各種三極五極管の超三結 V1 アンプ製作記


 6BM8 を筆頭に、電圧増幅三極管と五極出力管を同一管内に封入した管種は非常におおいですが、殆どの生い立ちおよび用途は TV 受像機の映像関係回路のようです。
 筆者はそれらのうちの何種類かを超三結 V1 アンプとして動作試験してきしました。 しかし一管種毎に一台製作する対応では、外部電源を併用するアンプ本体部分を製作しても、つぎつぎと数が増えてかなわず、またユニバーサル化もソケット接続が種々に亙り困難な例が多く、結局極めてポピュラーである 6BM8 以外は、短命でした。
 本文は、機能的にも性能的にも全く問題が無いにもかかわらず、常に次の実験に追われるようにして分解・転用の対象となった薄幸な?三極五極管アンプの製作記を、ここに一括して供養?するものです。(2003/06) 

 *** 目次 ***
1 6LR8 超三結V1 アンプ製作記
2 ECL86/6GW8 超三結V1 アンプ製作記
3 6R-HP3/6AW8A/6HZ8 超三結V1 アンプ製作記
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1 6LR8 超三結V1 アンプ製作記

1998/03〜2002/02  宇多 弘
6lr8_top.jpg

1.1 プロローグ

 A市のTさんから、6LR8 の超三結V1 アンプを一緒に試作しないかとのお誘いがあり、Philips の 6LR8 三本とマグノーバソケット2個を戴きました。 管球の構造はガラスステムから脚が出ているミニチュア管を大きくした、6EW7 や コンパクトロンの 6JS6A/C, 6KD6 などと類似のものですが、トップのガス抜きピリケン頭とかズ太い胴体が、他の同類の球とはひときわ異なる、真空管らしくない違和感をかもしだしていました。(1998/03)

1.2 規格の分析

 取り敢えず、一木典義氏の全日本真空管ハンドブックを参照して、各特性諸元の見当を付けてみました。 6LR8 五極部 (p) は Pp = 15W と比較的大きいので、動作例に記載の低い Ep 動作ではなく、規格一杯の場合の Ip を見当付けると 250V60mA = 15W となり、Ip+Isg = 60mA ならば安全圏内です。
 三極部 (t) はμ=57 の内部抵抗の高いハイミュー管であり、6AT66AV6 類似なので、電圧増幅五極管と組み合わせて簡単に超三結V1 回路の前段が構成できるとの見通しを得ました。
 6LR8 (p) を A1 シングルで鳴らす場合、前記の 250V60mA から推定して出力は精々 4〜5W 程度かと思われますが、四角いプレートの形状から見ても 6Y6G/GT のような音が出るかもしれないという期待が湧きました。(1998/03)  

1.3 実装計画

 課題は出力段の動作点設定にあると考えました。 ハンドブック記載の動作例では Ep = 130V, Esg = 125V, Ik = 50mA 程度と内輪な動作であり、Pp = 15W の球にはふさわしくないので、規格一杯の 250V60mA の90% 程度を目標にしようとしました。 アンプ全体の構成は下記の通りです。(1998/03)

初段   リニアライザ 電圧帰還管 出力段  出力トランス   SD
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
6BL8-p  6BL8-t(D)   6LR8-t   6LR8-p  3.5kΩ/8Ω  6BY5GA/2
     二極管接続  P-G NFB  直結    中型

 その後、筆者の超三結アンプの標準回路としてはリニアライザを廃して、音質的にはよりソフトな感じの P-K NFB 併用に変わりました。 最新の「三代目」リバイバル構成では下記のとおりです。(2001/09)

初段   P-K 帰還  電圧帰還管 出力段  出力トランス   SD
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
6AU6  12AU7/2(D)   6LR8-t   6LR8-p  3.5kΩ/8Ωx2  1N4007
     二極管接続  P-G NFB  直結   中型の並列重ね    

 途中経過は省略し、三代目リバイバル構成の回路図を以下に示します。(2001/09)

6lr8sch.gif

1.4 前段〜電圧帰還管まわり

 出力段が -10V のバイアスということは、必要なドライブ電圧は実効 15V peak to peak 程度ということであり、ドライブ方式にはほとんど課題は発生しません。 五極管部に与える Esg は、動作を楽にするため出力段の 6LR8 五極部の自己バイアスを利用し、出来るだけ高めに 60V を想定しました。(1998/03)

