野々村式三極管合成アンプの試作実験

2002/09 - 2002/12 宇多 弘
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NM style synthetic triode amp. --- a variation of P-G NFB jointed cathode follower driven amp. by Mr. NONOMURA.

● 準超三結回路のバリエーション現わる!
 筆者の加入している、ある mail list にて知り合った岡山県在住の野々村氏が設計実装された「合成三極管アンプ」が、筆者が命名した「準超三結」回路に非常に似ているのでビックリするとともに嬉しくなって、早速野々村氏とコンタクトしたうえ、追試験させて戴きました。
 原典の回路の形態は準超三結と同じ P-G NFB 併用カソードフォロワ・ドライブ回路ですが、帰還管のカソードから終段へは直結としています。 直結とするために設定された帰還管 6CG7 の自己バイアスが大変深く、プレート電流は 1mA以下、内部抵抗は高いものと想定されます。 終段の自己バイアス発生用カソード抵抗には、帰還管のカソード電圧相当の「嵩上げ」が加えられて、安定な電圧配分を得ています。 また氏は終段のスクリーングリッドへの供給電圧の安定化が必要と述べておられます。
 野々村氏のご好意により原典の回路図を掲載します。(回路図1a 参照) なお下記回路図での出力トランスとチョークの並列接続は、回路シュミレータへの定数を与えるものであって、実際の回路は出力トランス一個とのことです。

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回路図1a

● 早速の追試験
 それではと、現用の「P-G NFB 切り替え式水平偏向出力管アンプ」を改造して「野々村式三極管合成アンプ」の追試験アンプとして組み上げました。 転用した前身アンプの構成を利用して初段は 6BX6 の五極管電圧増幅、帰還管には 6CG7 相当の 6SN7GT としました。
 終段管は、取り敢えず原典に近い 6L6GB を第一候補としましたが、例によって「ユニバーサル化」をねらい、小形多極出力管・水平偏向出力管・大型多極出力管の三グループ各管種が、入れ替わり立ち替わり挿し換えられるように、切り替え方式のカソード抵抗およびスクリーン電圧供給としました。
 終段のスクリーン電圧の安定化も、動作電圧の点検も後回しにして・・・とにかく 6L6GB にて鳴らしてみると、予想とおり P-G NFB が浅くてユッタリ〜マッタリ、三極管的なサウンドのなかなかのものです。(回路図1b 参照)

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回路図1b

● 超三結回路に吊れ戻そうとは・・・
 この回路を元に、超三結回路の色彩を濃くしてみようと改造実験にかかりました。 帰還段のカソフォロ負荷には定電流素子として FET〜2Sk30A-Y を入れて、帰還管の内部抵抗よりも高くとり、P-G NFB をより深くしようとしました。 まともに動作させるにFET のドレーン電圧は 25V 程度は欲しく、それに帰還管の自己バイアス電圧、さらに終段の自己バイアス電圧を加えていくと、ついに終段カソードの嵩上げ電圧合計が 50V を超えてしまいました。
 これでは、終段が非常に大きいドライブ振幅を要求する三極管でないかぎり、定電流素子用の FET のゲートに信号を入れれば済み、前段はなくてもよい・・・それなら初段を FET で構成した、多極管終段の超三結回路そのものズバリです。 ここで「改造はやりすぎかな?」と中断しました。(回路図2 参照)

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回路図2/3

● 副産物?の安定化回路
 上記の改造途上にて大変気温が上がってきた昼前、部屋のクーラーを SW ON したらドンドン動作電圧が動いて・・・・何しろ ACラインが 101Vから 99V に変動すると、監視していた終段カソード電圧 Ek レベルではライン変動より大きい 45V から 36V に過剰に浮動するのにはビックリ、コリャイカン!。
 超三結 V1 回路では、初段に五極管/バイポーラ Tr を使えば安定化が計られますが、概ね内部抵抗の高いハイμ三極管の帰還管と FET との組合せでも、電流が少ないためか変動幅が抑えられるものと考えられます。 それが本機のようなメディアムμでプレート電流が大きく、また内部抵抗の少ない帰還管 6SN7GT 等と FET 初段の組合せでは、浮動が大きく問題が表面化したみたいです。
 そこで、初段にバイポーラ Tr を使った超三結 V1 回路と同様に、終段カソード電流 Ik の変動を自己バイアス抵抗 Rk のグランド側に 47Ωの検出用の抵抗を挿入して、変動分を FET 定電流回路の定電流素子のゲートに入れる DC NFB を考えました。
 早速配線して終段管のカソード電圧の変動を監視してみると前記と同じ ACライン電圧変動に対して 1V 程度にまで安定したので、スクリーングリッド供給電圧の安定化はしなくても上記の措置にて済みそうです。
 上記の超三結化は中止しましたが、この安定化措置は FET を初段とした超三結回路にそのまま応用できます。 その場合は Tr 初段の超三結回路と同様に、入力信号経路にカップリング・キャパシタとゲートのリーク抵抗が必要となります。(回路図3 参照)
 それにしても筆者の試作・命名した「準超三結」:P-G NFB 併用カソフォロ負荷 C/R 結合回路では電源電圧変動には直接影響されない・・・古典的で安定な回路だな、と再認識しました。


● 中間の性格に落ち着く
 カソフォロ負荷への定電流素子の挿入は止めて、合成三極管アンプと(準) 超三結アンプの中間的な性格を狙うことにしました。
 カソフォロ負荷は、オリジナル回路の 20kΩ 一発による深い自己バイアス動作から、6.8kΩ+12kΩに分け、その接続点からグリッド・リークを出すことにしました。 これで帰還管のバイアスは浅くなり、プレート電流 Ip は増え、併せて内部抵抗 Rp が減って、P-G NFB 信号電圧配分の比はカソフォロ負荷側に厚くなり・・・P-G NFB はより深く、しかし準超三結回路よりは浅い状態となりました。 この抵抗配分方式では、動作電圧は安定しています。
 最後に、ユニバーサル化対応の終段カソード自己バイアス+嵩上げ抵抗を調整し、水平偏向出力管のスクリーングリッド供給電圧 Esg も調整して、更に終段プレートから初段のカソードへの P-K NFB を加えて、初段を含めた歪みを抑えて、「野々村式合成三極管アンプ」は「多極管ユニバーサル [軽] 超三結アンプ」にお色直ししました。(回路図4 参照)

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回路図4
以上

改訂記録
2002/09:初版
2002/12:分解・転用