2002年夏のある日、未経験の G2 ドリブン・アンプを、それも準超三結アンプに仕立てて見ようと突如発想して、配線にかかったのですが・・・。 予備調査不足と勉強不足の感は拭えないのですが、筆者が超三結に取りかかった初期の頃と同様に、G2 ドリブン・アンプの一般的設計法に類する文書が見つからず、個別の製作記事が散見されるだけで、ウーンと唸ってしまいました。 しかし、何人もの方が、実際に組み上げて鳴らしておられるのも事実、「やってできないものでもあるまい・・・」と、管種の特定から動作点設定などの試行錯誤を開始しました。
その後いろいろな試行錯誤を経て、初期の目標であった「G2 ドリブン準超三結アンプ」では超三結効果が不足であることが判明したので半ば諦め、終段から初段への P-K NFB を掛けた、より「裸」に近い G2 ドリブン・アンプの「素性の良さ」強調する路線へ、不本意ながら変更しました・・・が、アンプの音としては何ら不満がある訳ではなく、なかなかに結構なものです。(2002/08)
中型の水平偏向出力管を中心に探ってきた G2 ドリブン・アンプの適用可能管種を拡げるため、別電源にて動作するユニバーサル G2 ドリブン・アンプ二号機を組み、一挙に G2 ドリブンの仲間を増やしました。(2002/12)
うまく動作しなかった 6BK5, 6BQ5 は、自己バイアスを調整して動作 OK となりました。(2003/06)
● 二号機
汎用化を進めた二号機は一号機と殆ど同じ構成とし、出力トランスのプラグイン化により余剰となった「多極管ユニバーサル超三結アンプ」二号機を転用・改造しました。(2002/12)
◇ 終段管は下記の水平偏向出力管、オーディオ管各種を対象としました。(2003/06)
*:ソケット・アダプタ併用、**:プレートキャップ付きソケット・アダプタによるモジュール化運用に統一しました。(2003/04)
水平偏向出力管 | 6AU5GT*, 6AV5GA*, 6CM5**, 6DQ6A/B**, 6G-B3/-B6/-B7**, CV450**, 6W6GT, 6Y6G/GT, 6CL5**, 6JS6C**, EL509** |
オーディオ管 | 6BK5*, 6BQ5*, 6F6GT, 6K6GT, 6V6GT, 6L6GB, EL34, KT88, 6550C |
送信管 | 6146**/S2001** |
◇ 出力トランスは「多極管ユニバーサル超三結アンプ」および「多極管・三極管ユニバーサル準超三結アンプ」
と共用の、プラグイン式にマウントした多種の出力トランスにて、挿し換え可能としました。
◇ 電源1・・・別項に示す "Two of common-used external power supplies"「二台の共用外部電源」の何れかを利用します。(2003/06)
◇ 電源2・・・6Y6G/GT は上記電源二号機の低電圧モードを利用します。(2003/06)
● 初段管
G2 をドライブするには直熱三極管並の振幅が必要です。 本機の回路中でもっとも気掛かりなドライバ〜終段間のカソード・フォロワ〜G2 直結部分の電圧配分についての「様子見」〜試行錯誤を先行させるため、取り敢えず振幅不足は承知の上で初段を五極管とし、電圧配分課題が決着した段階にて初段を
SRPP に変更しました。
● 初段〜ドライバ段間の結合
直結とすれば全段直結・・・カッコは良いのですが、電圧配分の繁雑さと、長期安定稼働を考慮して C/R 結合としました。 従ってドライバ段にはカソード・フォロワ負荷抵抗以外に、自己バイアスとグリッド・リーク抵抗が必要となります。
● ドライバ管の選択
大抵の出力段の G2 電流に耐えられるようにと
12AU7=5963 パラレルにしましたが、どうもこの選択は甘かったようで
12BH7A→12B4A→6BQ5(T) {(T)=三極管接続} と次第に大きく遍歴して 12B4A に落着しました。
● ドライバ段の出力点
終段 G2 に電圧・電流を供給する点は、ドライバ段の負荷抵抗よりも自己バイアスのカソード側の方が、フル振幅が得られるだろうと考えました。 そういえば、伝統的な C/R 結合による P-K 分割位相反転回路では、下側の負荷抵抗を上側〜プレート側の負荷抵抗とは同一にせず、自己バイアス分+残り分の合計を上側の負荷抵抗と同一とし、途中からグリッドリークを引き出し、下側の出力はカソードから出すのが通例でした。
● 終段管の選択
