各種アンプの出力抵抗および DF 測定例

2003/07-2007/10 宇多 弘 UDA Hiroshi

 村田先生はじめ関係各位からご指導を戴き、手軽に測定できる下記のような条件にて、筆者手持ちアンプの出力抵抗 (Ro) およびダンピング・ファクタ (DF) を求め、各々のアンプの音質傾向・特徴との関連性を探ってみました。

● 測定条件
 (1) 測定用信号   =AC 50Hz 数V・・・(ヒーター電源またはヒータートランス等にて)
 (2) 測定用ダミー抵抗=8Ω10W セメント抵抗
 (3) 測定用電圧計  =10MΩ入力ディジタルテスタ AC レンジ

● 測定方法 
 (1) 被試験アンプの出力端に測定用ダミー抵抗 Rd = 8Ωを接続、入力ゲインを絞り測定用信号を入力、
 (2) 出力端に負荷接続時出力電圧 El=1.00V (出力=125mW/8Ω) が得られるよう入力ゲインを調整、
 (3) 次に測定用ダミー抵抗を外して出力端を解放状態とし、無負荷時出力電圧 Eo を求め、
 (4) 出力抵抗:Ro (Ω) = (Eo/El-1)*Rd に El=1.0 を当てはめ (Eo/1-1)*8 = (Eo-1)*8 より、
 (5) ダンビングファクタ:DF = El/(Eo-El) に El=1.0 を当てはめ 1/(Eo-1) =8/Ro より求めます。

● 測定結果
  各種アンプの P-G NFB on/off 時の Ro、on 時の DF、およびコメント
  (但し、V1=超三結、倒立μフォロワ・ドライブ、G2 ドリブン=スクリーン・グリッド・ドリブン゙)
回路方式/出力管等
但し、赤字は追加分
帰還管/ ドライバ段回路
出力 トランス 条件
一次/二次
Ro
P-G NFB
on/off
DF
P-G NFB
on/off
コメント
TDA 1552Q 定電圧amp(Philips パワーIC) (電源=12V2.5A)0.1Ω/-80/-
超三結 V1 アンプ P-G NFB'ed 倒立μフォロワドリブン
6BM8(p) A1s6BM8(t) V1 直結7kΩ/8Ω 2.1Ω/- 3.8/-(注1)
EL34 A1s (ユニバーサル)12AT7/2 V1 直結2.5kΩ/8Ω 1.4Ω/14.7Ω 5.7/0.54(注1)
6L6GC A1s (ユニバーサル)同上同上 1.6Ω/13.6Ω 5.0/0.59(注1)
EL34 A1s (ユニバーサル)6BL8(t) V1 C/R 結合2.5kΩ/8Ω 1.4Ω/- 5.7/-(注1)
6L6GC A1s (ユニバーサル)同上同上 1.6Ω/- 5.0/-(注1)
6550 A1s (ユニバーサル)6U8A(t) V1 直結2.5kΩ/8Ω 1.7Ω/- 4.7/-(注1)
6Y6GT A1pp6GH8A(t) V1 C/R 結合2.5kΩ-2.5kΩ/8Ω 1.6Ω/- 5.0/-(注1)
準超三結 アンプ P-G NFB'ed カソフォロ・ドリブン 但し P-K NFB 併用
12AU7/2 A1s (ユニバー)6BL8(t) カソフォロ C/R 結合7kΩ/4Ω 3.9Ω/6.3Ω 2.1/1.3
6AC5GT +13.5V A2s12BH7A/2 カソフォロ 直結7kΩ/8Ω 2.6Ω/3.2Ω 3.1/2.5(注2)
2A3 A1s12B4A カソフォロ C/R 結合3.5kΩ/8Ω 3.4Ω/- 2.4/-
300B A1s同上2.5kΩ/8Ω 3.3Ω/- 2.4/-
G2 ドリブン 準超三結P-G NFB'ed カソフォロ・ドリブン但し P-K NFB 併用
12G-B3 A2s (ユニバー)12B4A カソフォロ G2 直結2.5kΩ/8Ω 6.6Ω/9.6Ω 1.6/0.83
6BM8(p) A2s12AU7パラ カソフォロ G2 直結7kΩ/8Ω 3.2Ω/- 2.5/-
6BM8(p) A2pp12AU7パラ カソフォロ G2 直結9kΩ-9kΩ/8Ω(注3) 5.6Ω/- 1.4/-
R分圧 P-G NFB アンプ P-G 280k/G-K ?但し P-K NFB 併用
EL34 A1s (ユニバーサル)V1 C/R結合 抵抗分圧モード 2.5kΩ/8Ω1.7Ω/-4.7/-(注4)
6L6GC A1s (ユニバーサル)V1 C/R結合 抵抗分圧モード 同上1.9Ω/- 4.2/-(注4)
P-G NFB'ed SRPP ドリブン アンプ
EL34 (三結) A1s12AX7 SRPP 初段 2.5kΩ/8Ω2.0Ω/- 4.0/-
無帰還 アンプ (ドライバ IC/ドライブ トランス)
CV18 0-bias A2パラs1552Q/T850-600 逆3.5kΩ/8Ω -/6.2Ω -/1.29適度
CV18 0-bias A2pp同上x2 片方は位相反転兼4kΩ-4kΩ/8Ω -/7.6Ω -/1.05適度
6N7GT 0-bias Bpp同上x2 兼 9kΩ-9kΩ/8Ω (注3) -/8.4Ω -/0.95適度
UZ79 0-bias Bpp同上x2 兼 9kΩ-9kΩ/8Ω (注3) -/15.0Ω -/0.53緩め
2SC5200 SEPP/OTL同上x2 兼 12AU7/2 直結driven エミッタ フォロワ -/5.6Ω -/1.4適度

