◆ 初段、電圧増幅 C/R 結合:6AV6〜三極部
◆ カソードフォロワ直結 :12AU7 パラレル or 12BH7A パラレル
◆ 終段 G1G2 一括ドリブン:6BQ5/7189/7189A (以下 6BQ5 のみ表記)
初段〜カソードフォロワ段間は C/R 結合として安定稼働を目指しました。 前記 Eb-Ib 特性曲線が必要とする最大振幅は 100V程度です。 初段にはゲイン確保のために五極管が必要かなとも考えましたが、取り敢えず SG 関係の部品等の配線が不要な五球スーパーの検波増幅管 6AV6 の三極部 (μ=100) を充てました。
(2) カソードフォロワ・ドライバ管の選定
一般の G2 ドリブン・シングルアンプの例に比べ、G2 電圧が低く「吸い込み」電流も少なくて済みそうなので、ドライバ管には一応 12AU7 で様子を見、足りなければ 12BH7A に挿し換え、さらに不足なら 12B4A へと変更する可能性を見込みました。
(3) カソードフォロワ・ドライバの回路
6BM8 G1G2 ドリブン・シングルアンプの例に従い、終段のプレートからカソードフォロワ・ドライバ段のプレートに P-G NFB を掛け、併せて動作電圧も供給しました。 この場合、ドライバ段のグリッドにドライバ管の 1/μ相当の NFB が掛る計算になります。
(4) P-K NFB を採用
6BM8 G1G2 ドリブン・シングルアンプの例に従い、初段の Rk/Ck
(カソード抵抗とバイパスキャパシタ) の下に 100Ωを挿入し、終段プレートから 100kΩにて、心持ち程度に P-K NFB を掛けました。
カソフォロ・ドライバ段から適切なドライブ振幅を得るためには、その振幅に相当するぐらいの DC 電圧がカソフォロ負荷に掛るような抵抗値を選びます。 そこで、取り敢えず負荷抵抗を 12kΩ+1.2kΩとしました。 途中からグリッド・リークをとるために二分してあります。
安全を見て、終段カソードの嵩上げ電圧を 50V 程度を見込み、終段カソード電流 Ik=40mA を見込んで、嵩上げ抵抗 Rk=1.2kΩとしました。
パワーオンして、動作点を点検するとともに信号入力してみると G2 の電流吸い込みが結構あるらしく、予想通り 12AU7 では低いヴォリューム位置からクリップが始まるので 12BH7A に変更し、音質に関しては OK となりました。
(2) ドライバ段〜終段の調整と G1 点検
6R-P15 の例に習えば、終段の G1G2 に対カソードにて約 40V 見当のプラスバイアスを掛けることになっています。 動作点の点検では予定の Ik=40mA に達しないので、プラスバイアス電圧〜カソフォロ・ドライバ段の負荷を増やして持ち上げたり、終段の G1 電流抑制抵抗 Rg1 を変えたりして、やっと Ik=35mA に持ち込みました。
抵抗値の変更による電圧配分の調整過程を下記表に示します。
ケース | ドライバ段の 負荷抵抗 | G2 電圧 Eg2 |
抑制抵抗 Rg1 | G1 電流/電圧降下 Ig1/Vdg1 |
対グランド G1電圧 Eg1 | 対グランド カソード電圧 Ek |
カソード電流 Ik |
1 | 13.2kΩ | 65V | 24kΩ | 1.1mA/27V | 38V | 37V | 30mA |
2 | 13.2kΩ+1.8kΩ | 81V | 24kΩ | 1.8mA/43V | 38V | 37V | 31mA |
3 | 13.2kΩ | 66V | 20kΩ | 1.5mA/29V | 37V | 36V | 30mA |
4 | 13.2kΩ+1.8kΩ | 84V | 20kΩ | 2.1mA/42V | 42V | 41V | 35mA |
(3) 調整時にみられた終段の挙動説明ほか