1.5 出力段まわり

 電圧増幅五極管に与える Esg を60V としたので、出力段の 6LR8 五極部の自己バイアス抵抗は 1kΩと自動的に決まってしまいました。  後日Tさんのアンプと自己バイアス抵抗値を照合したら全く同じ値でした。 まずは規格通り 250V60mA の動作に設定します。
 出力トランスは 5W 以下、Ip=60mA 以下で中型出力トランスにて問題なしとしました。 [本件は、後日やや問題であったことが判明しました。]
 電源へのストッピング・ダイオードには傍熱整流管の 6BY5GA を採用しました。 これは 6AS7GA/6080 の二極管接続でも構いませんが、すこし B 電圧が高すぎなので、電圧降下の大きい 6BY5GA (60mA で約 15V) でも支障なしとしました。 [本件は、後日やや問題であったことが判明しました。](1998/03)
 フト思いついてストッピング・ダイオード (SD) の 6BY5GA をシリコンダイオード 1N4007 に替えて見て、音が固くなったけれどシッカリしたので、オドロキ。 6BY5GA の内部抵抗が、かなり音に影響していました。 それで以後の超三結アンプの SD は全て 1N4007 に統一しました。(1999/01)

1.6 電源部

 ユッタリした動作を望むならば、B 電源は ch 当たり最大 320V 80mA 程度が必要です。 動作点を変更するためには B 電圧を 240V 程度まで抵抗器を使わずにタップで変更できると都合が良いのですが。 所要ヒータ電源は 6BL8=6.3V0.45A, 6LR8=6.3V1.5A です。(1998/03)

1.7 実装組み立て、動作試験

 実験シャーシを転用し、汎用電源との接続は、アンプ本体から1m 程度延ばしたケーブルの先に US プラグを出して、汎用電源側の US ソケットに挿し込みます。 また、アンプ本体中の B 電源取り入れラグおよびバスアース間には 350V100μFのバイパスキャパシタを追加して B 電源の信号に対するアースとします。 この処置は高々1m の電源ケーブルなので不要かもしれませんが、若干でも B 電源にインピーダンスを持つので、別電源の場合は念のため処置しています。
 1998/04 のある日曜日 に全ての配線は終りましたが、配線の点検および動作試験はまだでした。 翌週の日曜日の夕方、Tさんから「6LR8 アンプが完成したので鳴き合わせしたいが、どうですか?」との電話がありました。 そこで「試験が終り次第参上します」と答え、急遽動作試験に入りました。
 配線の点検はスキップして、直接パワーオンして動作点検に入りました。 直ちに動作したので動作電圧を点検した結果、6BY5GA の電圧降下が効いて、予定より Ep が少し低かった他は、概ね予定通りでした。(1998/03〜04)

 ●Ep = 280V (対カソード 220V), Esg = 175V (対カソード 115V)
 ●出力段 Ek 点検、片 ch は 60V、他 ch は 65V→60V に初段 Rk 調整

 殆ど設計値通りでホッとして、暫時レコードを試聴し品質をチェックましたが、特段の歪、ハム、ノイズは検知されなかったので、Tさん宅に向かいレコード演奏しながら相互に動作電圧・電流など動作状態と動作品質を確認し合いました。

1.8 エピローグ〜組み直し〜リバイバル〜分解

 6LR81619 に次いで、始めて手にした新管種でした。 これまで試作した 6BQ5, 807, 6BM8, 6Y6G/GT、それに手持ちの 6F6/G/GT, EL33, 6V6G/GT, CV450 等は、いずれも overall NFB による標準シングル回路の動作とその音、および超三結アンプにした場合の動作と音が予測できました。 今回の 6LR8 アンプについてもそのパターンから特段にはずれるものではなく、全く予想通りに動作できました。 今回の組み立てにて、超三結アンプの設計・施工の一般論を経験的に獲得したような気分になりました。(1998/04)
 初期の本機はバラックセットだったので、既製品のボンネットつきシャーシへの本組みに際して SD をシリコンダイオードに変更し、出力トランスは小型の一次パラ二次シリ接続を使用し (1999/01)、その後、分解・整理しました。(2000/03)

 ところが捨てる神に拾う神、何種かの球がユニバーサル・超三結アンプに吸収されて空きシャーシが発生したので「もう一回挑戦・確認するぞ」と二度目の組直し・・・三度目の正直・・・に掛かりました。 どうやら最初のバージョンおよび二番目では中型出力トランス一個であり大振幅時に飽和気味だったようです。 今回は中型出力トランス二個を一次二次パラ接続にして Ip の余裕を 50% 程度確保し低域を強化しました。 これで不足気味だった低音域を確保して、最近入手したコンパクトロン同等管 6LU8 の活路も得た訳です。 (2001/09)
 次の実験がスタンバイで分解しました。(2002/02)


