白内障早期発見法

  金沢市 石丸 幹夫(いしまる みきお) 耳鼻咽喉科医

眼科医でもない私がこんな記事をかくのはおかしい話であるが、私が白内障に気づいたのは細菌の顕微鏡検査が原因である。それまで普段は少々左眼の近視がすすんだかなと氣にはしていたが、耳鼻科医はいつも額帯鏡をして左眼を酷使しているせいだと氣にもとめなかった。 ある日、双眼顕微鏡の左のレンズの雲状のかげは自分の左目のせいだと気づいたのである。接眼レンズから目を離して眺めると少しもそのかげは見えない。 レンズの倍率を上げるにしたがってその像はシャープになった。いろいろ光学系の本をみて調べてみたり、考えたりしてみると、針穴写真機の理屈で水晶体のよごれが網膜に写るらしい。実際に、カメラのレンズにサインペンで小さな印をつけて景色を撮影しても全くその印は写らなかったが、顕微鏡にカメラつけて写真をとるとしっかりその印が写った。 そこで黒い紙に針で穴を開け白いの壁を自分の眼で覗いてみたところ右眼ではきれいであったのに対して、左眼でみると蜘蛛の巣状の影が特に中央部に濃く出ている。案の定、その影が濃く大きくなるに従って視力は悪くなっていった。ついに手術をうけることになった。術後は当然針穴から覗いても影はない。懇意の年輩のドクターにこの話をして、黒紙の針穴を覗いてみてもらったところ自分の眼に雲状の影を発見され、いい話を聞かせてもらったといわれた。こんな話は結構気づいておられる方も多いと思うが、視力がおちなくても黒紙の針穴を覗いてみると何か発見するかもしれません。          日本医事新報No4187 2004.7.24 p80緑陰随筆