三極管 P/G NFB SRPP ドライブ・アンプ
1999/11 宇多 弘
三極出力管の超三極管接続アンプの試験過程にて、P/G NFB を併用した
SRPP ドライブ・C/R 結合アンプを、1626, 2A3, 6EM7, CV18パラ の各シングル四例について試作しました。
その後の調査分析により、これらのアンプは厳密には超三極管接続アンプに属さないため、参考資料として簡単な説明のみを残して、まとめて整理することにしました。
なお回路図は上記各アンプ共通であるため、以下に示します。
三極管 P/G NFB SRPP ドライブ・アンプ共通回路図
1 1626 アンプ
1.1 規格諸元(1997/08)
勤めの帰途に秋葉原に寄り、1626 (VT-137) を4本購入しました。
手元の古い資料では、下記の項目しか記載されていませんでした。
●形式 :傍熱三極管 (球のサイズ:ST38)
●口金接続:6Q(6J5 と同じ接続、US)
●Eh/Ih :12.6V 0.25A
●用途 :C 級発振または増幅
●動作例 :Ep=250V, Eg=-70V, Ip=25mA
1.2 規格の推定と分析
Ep/Ip の様子からすると、Pp は精々 7W 止りと推定しました。(1999/07 に
5W であることが判明しました。)
●電極構造:グリッドの間隔が 0.8mm 程度とかなり広い。バイアスを -70Vと深くしないと
Ip が抑えられないのかもしれない。プレートは 長方形、黒鉛仕上げ。
●ヒーター電力が3.1W と少なく、最大カソード電流 (Ik max) が少ないものと思われる。
●μ (増幅率) は4 程度と仮定してみる。これ以上低いと使いにくい。
●Rp (内部抵抗) は 2〜3kΩと推定される。
●Gm (相互コンダクタンス) は逆算して 1300〜2000μモー(mho)と推定される。
A1 シングルで鳴らす場合、出力は精々 1.5W 程度かと思われる。
1.3 実装計画
課題はドライバー段の選択、および出力段の動作点の設定にあると考えられます。
70V のバイアスということは、ドライブ電圧は、Peak to peak で100V が必要ということで、これを得るためには、ドライブ方式をしっかり選択する必要があります。
2SK30A の出力を直接カソードへ入力した 12AU7 のGG を初段とするSRPP のC/R
結合ならば充分ドライブできると予想しました。
1.4 動作試験結果 (1998/05〜1999/08)
動作電圧等の測定結果は Ebb=300V,Ek=48V 従って Ep=:250V,Ip=17mA であり、Pp=5W
の規格内でした。
試聴の感想では1626 アンプの音質は、細く神経質だが、透明でもあります。
2 2A3 アンプ
2.1 アンプの構成(1998/05)
SRPP の C/R 結合 P/G NFB による CV18 アンプの成功に触発されて、同様な
2A3 のアンプを整備しました。
初段 SRPP の部分は例の 2SK30A-Y の ドレーンを 12AU7 のGG アンプのカソードに入力した初段に12AU7/12BH7A
のカソードフォロワを次段としてカスコード接続したものを、CV18 単管 s の時から一貫して使い回してきたものです。(6080
とドライブトランスを外した時点から、余った初段の12AU7/2 を二極管接続にして直列に挿入し、直線性改善素子としました。)
2.2 電源と終段
適当な電源トランスがなかったので、年代もののトリオ(現在の kenwood) の送信機
TX88DS の パワートランス (T01170A) 6.3V 3Ax2, 167V 550mA という時代物を起用しまし、2.5V3A
二系統のとれるヒータートランスとして東栄変成器の J63WN を起用しました。
T01170A の B 巻線 AC167 V はまともに全波倍圧整流するとDC400V 近くになり高すぎなので、半波倍圧整流として開放にて320V
を得ることができました。 電圧の調整はリップルフィルタ用の抵抗値を100Ω/100Ωにて適正値まで落し、二段πによる半波倍圧整流のリップルハム対策として約
800 μF を投入しました。
B 電源が直接起動してしまう、一斉パワーオンをすると 2A3 の管内にて変な発光を起こすので、Time
Delay Relay を入れました。
終段 2A3 のグリッドリークを 330kΩ としていたのですが、少し暴れ気味なので
30kΩとして落ち着かせました。
2.3 動作試験と感想 (1998/05)・調整(1998/06)
2A3 SRPP ドライブアンプは、CV18 パラ s のSRPP ドライブアンプには出力と迫力において劣り、低音がモワッとしています。 パワーの差はともかく、低音の差はμの違いらしく
CV18 はμ=7, 2A3 はμ=4.2 で、2A3 では前段 SRPP への帰還量が少ないことかと思います。
取り敢えず低音の締まりを得るため、CNF を試みました。 その効果は予想以上でした。
3 6EM7 アンプ
3.1 経過 (1999/01)
SRPP ドライブ 6EM7 アンプは、すでに試作済みの、出力が少なくて不満な1626
を 6EM7 に置き換えただけの工作によるものです。 とにかく、バイアス電圧が
40V だから、ドライブは peak to peak で 60V 近く要求するので、1626 アンプの前段をそっくり残して単にパワー段だけを入れ替えたものです。
1626 では内部抵抗が高いためか、低音が締まらずカソードNF で抑えたのですが、6EM7の(2)
三極部 ならば 750Ωと 2A3 よりも低く、μが少し高いのでカソードNF は不要ではないかと考えました。
6EM7 ならば 250V 40mA のプレート入力で Pp=10W の目一杯ですが、出力
2.5W は引き出せると想定しました。 結局、回路図のように前段に「強力SRPP」を使用した全く標準的な回路となりました。
恐らく 5998/5998A では全く同じ回路が適用出来るでしょう。但し 6EM7
よりももう少しプレート入力を入れる余力があります。
全く予想通り、多極管の超三アンプに比べると低音が緩いけれど、12B4A
超三V1アンプ、1626, 2A3 の各 P/G NFB 併用 SRPP ドライブアンプよりはシッカリした低音になりました。
3.2 改善余地
もっと低音を締め上げるならば、強力 SRPP のカソードフォロワ段(電圧帰還管としても動作しているはず)にμが低いものを宛ててP/G
NFB の量を増やしたいところですが、プレート電流が少なくてμの低い三極管は見当たりません。
そこで 1626 または 12B4A 等を併用することになりますが、そうなると初段には
20mA 程度のプレート電流が流せる、12BY7A または 6CL6等の出力管との組み合わせによる「パワーSRPP」とせざるを得なくなります。
しかし、それだけでもスピーカが鳴る規模になるので、グリッド電流が大量に流れるCV18
ではともかく、流れない一般の出力管ならば明らかに過剰仕様です。
そこで、パワーSRPP にはせずとも、終段のプレートから初段のカソードに別途に
PK 帰還を差動回路にて加える等の工夫余地があると考えています。 現状では使用していない12AX7
に似ている 6EM7 (1) 三極部を、その P/K NFB 回路に利用してトライする予定です。 →{実は
SRPP ドライブ CV18 パラシングルに化けてしまい実験せずじまいでした。(1999/04)
4 CV18 パラレルアンプ
(1999/04) に試作したものです。 回路図は前掲の通りです。 cv18-1.htm CV18 各種アンプの項をご参照下さい。
以上