦力をここに投入して来たジオンの勢いは凄まじく、
多数のMSがジャブロー内に侵入した。
ジャブローは甚大な被害を被った。
だが、45万平方キロという、広大な敷地内に展開する連邦軍の圧倒的な物量に押し返され、
ジオンは敗走。キャリフォルニアの戦力は疲弊し、いよいよ地上戦線でのジオンの勢力は
縮小することになった。

いよいよ、「星一号作戦」が現実味を帯びて来る事になった。
しかし、セキに迫るもう一つの現実は、ショッキングなものだった。

ウッディ大尉が、戦死した。

ウッディは、宇宙船用ドックで改修中のホワイトベースを守る為に、戦い、そして死んだ。
ホバークラフトのコックピットをMSのクローで潰されていた。

即死だった。

「一刻も早くこの戦争に終止符を打たなければならない」

セキは、仲良く寄り添うマチルダとウッディの墓前に誓った。
そして、自分の理解者をまた1人失った悲しみに、泣いた。

ジャブロー攻防戦の後、ティアンム率いる連邦主力艦隊は、ジャブローを出発。
ルナツーの連邦宇宙艦隊と合流した。
目指す目標は、ジオン公国宇宙要塞ソロモン。

「星一号作戦」の開始である。

連邦艦隊は、途中ルナツー指令ワッケイン大佐率いる第3・第4艦隊と、
ティアンム将軍率いる第1・第2艦隊に戦力を分割。2方向からの進撃を試みることになった。
セキはティアンム艦隊に配属された。
ソーラーシステムの総責任者として戦線に赴くことになった。
ティアンム艦隊旗艦タイタンのブリッジで、ティアンムはセキを激励した。

「勝つも負けるも、君の腕にかかっている。頼む」

きつく自分の手を握りしめるティアンムの手を、セキも強く握りしめた。

12月24日。クリスマスイブ。
火蓋は切って落とされた。

まず、ワッケインの艦隊がソロモンに仕掛け、時間を稼ぐ間にソーラーシステムを
展開、照射するというのが連邦軍の作戦だった。
作戦開始より1時間前、サイド1の空域では、既に作戦は始まっていた。
コロンブス輸送艦から放出される無数の鏡面。
それらは一分の狂いも無く、整然と並べられていった。

しかし、アクシデントが起こった。

暗礁空域には、デブリなどの残骸が思いのほか多く、鏡面を並べる為の邪魔になった。
4百万枚の鏡面を並べるペースは、明らかにシミュレーションよりも劣っていた。
全ての鏡面が並べ終わったのは、作戦開始寸前だった。
更に、照射までの熱量収束には15分かかる。


ティアンムは攻撃開始前のワッケインに連絡をとった。

「15分でいい。持ちこたえてくれ」

「やってみせましょう」

ワッケインは、頼もしくそれに応えた。
しかし、セキ、ティアンム。2人の脳裏に嫌な予感が走った。

「間に合わないかも知れない」

予感は、当たった。

ソロモン守備隊の抵抗は熾烈を極め、ワッケイン艦隊は苦戦を強いられていた。
未だソロモンにMS隊は取り付けず、いたずらに被害が増すばかりだった。
そして、

「何!連邦の主力艦隊がサイド1の残骸に?」

ソロモン司令官ドズル・ザビの下にティアンム艦隊発見せりの情報が入った。
ドズルは、すぐさまグワジン級戦艦グワランを旗艦とする迎撃部隊を派遣。
展開中のソーラーシステムが攻撃を受けるのは、時間の問題だった。

無論ティアンムの下にも、グワラン発進せりの情報は届いていた。
グワラン有効射程距離への接近は、あと五分。
ソーラーシステム照射までの時間は、

あと、五分。

時間との戦いになった。
熱量収束プログラムを打ち込み終わったセキは、天に祈った。
迎撃部隊が、目視出来る位置にまで迫っていた。
4百万枚の鏡面に、グワランの赤い船体が映り込んでいた。

「ティアンム艦隊補足。攻撃体制に入ります」

グワランのオペレーターがそう言った瞬間。
同時刻に、ティアンムが叫んだ。

「ソーラーシステム、照射!」

連絡を受けたセキは復唱し、スイッチを入れた。
ソーラーシステムの方が、一瞬早く臨界に達していた。

刹那。

太陽よりもまばゆい光が漆黒の宇宙空間を照らし出した。
4百万枚の鏡は一斉に輝きを増し、そこから放たれた一条の光がソロモンを焼いた。

グワラン迎撃部隊は壊滅。
ソロモンの岩盤は蒸発し、駐留待機中のジオン艦隊は、最前線に投入されること無く、
その姿を消すことになった。
実に、ソロモンの残存兵力の30%以上を、ソーラーシステムは一瞬にして光の中に
消しさった。
凄まじい威力、凄まじい戦果だった。