(注1) 6BM8 超三結 V1 を除いて、いずれのアンプも DF=5 前後が得られています。
   ユニバーサル超三結 V1 C/R 結合アンプは、ユニバーサル超三結 V1 直結アンプと同等でした。

(注2) 12BH7A/2+6AC5GT (μ=57) は P-G NFB 効果が少ないことが判りましたが、12BH7A は
   ダイレクト・カップルド管である 6AC5GT が指定する何種類かのドライバ管の一つであり、
   UY37, UY56/76, 12AU7 パラレル等以外は選択できず、ほぼ固定条件になります。

(注3) 春日 6615WP/6635P を使用して一次側 2.5kΩ-2.5kΩ に対し二次側を 4Ω-12Ω 間接続にて
   9kΩ-9kΩ/0-8Ω 相当とし、P-P 間14kΩ-14kΩ の UZ79 は 9kΩ-9kΩ にて代用しました。

(注4) 初段管とその抵抗負荷を用いた抵抗分圧モードの P-G NFB では、直結または C/R 結合
   いずれの超三結 V1 回路よりも浅くなりました。

● 調査の結果
 一部のアンプについて下記の各項が明らかになり、また今後の各回路方式の追加調査、新規設計および現用機の改造等に対しても、一つの指針となりました。 

 (1) 帰還量の確保 〜帰還管のμ値に依存 〜帰還管の選択(〜トータルゲインとの兼ね合い)
 (2) P-K NFB および P-G NFB の比率の調整(〜トータルゲインとの兼ね合い)
 (3) 終段インピーダンス〜出力トランス間のマッチングと帯域バランス

● 帰還管のμ値と選択について
 P-G NFB 併用カソードフォロワ・ドライブによる準超三結回路では、帰還量が帰還管の 1/μにて効き、終段管のμが少ない場合は、帰還管のμも少なくする必要があります。 ただしトータル・ゲインとの兼ね合いになるので初段のゲインと振幅の確保が必要となるほか、過度の P-G NFB による過剰制動を避ける必要もあります。 

◇ 6BL8(t)+12AU7/2 による準超三結アンプでは、同一μでありかなりの P-G NFB 効果が認められます。 

◇ 12B4A(μ=6.5)+2A3(μ=4.2) または 12B4A(μ=6.5)+300B(μ=3.8) による準超三結アンプでは、
 相互にμの値が近く P-G NFB 効果が、過剰制動気味となり 12AU7/2 に戻しました。

◇ G2 ドリブン・アンプの場合、一般に G2 のμが少なく、またカソードフォロワ・ドライバーは
 パワーを要するためローμ管が必然的に選択され、P-G NFB 効果が得られやすい環境となります。

以上

改訂記録
2003/07:初版
2007/10:改訂第一版:2ケースおよびダンビング・ファクタ追加