改訂記録
1998/03〜04:初版一号作例
1999/01  :SD の 変更、シャーシ更新二号作例
2000/03  :分解・転用
2001/09  :別電源にてリバイバル三号作例
2002/02  :分解・転用

2 ECL86/6GW8 超三結V1 アンプ製作記

6gw8.jpg
1999/10--2000/04 宇多 弘

2.1 始めに

 6BM8 の類似球 6GW8/ECL86 を購入して、そのまま忘れていました。 これでは死蔵もいいところ。 活用するからには 6BM8 超三V1 アンプと対比させようと考えました。

2.2 予備調査

 6BM86GW8 との相違は下記のとおりです。
6BM8-6GW8 その他 規格表
 
管球型名
標記
単位
6BM8
6GW8
6GV8
6HZ8
6AW8A
6R-HP3
(相当管、互換管) ECL82ECL86ECL85
構造上の3-5極管分類--- ---TV 用
高μ3極
同期分離
映像増幅
口金接続形式9EX9LZ9LY9DX9DX9DX
ヒーター電圧EhV6.36.36.36.36.36.3
ヒーター電流IhA0.780.70.91.1250.60.75
最大プレート電圧EpmaxV600300250330300330
最大プレート損失PpW5.09.07.08.03.05.0
最大スクリーン電圧EsgmaxV300300250330300330
最大スクリーン損失PsgW1.81.52.02.01.01.1
三極部最大プレート電圧EptmaxV300300250300300330
三極部最大プレート損失PptW1.00.52.01.01.02.0
五極部 A 級増幅動作例
プレート電圧EpV200250170250200250
スクリーン電圧EsgV200250170170150125
制御グリッド電圧Eg1V-16-7.0-15100Ω180Ω-
無信号時プレート電流IpmA353641291325
無信号時スクリーン電流IsgmA7.05.52.76.03.57.0
内部抵抗Rp22.045.025.0140.0400.070.0
相互コンダクタンスGmmS6.410.07.512.69.012.5
所定出力時の負荷抵抗RLΩ5,6007,000----
出力PoW3.54.2----
三極部 A 級増幅動作例
三極部プレート電圧EptV 100250100200200125
三極部グリッド電圧EgtV0-1.7-0.8-2.0-2.0-1.0
三極部プレート電流IptmA3.51.25.03.54.013.5
三極部内部抵抗Rpt-62.57.617.517.5-
三極部 GmGmtmS2.51.66.54.04.06.4
三極部増幅率μ-7010050707033

2.3 設計と実装

 初段は 6BM8 超三V1 アンプと同じ 6AK5/5654 としました。 但し B 電源に関してはカサ上げ分、約 50V を加えて 300V としました。
 電源は外付けとして、簡単に仕上げるため 160mm x 110mm x 60mm の背高ノッポの「コ」の字型合わせシャーシに組み込みました。 取りつけは簡単、外観は可愛らしく纏めたのですが、配線は結構込み入って立体となりました。

 本機の回路図を下記に示します。

2.4 動作と比較

 配線および点検が終わり、パワーを投入し、バイアス調整して、直ちに一応納得できるレベルに達したので、早速 6BM8 超三V1 アンプと比較しました。
 大差はないものの 6GW8 の五極管部の動作電圧が 6BM8 のそれより高い分だけ、電圧振幅が高いためか超三V1 アンプ特有の迫力が少し足りない感じですが、A/B テストによる比較ではないので定かではありません。
 6GW8 の方が出力が大きいはずですが、音がおとなしい為か、これも差を感じません。 あまり特徴のないアンプになりましたが、時々聴いて特徴を発見しましょう。(1999/10) 本機は、あまり稼働率も上がらず特徴も見当たらないので、パーツ取りのために分解・消滅しました。(2000/04)
改訂記録
1999/10:初版一号作例
2000/04:分解・転用

