CV18 para 超三結 driven GG アンプの製作

1999/01〜2001/04〜2002/09 宇多 弘

cv18gg.jpg cv18gg2.jpg
超三結ドライブ直列 GG アンプ試作機 および 更新機

目次
 1 経過と超三結ドライブの発想 (1999/01)
 2 GG アンプの試作 (1999/04)
 3 GG アンプの改造 1〜回路の整理等 (2001/03)
 4 GG アンプの改造 2〜ドライバ段の更新等 (2001/04)


1 経過と超三結ドライブの発想

1.1 これまでの経過 (1996〜)

 発端は三極管アンプを作ろう・・・との事で入手した小型送信管 CV18 は、何も知らずに普通の三極管だろうと多寡を括っていましたが、フタを開けて見たら、かなりのツワモノでした。 これを色々な回路にて何とか完全に近い形にてドライブして見ようと挑戦してきました。
 この球はプラス側も動作領域に使えるけれど、グリッド電流が大変流れやすいのです。 そのグリッド電流は半端ではなく +20V では 5mA という途方もないものであり、よく問題にされる所謂直熱三極出力管のグリッド電流対策程度では到底解決できません。
 また始末が悪いことに目一杯ドライブしようとすれば、グリッド電流が流れるプラス側半サイクルおよび流れないマイナス側半サイクル両方を利用しなければなりません。 そして+−で入力インピーダンスが不一致でも平気でドライブしてくれる強力なドライバーが必要なことが判明しました。
 従って、ダイレクト・カップルド・チューブの 6AC5GT 見たいに、 プラス側の真ん中に固定的なバイアス・グリッド電流を流せば済むような簡単なものではなく、811 とか 572 等の、送信管または類似クラスに対応するような本式の A2 級動作対応が必要なものでした。 (その意味から、マイナス側だけを使う A1 級では、球の「顔」の半分しか見ていないことになります。)

 当時、この球を何とか実用しようとして一緒に試験した何人かの方は、グリッド電流の処置を要しない無難なマイナス・バイアスの A1 級のシングルまたはプッシュプル、あるいは抵抗負荷のカソードフォロワ・ドライブ範囲内の軽い AB2 級プッシュプルにて動作させていました。
 筆者は、本来の送信管用法ならば抵抗分のない高周波コイル・・・それもタップダウンまたはリンクコイル・・・にて簡単に構成できる筈ですが、オーディオではそう簡単に勘弁してくれない A2 級シングル動作にこだわり、特にローインピーダンス出力条件を備える、しかも真空管によるドライバー段の回路整備に挑戦しました。

 あれこれと種々の回路を試した結果「低インピ出力の超三結アンプを利用したドライブ方法しか無い」との一応の結論に到り、試作し(1999/01)、一応完成し (1999/04) 、以後は手つかずで放置していました。 しかし仮のヤッツケ回路、納得した訳でもなかったので見直しの機会に (2001/03) 、ドライバ段を従来の 6Y6GT から 6CW5 に変更すると同時に電源内蔵アンプに組み直しました。 また原バージョンの「CV18 各種アンプ」に示す実験経過のメモ的な記述が冗長に過ぎ、この機会に本文を分離独立しました。(2001/04)

 現状では CV18 の入手が困難な状態を考慮し、本文の原バージョンであった「CV18 各種アンプ」のページは廃版として、筆者のインデックス・ページからのリンクを外し、保管バージョンとしました。(2002/09)

1.2 超三結ドライブの発想に到るまで (〜1999/01)

 NFB の力を借りないドライブ方法として、大変高価で入手が困難な本式の B 級ドライバー・トランスを使用すれば簡単ですが、試作アンプ一台分程度のコスト投入が必要とあっては「知恵比べ」で対抗するしかありませんでした。
 初期の CV18 各種アンプ試験では、ドライバー・トランスの代用品を考えながら下記の各種回路にて動作試験した結果、どの方法も力不足だったり、音質的にもイマイチで満足できませんでした。

 ●プレート出力ドライバにより
  6080/6AS7G などの低インピーダンス・ドライバ段のプレート出力を
  インダクタ負荷 (シングル用出力トランスの一次側を利用して 0-7kΩに負荷、5kΩ-7kΩ間
  にてタップダウン) にてし CV18 のグリッドまたはカソードに入力する
  低プレート (P) 電圧、大 P 電流〜低インピーダンス出力とした A2 級動作。