◆ (ケース 1) 初期の様子見的な、安全側に立った設定値によるものです。
◆ (ケース 2) カソフォロ・ドライバ段の出力 DC 電圧を高くしても、単に Ig1 が増えるだけで
Eg1-K 間電圧は保たれ、Ik は大幅には増えません。
◆ (ケース 3) Rg1 を減らしても単に Ig1 が増えるだけで Ik は大幅には増えません。
◆ (ケース 4) Rg1 を減らし、且つカソフォロ・ドライバ段の出力 DC 電圧を高くして、やっと Ik=35mA に達しました。
上記のように Rg1 および Rk 嵩上げ方式には「融通の効かなさ、頑固さ」が備わっています。 但し本音としては、自己調整機能がユニバーサル化に際して安全な動作点に落ち着くという有利な要素もあり、単純には厄介扱いできません。
このような経過から、参照した教科書「パワーアンプの設計と製作」に記載の Rg1=20kΩは実に適正値に設定されており、これからあまり外れてはマズイことが判りました。
Rg1 (24kΩ) にて発生した電圧降下および電流については 6BM8 の G1G2 アンプ例による (24kΩ) 20V0.8mA とは一致しませんが、何れの場合でも G1-K 間の電圧差は 1~2V程度と、6BM8 の場合とほぼ同一であり、無信号時に G1 で発生する熱損失 Pg1 は 1~2mW 程度、終段球の寿命には全く問題にならないと考えます。 恐らくカソードからの熱輻射による加熱が大きく、隠れてしまいそうです。
また Ig1 はプラスバイアスの値すなわち G2-K 間の電圧 Eg2 に依っても変化するから、少々時間を掛けて各管種固有の傾向および一般的な傾向を見い出していく必要があります。
Ik 不足の原因には Eg2 不足の他、B 電源電圧 Ebb 不足も考えられます。 但し Ebb を上げるとなれば、カソフォロ・ドライバ段の電圧配分も変わってくるので、再点検が必要でしょう。
さて、現状 Ek=41V 程度の「嵩上げ電圧」であっても、ドライバ段のドライブ振幅は確保できるものと見込んで、当面、Ek/Ik はこの値にて固定します。
(4) 出力トランス:
3.5kΩ/8Ω の中型出力トランスを使いました。
(5) 電源および回路図:
外部電源から約 260V80mA の B 電源、L/R チャネル直列とした 12.6V1.66A のヒーター電源を供給します。
上記のような計画と実装を経て、実用に耐えるに至ったのが下記回路図です。
今回の実験を通して、ユニバーサル G1G2 ドリブン・アンプ化に対して下記の条件など詳細レベルの問題提起がなされたものと認識しました。
(1) 終段 Ik 設定〜Rk の設定と精度、カソフォロ・ドライバ段との相互影響と対策。 確認要です。
(2) G1 に挿入の Rg1 の値と、Ig1 の各管種毎の差の確認と対策。 必要ならば切り替え方式。 確認要です。
(3) ドライブ能力が結構必要、G2 ドリブン・アンプなみに強化し管種毎の相違を吸収。 これは容易に解決できます。
上記の不確定要素が発見されて、果たして G1G2 ドリブン・アンプでは超三結 V1 アンプおよび G2 ドリブン・アンプの様に簡単にユニバーサル化できるのか、再検討が必要になりました。
たとえば、抑制抵抗が示されていない球は、どのようにそれを設定したものかと考えています。 実験で決めるしかないかもしれません。 しかし G1 損失〜Pg1=Eg1*Ig1 は、これまでの例では精々 2V*2~3mA、もっと大きく見積もっても 5V*5mA 程度であろうと考えれば、カソードからの輻射熱にくらべれば誤差の範囲であり Ek~Eg1 および Ig1 が確認できれば OK にできそうです。 そこで適切な共通 Rg1 を決め、一方各管種毎に適した Rk を切り替え、Ik 監視を併用すれば、各管種毎にほぼ適切な動作点に設定できると思われます。