統制を失いつつあるソロモンにティアンム艦隊は突撃した。
セキの搭乗するコロンブスに通信が入った。

横を通り過ぎる旗艦、タイタンのティアンムからだった。

「君たちのおかげだ。君たちの努力に報いる為にも、我々は勝つ」

8時間が経った。
ついにソロモンは、陥落した。

クボ「セキ大佐達の努力は実り、ソロモン要塞は陥落しました。
   その後の彼等の人生は、どうなったのでしょうか?それでは、エンディングです」

0079 12月25日。
連邦軍宇宙艦隊は、ソロモンに入港を果たした。
各艦隊の旗艦が並ぶ中に、ティアンム艦隊の旗艦
タイタンの姿は無かった。

ソロモン陥落直前、部下を逃がす時間を稼ぐ為ドズル・ザビは自ら超巨大MA
ビグ・ザムを駆り、単身ティアンム艦隊に対し特攻をかけた。
ドズル・ザビもまた、部下を愛する男だった。

ティアンム艦隊はソーラーシステムの第2射に注意を払っていた為に
虚を突かれた形になった。
強力な拡散ビーム砲と長距離ビーム程度ならば容易く跳ね返してしまう
Iフィールドを搭載したビグ・ザムは、ティアンム艦隊に肉迫。
ティアンムも戦艦の主砲すら跳ね返すビグ・ザムに対し兵装をミサイルに換装して応戦した。
しかし、ビグ・ザムはその圧倒的な火力で、瞬く間に戦艦5隻、巡洋艦8隻を撃沈。
艦隊の旗艦であるタイタンも、この中に混じっていた。

志半ばで、ティアンムは戦死した。

ビグ・ザムはその後ホワイトベース隊の肉迫攻撃によって撃破された。
しかし、ビグ・ザムの本来の目的である、残存兵力の脱出は成功。
最終決戦地、ア・バオア・クーへの戦力の集結を助ける形になった。

総帥ギレン・ザビは、

「ドズルにして、尤もな事よ…」

と、語ったと言う。事態は最終局面を迎えつつあった。

一方セキはその後12月29日に地球より合流したレビル将軍率いる主力艦隊と共に
ア・バオア・クー攻撃に向かった。

こうした事態を、ジオン公国公王デギン・ソド・ザビは非常に憂慮していた。
彼は独自に連邦との和平交渉を行うべく、戦艦グレート・デギンに搭乗。
レビル将軍との接触を試みた。彼には最早、戦う気力は残っていなかった。
しかしジオン公国の実際の実権を握る長男、ギレン・ザビにとって
それは容認出来ない事実だった。
そして、12月30日。事件は起こった。


ジオン本国に浮かぶ密閉型コロニー「マハル」に於いて、人類史上未曾有の計画が
実行されようとしていた。
コロニーを砲身に見立て、コロニー鏡で貯えた電力をレーザーとして一気に放出。
直径6キロの巨大レーザー兵器によって、連邦主力艦隊の殲滅を図ると言うものだった。
後の検証によって判明したが、ソーラ・レイは、セキの考案した
ソーラー・システムの原理を応用した、画期的な兵器と言えた。
資源の乏しいジオンが勝利する為には、無尽蔵に利用可能な太陽エネルギーを
利用する以外に道は無かった。

その頃、戦艦グレート・デギンは、レーザー通信による連邦艦隊との接触に成功、
デギン公王は自らレビル将軍との会談に赴こうと連邦軍艦隊旗艦フェーベに
乗り込もうとしていた。

その時だった。

サイド3方面より飛来した巨大な閃光が、連邦艦隊を襲った。
ソーラ・レイだった。
ギレン・ザビは、邪魔な公王もろとも、連邦艦隊を消しさることに断を下していた。

ギレン・ザビへ通信を行った兵士は

「あの時程、総帥を恐いと思ったことは無い」

と、述懐した。


ソーラ・レイの威力は想像を絶していた。
後に、連邦軍のエースパイロットであった、アムロ・レイ大尉は、

「あれは憎しみの光だ」

と、ソーラ・レイを表現していたという。圧倒的だった。
憎しみの光は、連邦艦隊の3分の1を一瞬の内に消しさり、レビル将軍、デギン公王は、
共に戦死した。
そして、その中に、セキの名もあった。
自分が考案したシステムの原理を応用した兵器によって命を落とすとは、
皮肉以外の何者でも無かったかも知れなかった。

文明発祥以来、人類の歴史は戦争の歴史とも言える。
人類は、より強く、より早く、より大きく。自らの勝利の為に様々な兵器を
開発してきた。
そして今世紀、旧世紀の核以上の力を人類は持つに至った。

現在、1年戦争は終結を迎えている。
しかし、ソーラー・システム2、新型のコロニーレーザーと、太陽エネルギー兵器の
開発競争には拍車がかかり、アースノイドとスペースノイドの対立は治まる気配が見えない。

セキ達は、戦争終結の為に開発したこの兵器の行く末を、この世界の行く末を
宇宙の星空の中で、どのように見守っているのだろうか?


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