 ●カソードフォロワ・ドライバにより
  6080/6AS7G などの低インピーダンス・ドライバ段のカソードに挿入した
  インダクタ負荷 (シングル用出力トランスの一次側利用) によるカソード・フォロワ
  出力を (タップダウンし) CV18 のグリッドまたはカソードに入力する
  低 P 電圧、大 P 電流〜低インピーダンス出力とした A2 級動作。

 ●手戻り
  12AU7 などの電圧増幅双三極管による SRPP 出力の
  C/R 結合によるCV18 グリッド入力。マイナス・バイアス A1 級動作。 
  高 P 電圧、小 P 電流となり A2 級動作のような低インピーダンス出力はできない。

1.3 超三結ドライブ (1999/01〜)

 そこで、次の改善ステップとして以下の二通りのアプローチを考えました。

1.3.1 パワー化超三結構成アンプ
 初段を電力増幅五極管とし、大電流を流せる電力増幅三極管による電圧帰還管の組み合わせで CV18 を終段とする、超三結回路全体をパワー化する考えです。 例えば初段+電圧帰還管の組み合わせを 6AN5+12B4A のようなパワー管にして、CV18 の低い入力インピーダンスに対応し、大グリッド電流を吸収する、というアイデアです。
 この様な回路構成では、初段と電圧帰還管が10mA〜20mA 程度のプレート電流を吸い込むので、パラレル接続にした終段の CV18 のプレート電流、約 60mA の 1/6〜1/3 に相当して、終段で発生した出力も相当程度、初段+電圧帰還管に食われることになります。  
 となるとパワー化超三結構成案は余り得策ではないと考え、低インピーダンス出力の超三結アンプにて CV18 をパワー・ドライブする回路形式を模索しました。

1.3.2 再度 GG アンプに挑戦
 上記の通り GG アンプは既に初期段階にて実験していましたが、カスコード化という解決方法に気がつかず、三年も経ってしまいました。

●プレート負荷タップダウン並列 GG アンプ実験 (1996/07)
 最初にドライバーの 6080/6AS7G のプレート出力を出力トランスの一次側を負荷インダクタとして使用してタップダウン直結とし、二階建て電源のマイナス側を接地と看做した CV18 グランデッド・グリッド回路 (GG) を試みました。
 負荷インダクタに流れるドライバー段のプレート電流、終段のプレート電流、終段のグリッド電流の向きを統一しない場合に発生する、歪みの問題を解決しきれずに敗退しました。

●カソフォロ・ドライバー並列 GG アンプ実験 (1996/09)
 次に試験した GG 回路は 6080/6AS7G のカソード・フォロワ (カソフォロ) 出力を、グリッドは本物の接地に (信号的には) 接続した CV18 のカソードに入力してドライブしたものでした。 回路構成は、

  ◇ドライバーのカソード負荷には、出力トランス一次側を負荷インダクタに使い、
  ◇ドライバー出力を CV18 のカソードに入力し、
  ◇同一の負荷インダクタに、ドライバと終段のカソード電流および終段のグリッド電流を同一方向にて流す、
  ◇負荷インダクタの直流抵抗による電圧が発生してしまうので、打ち消し用低インピーダンスの
    プラス・バイアスを信号的にはキャパシタにて接地された CV18 のグリッドに供給する。

 というもので、負荷インダクタの電流容量も音に対する影響もあり大変問題でした。 しかし、負荷インダクタに流れるドライバー段のプレート電流、終段のプレート電流、終段のグリッド電流の向きを統一でき、歪みの問題は解決してしばらく実用アンプとして稼働しました。
 上記の回路を便宜的に並列ドライブ GG アンプと呼びました。

直列ドライブ GG アンプ実験 (1999/04)
 そこで低電圧大電流の出力管「超三結ドライバー」の上に CV18 を「二階建て」に乗せたカスコード・アンプにして、ゼロバイアスで動作させる CV18 のグリッドは、グリッド・チョーク兼ドライバ出力負荷インダクタにて、直流的にカソードと同電位に保ち、信号的にはキャパシタで接地する、直列にした (空中?) グランデッド・グリッド回路を発想しました。
 このカスコード回路は、基本的には真空管時代のテレビ受像機のチューナに見られる RF 三極管カスコード・アンプと同一であり、下の「超三結ドライバー」段のパワーは終段に足し算されるので、回収もできます〜すなわち CV18 単体よりもパワーが得られます。
 上記の回路は便宜的に直列ドライブ GG アンプ と呼びました。(1999/04)
  


