当時、この球を何とか実用しようとして一緒に試験した何人かの方は、グリッド電流の処置を要しない無難なマイナス・バイアスの A1 級のシングルまたはプッシュプル、あるいは抵抗負荷のカソードフォロワ・ドライブ範囲内の軽い AB2 級プッシュプルにて動作させていました。
筆者は、本来の送信管用法ならば抵抗分のない高周波コイル・・・それもタップダウンまたはリンクコイル・・・にて簡単に構成できる筈ですが、オーディオではそう簡単に勘弁してくれない A2 級シングル動作にこだわり、特にローインピーダンス出力条件を備える、しかも真空管によるドライバー段の回路整備に挑戦しました。
あれこれと種々の回路を試した結果「低インピ出力の超三結アンプを利用したドライブ方法しか無い」との一応の結論に到り、試作し(1999/01)、一応完成し (1999/04) 、以後は手つかずで放置していました。 しかし仮のヤッツケ回路、納得した訳でもなかったので見直しの機会に (2001/03) 、ドライバ段を従来の 6Y6GT から 6CW5 に変更すると同時に電源内蔵アンプに組み直しました。 また原バージョンの「CV18 各種アンプ」に示す実験経過のメモ的な記述が冗長に過ぎ、この機会に本文を分離独立しました。(2001/04)
現状では CV18 の入手が困難な状態を考慮し、本文の原バージョンであった「CV18 各種アンプ」のページは廃版として、筆者のインデックス・ページからのリンクを外し、保管バージョンとしました。(2002/09)
●プレート出力ドライバにより
6080/6AS7G などの低インピーダンス・ドライバ段のプレート出力を
インダクタ負荷 (シングル用出力トランスの一次側を利用して 0-7kΩに負荷、5kΩ-7kΩ間
にてタップダウン) にてし CV18 のグリッドまたはカソードに入力する
低プレート (P) 電圧、大 P 電流〜低インピーダンス出力とした A2 級動作。
●カソードフォロワ・ドライバにより
6080/6AS7G などの低インピーダンス・ドライバ段のカソードに挿入した
インダクタ負荷 (シングル用出力トランスの一次側利用) によるカソード・フォロワ
出力を (タップダウンし) CV18 のグリッドまたはカソードに入力する
低 P 電圧、大 P 電流〜低インピーダンス出力とした A2 級動作。
●手戻り
12AU7 などの電圧増幅双三極管による SRPP 出力の
C/R 結合によるCV18 グリッド入力。マイナス・バイアス A1 級動作。
高 P 電圧、小 P 電流となり A2 級動作のような低インピーダンス出力はできない。
1.3.1 パワー化超三結構成アンプ
初段を電力増幅五極管とし、大電流を流せる電力増幅三極管による電圧帰還管の組み合わせで CV18 を終段とする、超三結回路全体をパワー化する考えです。 例えば初段+電圧帰還管の組み合わせを 6AN5+12B4A のようなパワー管にして、CV18 の低い入力インピーダンスに対応し、大グリッド電流を吸収する、というアイデアです。
この様な回路構成では、初段と電圧帰還管が10mA〜20mA 程度のプレート電流を吸い込むので、パラレル接続にした終段の CV18 のプレート電流、約 60mA の 1/6〜1/3 に相当して、終段で発生した出力も相当程度、初段+電圧帰還管に食われることになります。
となるとパワー化超三結構成案は余り得策ではないと考え、低インピーダンス出力の超三結アンプにて CV18 をパワー・ドライブする回路形式を模索しました。
1.3.2 再度 GG アンプに挑戦
上記の通り GG アンプは既に初期段階にて実験していましたが、カスコード化という解決方法に気がつかず、三年も経ってしまいました。
●プレート負荷タップダウン並列 GG アンプ実験 (1996/07)
最初にドライバーの 6080/6AS7G のプレート出力を出力トランスの一次側を負荷インダクタとして使用してタップダウン直結とし、二階建て電源のマイナス側を接地と看做した CV18 グランデッド・グリッド回路 (GG) を試みました。
負荷インダクタに流れるドライバー段のプレート電流、終段のプレート電流、終段のグリッド電流の向きを統一しない場合に発生する、歪みの問題を解決しきれずに敗退しました。
●カソフォロ・ドライバー並列 GG アンプ実験 (1996/09)
次に試験した GG 回路は 6080/6AS7G のカソード・フォロワ (カソフォロ) 出力を、グリッドは本物の接地に (信号的には) 接続した CV18 のカソードに入力してドライブしたものでした。 回路構成は、
◇ドライバーのカソード負荷には、出力トランス一次側を負荷インダクタに使い、
◇ドライバー出力を CV18 のカソードに入力し、
◇同一の負荷インダクタに、ドライバと終段のカソード電流および終段のグリッド電流を同一方向にて流す、
◇負荷インダクタの直流抵抗による電圧が発生してしまうので、打ち消し用低インピーダンスの
プラス・バイアスを信号的にはキャパシタにて接地された CV18 のグリッドに供給する。
というもので、負荷インダクタの電流容量も音に対する影響もあり大変問題でした。 しかし、負荷インダクタに流れるドライバー段のプレート電流、終段のプレート電流、終段のグリッド電流の向きを統一でき、歪みの問題は解決してしばらく実用アンプとして稼働しました。
上記の回路を便宜的に並列ドライブ GG アンプと呼びました。
● 直列ドライブ GG アンプ実験 (1999/04)
そこで低電圧大電流の出力管「超三結ドライバー」の上に CV18
を「二階建て」に乗せたカスコード・アンプにして、ゼロバイアスで動作させる CV18 のグリッドは、グリッド・チョーク兼ドライバ出力負荷インダクタにて、直流的にカソードと同電位に保ち、信号的にはキャパシタで接地する、直列にした (空中?) グランデッド・グリッド回路を発想しました。
このカスコード回路は、基本的には真空管時代のテレビ受像機のチューナに見られる RF 三極管カスコード・アンプと同一であり、下の「超三結ドライバー」段のパワーは終段に足し算されるので、回収もできます〜すなわち CV18 単体よりもパワーが得られます。
上記の回路は便宜的に直列ドライブ GG アンプ と呼びました。(1999/04)
これまでの三年間を振り返ると、直列 GG 回路のすぐ傍まで二度も接近していますが、直列 GG 化に「発想の転換」でき、マトモな GG アンプに到達できました。
本アンプでは終段にて「超三結ドライバー」の出力がカソード電流として合成されるためか、殆ど超三結の音そのものが出てきました。 以下にその回路図を示します。
(1) 電圧帰還管への入力にトランスを使うのはコスト、音質両面から感心しない。
→非平衡入力可とする。
(2) ドライバー段 6Y6GT のバイアス調整を電圧帰還管のカソード・バイアス抵抗で加減するするのは、
動作点が移動して感心しない。
→初段ソース電圧を可変として調整可能とする。
(3) ドライバー段 6Y6GT をビーム接続の超三結にして試してみたい。
→配線変更、動作確認する。
と言うことで、「図10」に示すように入力トランスを取り外しました。 2SK30A-Y による初段が一段増えたとは言え、直接入力する方がレンジ感がスッキリしています。 また、インピーダンスが高くなって動作不良にならないかと心配したビーム接続の 6Y6GT ドライブ部分も、三極管接続と殆ど差がなく、よく動作しており安心しました。