改憲のための国民投票法案を絶対に阻止しよう!

…続き。

 今の改憲論には、論憲や加憲という言い方もありますが、全部まやかしですね。9条の改悪、憲法改正規定の緩和(96条ですね)、それから天皇制の強化と国家緊急権の盛り込み。これらが政府・財界の改憲ポイントです。彼らの目的は、憲法の三原則(平和主義、民主主義、人権擁護主義)の破壊です。具体的にやろうとしていることは、自衛隊を正式な軍隊と規定し、海外で自衛隊を軍事的な活動に従事させることです。その目的は、日本企業の経済活動を保護し、軍事力をもって日本企業の経済活動を実現することです。

 財界にとって桎梏の憲法

 経済同友会があけすけに次のように言っています。「日本型民軍協力を提唱」「自衛隊が警護、民間が人道支援」。これは読売新聞04年11月25日朝刊の記事の見出しです。さらに、「イラクには1970年代後半から日本の発電プラントなどが輸出されたが、イラクの治安が安定しないため、プラントの改修などが思うように行えない」と書いています。これって、まさに“帝国主義”と言うべきではないでしょうか。日本の国家としての、経済界としての他国進出、それを軍事力をバックに行う、まさに侵略行為と言うべきものです。
 改憲の目的はそこにあるんだと思います。長い大不況を抜け出せない日本の経済界・資本家層は、海外権益の確保と拡大に明らかに向かっています。だからこそ、自衛隊を海外で軍事的な活動に従事させたいわけだし、だからこそ憲法9条を改悪したいのです。アメリカとつき合うためとか、アメリカから言われたからじゃなく、もちろん米軍と共同するのだろうけれども、場合によってはアメリカと対抗しながらも、日本の権益(経済界の利益)を確保していくということです。
 こういうことを始めたのは、もちろんアメリカです。最近のブッシュ大統領の発言では、「自由の拡大、圧制の打破」など、アメリカの帝国主義的姿がますますむき出しになっているでしょ。かたやヨーロッパの国々はアメリカに対抗することを明確にしつつある。だから日本の権力者は、アメリカと積極的に共同することで、中東やアジアの権益を確保することをめざしているのです。
 ですから、よく「時代に憲法が合わなくなった」と言われますが、全然ウソですね。日本の経済界の要求に憲法が合わなくなった、桎梏になっている、じゃまになっているということが彼らの本音でしょう。

 迷わず「投票法」絶対反対で

 このような本音は、日本経団連が出している「わが国の基本問題を考える」という報告書(05年1月18日)でもうかがえます。2月3日の読売新聞の「論点」で副会長の三木繁光氏(東京三菱銀行会長)は、優先的に取り組むべき課題として@安全保障の確立、A憲法改正、B国の統治システムの再検討をあげ、まずは憲法9条2項(戦力の不保持)と96条(改正要件)の改正に着手すべきと結論づけています。96条を緩和してしまえば、今後は改憲が楽になると考えているわけです。
 私たちは、このような権力者たちの狙いを見抜き、それと正面から対決しなくてはいけない。このことを抜きにした論議はすべて誤りです。
 自衛隊を軍隊にして軍事行動させれば、必ず激しい人権侵害が起こります。国内においては財産権や自由権を抑圧するし、国外においては他国の人々の生命身体を侵害するわけです。さらに、緊急事態と称してあらゆる人権を制約できるようにしようとしているのが今度の改憲です。ですから、新しい人権規定を改正案に盛り込む、人権と民主主義を守る憲法にするなんて議論は欺瞞きわまりないものなんです。
 私たちは、なんの迷いもなく、改憲に全面的に反対、改憲のための国民投票法案に絶対反対という立場をもっと鮮明にさせる必要があります。

