EL34 PP モノラルアンプ 二台
2012/09 宇多 弘
1 いきさつ
若干パワーが出るアンプが必要になりました。 サテ大型一台にまとめるとなると、電源もシャーシ・ケースも大型となってコストも穴開け工作も必要です。 そして運搬を考えると重量は軽くしたいので、モノラル二台に分けるのが正解、さらにコスト低減と手抜き工事も考えました。
手持ち資源を活用した改造を計画、稼働率の芳しくない二台のシングル(S)・ステレオアンプを EL34 プッシュプル(PP)・モノラルアンプに改造することにしました。
「魔の手」が伸びた種アンプは、元 6Y6GT_G 超三結V1 および元 KT88/6550/etc. 超三結V1 です。 いずれも鈴蘭堂の SU-8 ボンネット・シャーシに収容、フロント・デザインが同一にて、それぞれは部品配置などが良かったのか色々な遍歴と風雪に耐えて生き残っていました。
転用対象アンプの各種出力管は、以前から" チューブチェッカー" ユニバーサル 超三結 V1アンプに直接挿して稼働できており「宿無し」にはならずに済みました。(2012/09)
2 プッシュプル化概要
2.1 構成と部品
出力管は長期に入手が容易と見込まれる EL34 としました。
初段〜位相反転段は 12AX7 一本にて直結 P-K 分割にしようかと考えたのですが、入力器機の信号出力レベルが足りない場合を考慮してゲインを高めに設定したく、初段は 12AX7/2、直結のミュラード型位相反転段は 5963 (=12AU7) としました。
いずれにも電源トランス (PT) にはタンゴ ST-220 が乗っており、リップル・フィルタ等のキャパシタを含め電源部分はそのまま転用、また各段の配置およびソケット等はステレオ構成のままを利用しました。 PP 用アウトプット・トランス (OPT) には東栄変成器(株)の OPT-35P を選びました。
2.2 改造工事・・一部撤去・更新
二台とも、二個のシングル用 OPT を取り外し電源部分を除く配線を撤去して「電源・ソケット付き更地」、そこに PP 用 OPT を設置すると空き地が多く若干淋しいですが、ボンネットを被せれば目立ちません。
入力ピンジャックは一個を残して他は太いビスと大きいワッシャにて穴塞ぎし、スピーカ端子は残して L/R 同じ接続とし(ミスマッチながら並列接続可能)、ヴォリュームはL側はダミーにて残して前面デザインは不変としました。 風向きによってはシングル・ステレオアンプに戻る可能性が十分あることですし・・・。
2.3 配線・調整
二台並べて同時配線して誤りを防ぎました。 モノラル PP の配線は久しぶり、広いシャーシにシンプルな配線にて淋しく感じました。 配線がおわり、位相反転回路の電圧配分を点検し若干調整しました。 NFB は殆ど利かない程度に軽く留め、豪放なサウンドが出てきて「これでよし」、ほぼ目的どおりのアンプになりました。
以下に改造後の EL34 PP モノラルアンプの回路図を示します。 電源部分は省略しました。
2.4 余談です
筆者が 1960年に LP 再生をステレオ化して以後、製作したアンプの殆どは一体化ステレオでした。
例外的にモノラル二台を同時製作したケースは 1985年の 6V6GT の UL-PP でした。 どうやらモノラル時代の部品のなかで似た物を集めてステレオアンプを作ろうとした所、スタイルが統一できず諦めて分割したみたいです。
一台目は PT=タンゴ PH-100、OPT=山水 H10-10、二台目は PT=菅野 M-11A、OPT=巴電機製作所 Rex H20-10 でした。 並べて眺めると外観的には然程には相違がなくよく似た音が得られて、暫く稼働しました。
その後、縁があって二台ともシングル・ステレオアンプに改造されて嫁いでいきました。
一方、送信管などの大型シングルアンプには手を出せず、モノ・シングルアンプの試作例はありませんでした。
3 改造を終えて
用法としては、キッチリ組まれて端麗な音の半導体アンプやら真空管式 OTL アンプに挟まれて苦戦するケースが多いであろうから、古典的かつ個性的なアンプなら、目先 (耳先?) が変って楽しめるかもしれません。
以上
更新歴
2012/09:初版、転用改造
2015/10:分解転用