2 GG アンプの試作 (1999/04)

 出力の一部が食われるパワー化ドライブ超三結構成アンプの実験は後回しにして、早速、直列 GG アンプから試作・試験にかかりました。
 球の初段ではゴダゴタするので 2SK30A-Y とし、12AT7/5965 による電圧帰還管、6Y6GT を三極管接続にした「超三結ドライバー」にして、 終段の CV18 パラレル接続をドライブしました。 もともと CV18 はゼロ・バイアス A2 級アンプとするため固定バイアスも不要なので、短時間で組上がりました。
 早速試験動作させて、とにかくビックリしました。 とにかく今まで色々組んだ CV18 アンプの中では、自分が言うのも大変可笑しいですが、最高の出来です。 勝負あり、直列 GG アンプの勝ちのようです。 パワー化ドライブ超三結構成アンプでは性能的に GG アンプに到底かなわないと考え、試作試験は中止しました。

 これまでの三年間を振り返ると、直列 GG 回路のすぐ傍まで二度も接近していますが、直列 GG 化に「発想の転換」でき、マトモな GG アンプに到達できました。

 本アンプでは終段にて「超三結ドライバー」の出力がカソード電流として合成されるためか、殆ど超三結の音そのものが出てきました。 以下にその回路図を示します。

cv18-9.gif


3 GG アンプの改造 1〜回路の整理等 (2001/03)

 1999/04 時点にて一応の終止符を打ったと考えた CV18 超三結ドライブ直列 GG アンプ回路について、かねがね下記三点が気にはなっていたのですが、他のプロジェクト等が立て込んで手がまわらず、今回やっと改造に着手しました。

(1) 電圧帰還管への入力にトランスを使うのはコスト、音質両面から感心しない。
 →非平衡入力可とする。

(2) ドライバー段 6Y6GT のバイアス調整を電圧帰還管のカソード・バイアス抵抗で加減するするのは、
  動作点が移動して感心しない。
  →初段ソース電圧を可変として調整可能とする。 

(3) ドライバー段 6Y6GT をビーム接続の超三結にして試してみたい。 
  →配線変更、動作確認する。

と言うことで、「図10」に示すように入力トランスを取り外しました。 2SK30A-Y による初段が一段増えたとは言え、直接入力する方がレンジ感がスッキリしています。 また、インピーダンスが高くなって動作不良にならないかと心配したビーム接続の 6Y6GT ドライブ部分も、三極管接続と殆ど差がなく、よく動作しており安心しました。 

cv18-10.gif


4 GG アンプの改造 2〜ドライバ段の更新等 (2001/04)

 次に 6CW5 によるドライバー段の動作確認実験を兼ねて、バラック造りだったアンプを、本文の始めに写真にて示したとおり、電源内蔵の完結型に更新しました。
 電源部の回路図は例によって仕様のみを示しています。 使用した電源トランスは春日無線変圧器製の Bmk240F です。 ただし、B 電源出力が 300V120mA 程度得られ、高圧が掛る CV18 二本のヒーターを独立に点火できるヒーター点火用の 6.3V 巻線が二系統あれば、バラのトランス構成にて全く問題ありません。 
 電圧帰還管には 6AU6 の三極管接続を起用しました。 本機を組み直す際、初段用に 7ピンのソケットが取り付けられていたシャーシを転用したので、 6AV6 を予定したのですが、五球スーパーに転用してしまい在庫がありません。 そこで規格表を参照した結果 6AU6 の三極管接続が μ=36 という値、電圧帰還管として支障ないものと判定、採用してうまく行きました。
 6CW5 ドライバー段の動作は、6Y6GT のそれに比べて大幅に異なるものではありませんが、若干パワーおよびパワー感が増した様です。 それにもましてドライバー管が小型化され、ドライバー段の負荷インダクタ (小型出力トランスの一次側にて代用) をシャーシ内に収容できたメリットが大きく、出力トランスには従来使っていたものより一回り大きいものを装備できました。
 また CV18 のプレートから初段ソースに戻す P-G NFB には、前記の図10 に示すような 2SK30A-Y のダイオード接続による非直線素子を挿入せず、単に抵抗だけとしました。

cv18-11.gif


改訂記録:
1999/01:CV18 の料理 (cv18-2.htm) の部分更新・・・発想
1999/04:同、部分更新・・・発想に基づき試作
2001/03:同、部分更新・・・問題点の改造
2001/04:6CW5 ドライブ、電源内蔵にて更新・・・本文の分離独立
2002/09:原バージョンの「CV18 各種アンプ」廃版の件、追記
2002/09:分解・転用