 日弁連「意見書」は問題だ

――日弁連は「投票法案」に関して迷っているということですか?
 そう、迷っているというより、改憲の動きに加担しているというべきです。2月18日に日弁連が出した(3月1日に公表してしまった)「憲法改正国民投票法案に関する意見書」の最後にこう書いてあります。「同法案を制定することとなった場合においては…本意見書に提示した問題点について、国民が論議を尽くすのに必要な情報が提供され、十分な期間が確保されることが重要であると考える」。原案はもっとひどかった。「憲法改正国民投票法案を制定することの是非についてはさておき、法案を制定することとなった場合は…」だった。つまり、投票法制定の政治目的には目をつぶるから、その中身は修正してくれ、という態度だったのです。
 私たち「憲法と人権の日弁連をめざす会」は、この点についてさんざん批判してきました。「改憲全面反対、投票法案絶対反対」でなければならないと。少し文言を直してきたけれども、しかし日弁連執行部の考え方は基本的に変わっていないのが実状です。
 日弁連の中には、色々な考え方の弁護士がいます。しかし、弁護士は今の憲法の三原則を守る立場に立って活動をするのであり、日弁連や各弁護士会は、憲法の三原則を守れ、三原則を破壊する改憲はやめよと発言すべきなのです。ここは弁護士組織として、あるいは弁護士という立場として、一致点のはずです。だから日弁連のこの「意見書」は容認しがたいのです。
 小田中聰樹さん(専修大学教授)の著書『希望としての憲法』(共栄書房)で、次のように書かれています。「国民投票法を作ること自体は、改憲に賛成か反対かは別として好ましいことで反対すべきではないという意見がありますが、これは正しくありません。憲法を改正するために国民投票法を作ろうというのですから、改憲に反対する者は、これを阻止すべきは当然です。その落とし穴にはまってはいけません」。
――中身の良し悪しを議論するものではないということですが、しかし意外に長い法案(原案)ですね。
 そう。これは憲法調査推進議員連盟が2001年11月に発表したもので、105条からなっています。手続き規定がたくさんあるので、法案が長いのです。これに「国民投票法等に関する与党協議会実務者会議」が修正を加え、国会提出の法案にしようとしています。

 投票運動は全面禁止!

 この法案の問題点をあえて指摘するならば、一つは投票運動を全面的に規制していることです。議連法案の第63条から71条までがそれです。
 たとえば第69条では、「新聞紙又は雑誌は、国民投票に関する報道及び評価において、…表現の自由を濫用して国民投票の公正を害してはならない」と書かれ、第70条では「新聞紙又は雑誌の不法利用等の制限」が書かれています。簡単に言うと、マスコミは国民投票に関する報道を一切してはならないし、市民運動も意見広告などをしてはならないということです。マスコミなどはこの点に食らいついて、国民投票を実施する以上、国民の活発な議論に委ねられるべきであり、こうした報道規制はけしからんと批判しています。この批判自体は間違いではないのですが、やはり法案の政治目的を抜きにした議論は誤りです。日本ペンクラブが3月15日に国民投票法案反対の声明を出しましたが、彼らの主張で意義があるのは、投票法案の白紙撤回を求めている点だと思いました。
 だいたい、今のマスコミ報道を見て、自由で民主的に行われていると言えるでしょうか。報道規制をはずしてどんなに民主的な形をとろうとも、マスコミが支配者層の思うとおりにあやつられていくに違いありません。
 また、運動禁止の期間は、内閣が国民投票を○月△日に行うと決めてからの1〜3ヶ月間となり、事実上、国会での採決(改正の発議)後は改憲反対運動ができなくなるということでしょう。
 さらに、公務員や教育者(私立を含む教員や学校の長)がその立場を利用して投票運動をしてはならないという規定もあります。これは、全国にある自治体職員や教職員の労働組合などに改憲反対の運動をさせないことが狙いだと思われます。
 二つめは、「憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票数の2分の1を超えた場合に国民の承認があったものとする」としている点です。憲法96条の考え方に基づけば、少なくとも投票総数の過半数、もっと原則的に考えれば、全有権者(これ自体も問題はあるのですが)の過半数でなければならないでしょう。たとえば投票率40%で、21%の人が賛成を投じればそれでいいのか、ということです。投票を拒否した(行かなかった)60%の人は、改憲に賛成しないと見るべきです。
 小泉政権は、国会法改悪案と憲法「改正」国民投票法案を4月中にも出してくるでしょう。改憲全面反対、投票法案絶対反対で統一戦線をひろげ、力強い闘いをつくりましょう。(了)