KT88 超三結アンプの変遷

(1期~2期)1998/12〜2012/09, (3期) 2018/07〜 宇多 弘
kt88amp.jpg kt88_2.jpg
(左=旧構成、右=復活構成)


1 いきさつ

1.1 初期の構成 (1998/12)
 6550 を料理し、KT88 も挿し換え互換の超三結アンプを作ろうと計画しました。 手持ちの規格表には 6550 A1シングル動作例がなく KT88 の規格を参考にしました。 
 アンプ全体の構成などは、これまでに製作した超三結アンプのプロトタイプ通りですが、唯一つ抑えるべき点は 6550 のカソード電位にて、自己バイアス+嵩上げ電圧を確保するための抵抗値です。 807 および EL34 並みの 80mA 65V 程度を目標に 800Ωと決め、大抵の前段電圧増幅五極管と電圧帰還管との組み合わせにて素直に動作できるとの目算です。
 構成素子概要は下記です。

 初段    :6U8A-p (五極部)  
 電圧帰還管 :12AX7/2   
 出力段   :KT88/6550 
 出力トランス:FW20S  
 Stopping Di:6AX4-GTB  
 電源トランス:MX280

1.2 配置と調整、初期の保守改造
 シャーシ更新に際しては、写真に示すプッシュプル・ステレオ用のものに乗り換えました。 出力管取り付け穴が二本分余り、6550 SG 回路の Stopping Diode (以下 SD) に 6AX4-GTB を充てて穴塞ぎしました。 初段のバイアス抵抗を加減して、出力段カソード電流を約 80mA =カソード電圧を約 65V にセットして、その前後に振った場合に音質に変化のないことを確認して調整完了です。(1998/12) 以後に追加した各種出力管についても、この設定値に準じました。
 その後、下記の拡張と小修正を加えました。

(1) KT88 を入手し、6550 との挿し替え互換性を確認。 
  Ep/Ip および音質も殆ど変らず。(1999/07)

(2) 初期の構成にあった「初段リニアライザ」を取り除き、
  出力段プレートから初段カソード回路への P-K NFB を追加した。 (1999/09)

(3) 別項「初段故障時の保護」に示す、ツェナーダイオードおよび LED による、
  初段障害表示および出力段カソード電流抑制措置を加えた。(2002/04)


2 ユニバーサル化拡張

 EL509, 6JS6C, 6CL5 の各大型水平偏向出力管を、プレートキャップ付きのソケット・アダプタに常時着装した状態にて挿し換え運用が可能になり、更に EL34, 6L6GC および 12E1 も含めて、下記の改造を加えました。(2003/05〜2004/09)
(1) 出力段 SG に挿入の SD を 6AX4-GTB から 1N4007 に変更。
(2) 大型水平偏向出力管対応のスクリーン・グリッド供給電圧のスイッチ可変。
(3) 前段サブシャーシ上に出力段カソード電圧監視テスト・ポイントを設置、
   および動作点調整用可変抵抗器を移設して、挿し換え運用に対応。
(4) B 電源電圧の調整・・・EL34, 6CL5 のPp 超過防止のため。
(5) 出力管ソケット #1ピンの#8 との接続・・・EL34 収容対策
(6) パワーオフ時の急速放電のため、放電抵抗3kΩ20W および AC100V リレーを追加。
     ・・・・・ (ここまでは 2003/05)
(7) 12E16DQ6-B 用と同じプレートキャップ付き
  ソケット・アダプタに常時着装して、挿し換え運用に対応。(2003/06)
(8) 初段〜電圧帰還管を 6EJ712AX7 (パラレル) に変更。(2004/09)
 以下には最新の回路図を示します。 (2006/12)

kt88sch.gif


3 拡張を終えて

 本アンプは、プレート損失が 25W またはそれ以上のオーディオ出力管および水平偏向出力管を対象としたユニバーサル超三結アンプとなりました。(2003/06)


4 一旦は分解・転用

 EL34 の三極管接続プッシュプル・アンプを試作するため、電源周りをのぞいて分解し転用しました。 (2008/07)


5 不死鳥のごとく復活

 貸し出していたアンプが戻ってきて、シャーシ・ケース等の余剰が生じたので、初期の頃に採用した終段管に限定したユニバーサル超三結アンプとして、再構築しました。 (2009/09)

(1) 終段管は 6550, KT88, EL34, 6L6GC に限定しました。
(2) 初段、電圧帰還管および回路図は前掲のものと同じですが、スクリーン・グリッド供給電圧はオーディオ管位置相当に固定しました。
(3) 電源トランスはタンゴ ST-220、出力トランスは東栄変成器 OPT-20S を再利用しました。
(4) バイ・アンプ構成にて運用するケースを想定して、信号入力には並列のビンジャッグ端子を装備しました。
(5) シャーシ・ケースは鈴蘭堂 SU-8 を再利用しました。

 以下には復活した限定ユニバーサル超三結アンプの回路図を示します。

kt88stc.gif


6 不死鳥は大きく・・・

 シャーシ・ケースおよび電源まわりを残して分解・撤去、EL34 PP モノラル・アンプに再構築することになりました。(2012/09)


7 不死鳥は死なず

 EL34 PP モノラル・アンプの役目が終わり、前記「5 不死鳥のごとく復活」の状態に戻りました。(2018/07) 
以上

更新歴
1998/12:初版、試作
2000/08:スクリーン・グリッド電圧調整および回路図の部分訂正
2002/04:初段故障時の保護回路を追加
2003/05:大型水平偏向出力管を対象としたユニバーサル化改造
2006/12:回路図および写真の更新、文章整理
2008/07:部分分解、転用
2009/09:別途のシャーシ、PT/OPT にて再構築
2012/10:電源部を残して部分分解、転用
2018/07:転用前 2009/09 の状態に復活。