3 6R-HP3/6AW8A/6HZ8 超三結V1 アンプ製作記

6rhp3.jpg
2000/07〜2002/02 宇多 弘

3.1 経緯および事前調査

◆ 6R-HP3 について

 6R-HP3 という、ミニチュア 9ピンの三極五極複合管を会員の A さんから戴きました。 勿論「鳴らしてご覧なさい」「了解です」と、言葉に出すまでもなく、お互い暗黙の了解〜すなわちそれが大前提です。
 さてその球です。 6AW8A など TV 用の同期分離、映像増幅管とか、垂直発振増幅用よりもオーディオ用として有名になってしまった 6BM8 の一族であろうと、見当をつける所までは簡単ですが、その先は真空管式 TV などを手がけた経験もなく「未踏の奥地」です。(2000/07)

◆ 球の規格概要

 そこで、それらしい類似球を規格表から拾い上げると、出てくるわ出てくるわ・・・三極部のμ、Rp、Gm も様々、五極部のそれらも様々であり、xxxxA という A 付き改良版に限定しても 23 種・・・とても収拾が付かないので、下記の制限を設けて合致するものだけを GE の Essential Characteristics から拾って比較対照して見ました。

 ●口金接続は 6R-HP3 と同様の 9DX に限る。(コンパクトロンは除外。)
 ●三極部の Pp は 2W に限る。(ただし例外を認める。) 
 ●五極部の Pp は 5W 以上に限る。 

 その結果、6R-HP3 類似球は 6CX8, 6JL8, 6JY8, 6KR8A, 6LQ8 に絞られましたが、似たり寄ったりであるにもかかわらず、一つとして同じ規格のものはありません。 米国系の球にはオリジナル球らしいものが見当たらず、6R-HP3 は純国産球と判定しました。 上記の制限外だけど手持ちにある同口金接続 (9DX) である 6AW8A, 6HZ8 の規格を表に追加しました。(2000/08)

 それにしても、どれもこれも、どうしてこのように類似球が多いのかよく判りません。 恐らく微妙に異なる規格から察知すると、動作電圧環境および信号振幅などの配分に最適なもの・・・と設計して、その結果種類が増えてしまったのでしょうか。 挿し替えて微調整すれば、みな素直に動作してしまいそうな一族です。 また、何人かの方がアンプとして使われおられる五極〜双三極コンバクトロン 6AS11 の五極管部は類似です。(2000/07)

6R-HP3 及び類似球規格一覧
管球型名
標記
単位
6BM8
6GW8
6GV8
6HZ8
6AW8A
6R-HP3
(相当管、互換管) ECL82ECL86ECL85
構造上の3-5極管分類--- ---TV 用
高μ3極
同期分離
映像増幅
口金接続形式9EX9LZ9LY9DX9DX9DX
ヒーター電圧EhV6.36.36.36.36.36.3
ヒーター電流IhA0.780.70.91.1250.60.75
最大プレート電圧EpmaxV600300250330300330
最大プレート損失PpW5.09.07.08.03.05.0
最大スクリーン電圧EsgmaxV300300250330300330
最大スクリーン損失PsgW1.81.52.02.01.01.1
三極部最大プレート電圧EptmaxV300300250300300330
三極部最大プレート損失PptW1.00.52.01.01.02.0
五極部 A 級増幅動作例
プレート電圧EpV200250170250200250
スクリーン電圧EsgV200250170170150125
制御グリッド電圧Eg1V-16-7.0-15100Ω180Ω-
無信号時プレート電流IpmA353641291325
無信号時スクリーン電流IsgmA 7.05.52.76.03.57.0
内部抵抗Rp22.045.025.0140.0400.070.0
相互コンダクタンスGmmS6.410.07.512.69.012.5
所定出力時の負荷抵抗RLΩ5,6007,000----
出力PoW3.54.2----
三極部 A 級増幅動作例
三極部プレート電圧EptV 100250100200200125
三極部グリッド電圧EgtV0-1.7-0.8-2.0-2.0-1.0
三極部プレート電流IptmA3.51.25.03.54.013.5
三極部内部抵抗Rpt-62.57.617.517.5-
三極部 GmGmtmS2.51.66.54.04.06.4
三極部増幅率μ-7010050707033

3.2 実装計画

◆ 実装計画その一 (初期セット)  6R-HP3 の超三結V1 アンプ化検討に際し、規格表が示す性能諸元からは特段の問題点は発見されません。 電圧帰還管からの出力直流電位・・・嵩上げ電圧+終段バイアス電圧=終段カソード電圧 Ek を「毎度お馴染み」標準 60V 近辺として、Ik から求めて少し高めだけど、終段カソード挿入抵抗を一方的に Rk=2kΩと決め込み、終段スクリーン・グリッド電圧 Esg を規格表にしたがってドロッパ・ブリーダにて所定値になるよう計算してオシマイです。(2000/07)

◆ 実装計画その二 (拡張セット)  6R-HP3 アンプは、その後超小型出力トランスの実験台などに流用され、出力管が他のものに差し換えられていましたが、初期セットの頃から意識していた手持ちの 6AW8A, 6HZ8 の実験計画に際して 6R-HP3 は当然一緒に復活する条件でした。 拡張セットへの復旧および改造箇所は下記の通りです。 (2001/07)

 (1) 出力段の自己バイアス+嵩上げ電圧発生用のカソード抵抗を、各々の球に合わせてスイッチ可変としました。
 (2) スクリーン・グリッドへの電圧供給は、各球の動作例によりマチマチですが、最も低い
  6R-HP3 の 125V に合わせ、切り替えはしないことにしました。
 (3) 電圧帰還管については、各々の三極管部を利用するとバラバラなので共通にしました。

3.3 実装

 下記表の各項にしました。 ●印=初期セット(2000/07) の条件、 ◆印=拡張セット(2001/07) の条件です。 区別なし項目は一貫しています。
回路・用途目的
 超三結V1 とし、各種の超三結V1 アンプと試聴比較をします。
電源
 B 電源は100V-200V セパレーショントランスの二次側 220V タップからブリッジ整流して直流供給電圧 Ebb=245V を得、終段のカソード電圧を 60V 程度にして Ep=175V を確保しました。
適正 Ek の設定
6R-HP3 の規格表に従って Ik = Ip+Isg = 25+7 = 32mA、前述のとおり Rk=2kΩとしたので、一応 Ek=64V となりますが、実際に動作点調整した場合には少しバイアスの深い側〜Ik の少ない側に音質的に好ましい点が見つかる場合が多く、多めにしました。
6HZ8=1.68kΩ、6R-HP3=1.86kΩ、6AW8A=3.66kΩとなるようにスイッチ切り替えにしました。
適正 Esg の設定
6R-HP3 の規格表に従って終段 Esg=125V とし Ek を加えて、対接地 Esgg=185V、Ebb から7mA 以上で 60V ドロップするドロッパ・ブリーダを構成することになり、ブリーダ電流を 5mA 流すものとすると、ドロッパ抵抗 60V/(7+5)mA = 5.0kΩ、ブリーダ抵抗 185V/5mA = 37kΩとなるので、5.6kΩ+39kΩとしました。
◆ 直列ドロッパ 15kΩを挿入して済ませました。
出力トランス
● 東栄変成器製の「自称 T1200」の7kΩ〜8Ωとしました。
◆ 東栄変成器製の「自称 T600」の重ね、一次パラレル二次パラレルとしました。
初段、電圧帰還管 
● 初段に 6AK5、電圧帰還管には 6R-HP3 の三極部、P-K NFB には 5963(=12AU7 相当) の二極管接続を挿入して非直線性を持たせました。
◆ 初段に 6AS6、電圧帰還管には 12AT7/2、P-K NFB には各 3-5 極管の三極部を二極管接続し、NFB 信号回路に挿入しました。
部品配置
 トランス相互間の干渉を避けるため、写真に示すように距離をとって並べました。
回路図
 下記に示します。 いずれの球も規格より10% 程度内輪の動作点になるように設定してあります。

6rhp3sch.gif

3.4 用途など

 本機は、一週間ほど自宅にてエージング動作させて様子を見、その後月例のミーティングにて 6R-HP3 をご提供下さった A さんおよび出席の皆さんに聴いて戴き、一応の「合格」を戴きました。 とにかくパワーは 1W ソコソコと出ないけれど、消費電力も少なく、深夜に BGMを流す時にでも使いましょう。(2000/07)
 一時他の実験に転用されていた本機は、新しい仲間である弟分の 6AW8A と兄貴分の 6HZ8 を連れて復活しました。 GT 管のように口金接続が一致する球のグループが、MT 管ではなかなか構成できず、かなり幅のある仲間同志ですが、スイッチ一つで挿し換えに対応できる、ささやかな同期分離〜映像増幅 3-5 極管のユニバーサル・アンプとなりました。(2001/07)
 転用のため分解しました。(2002/02)
改訂履歴
●2000/07:試作完了時
●2000/08:出力トランス変更、外部電源化
●2001/07:スイッチ切り替え 6AW8A, 6HZ8 挿し換え運用機能追加
●2002/02:分解転用