終段の基準管として選んだ6DQ6B と 6AV5GA は、トッププレートとシングルエンドの相違はあるも特性的には殆ど同一です。 これまでに試験した「多極管ユニバーサル超三結アンプ」でも、これら管種の動作点を一旦設定すれば、他の類似水平偏向出力管もほぼ同等に扱えた・・・調整不要で挿し換えできた・・・という実績を考慮しました。 基準管以外の挿し換え対象または非対象の管種については後述します。
● 準超三結・・・効果がイマイチ、特にオーディオ管では・・・
準超三結とするには終段プレートからドライバ段プレートに、動作電圧と
P-G NFB 信号を一緒に直接与える・・・配線一本だけです。 またドライバ段プレートへの配線をナマ B電源に接続すれば P-G NFB を解除できます。 これをスナップ・スイッチにて ON/OFF 可能にしました。 ドライバ管をμ=6.5 の 12B4A に変更したもう一つの理由は、感度の鈍い G2 入力の終段に掛ける P-G NFB 量を増やしたかったからです。
基準管の G2 のμはもともと低いらしく、準超三結モードにすると、若干ゲインが下がるだけです。 それでも制動が効いて、緩いスピーカからボテボテ出ていた低域がスッと消え去って、同時に P-K NFB だけのモードの豪快さもやや失われます。
オーディオ管の 6V6GT に挿し換えて見た場合、モード切り替えをしても全くと言って良いほど変化がないのには呆れてしまいました。 G2 電圧の変動に反応しにくいオーディオ管の特徴が、G2 ドリブンの場合にはより大きい振幅を要して阻害要因になってしまったのですね。 オーディオ管は不適当と言えばそれまでですが、どうしてどうして、簡単に giveup はしません。
そこで、本機の主たる存在意義は G2 ドリブンの素材の味を楽しむ・・・との方針変更〜実質は退却です。 書き掛けだった本文のタイトルからは泣くなく「準超三結」を削除しました。 だがしかし「丸裸」アンプでは寂しいので、ややオーバーながらも P-K NFB をタイトルに含めました。(2002/08)
● G2 電位と動作点
G2 ドリブン回路のおおよその電圧配分としては、規格表に記載されている基準管の Ec2 (Eg2=Esg、以下 Ec2 に統一) 対 Ep 〜Ip 特性図を参照したのですが、Ec1=0V という条件、しかも Pp を超過しかかった部分の Ep=100V、Ip=150mA などの動作カーブ上では、手持ち出力トランスの仕様、電源仕様の点からも収まらず、動作試験の対象にはできません。
それなら特性図に記載されていない Ep=250V にて控え目の Ip (50mA 見当)
になるような Ec2 は、目見当で・・・対接地電圧にて130V 近辺だろうと Ec2 対 Ep 〜Ip 特性図から「外挿」して・・・勝手に決めてしまいました。
● G1 のバイアス
固定バイアスの Ec1 にして、カソードはグランドに落とし、対グランド
Ec2 関係をキッチリと保った上で、カソード電流 (Ik) 総量を調整するのが本来の回路でしょう。 本機では G1 に信号をいれず単にグランドに落とし、-C 電源を組み込むのも大げさなので、サボッてカソードに自己バイアス抵抗を挿入して「頬被り」しました。 この回路では計測結果に出たり聴いて判る範囲か否かは別として歪みや音質に影響があるかも知れませんが、一応大容量のカソード・パスコンを入れて逃げたつもりです。
Ep=250V, Ec2=130V 辺りでの動作を実現するには、Ec2 が通常の A 級動作よりも低いことを勘案し、Ec1 を A 級動作より少し浅い設定が必要と判断し、Ek=Ik 監視も兼ねて自己バイアス抵抗は Rk=300Ω あたりかな?もし深すぎれば減らし浅ければ増やせばよし、と一発度胸とヤマカンにて設定しました。(2002/08)
● 自己バイアス抵抗の調整
上記の Rk=300Ω は 6AV5GA にはピッタリだったのですが、ほぼ同じと思っていた 6DQ6A/6DQ6B では微妙に Ip が多く Pp の余裕が少ないし EL509/6JS6C/6CL5 の片チャネルのみの・・・電源容量が無いため・・・仮テストでも、それぞれ過剰気味なので 340 Ωに増やしました。(2002/09 追加)
● G1 の信号扱い
本機では単純化するため G1 には信号入力なしとし、信号的にはグランド電位に固定しました。
G2 ドリブン・アンプを製作、紹介している各氏の記事等に記載の回路には
G1 に振幅を抑えて信号入力している例があります。 G1 にも信号入力すると二重のコントロールによってエコーを伴う、なんてまことしやかな話を聞いたこともありますが、真偽の程はともかく動作は複雑になるでしょう。
但し実質μを大きくできるので作りやすくなるでしょう。 実際にはどうなのでしょうか・・・自己バイアスの動作ならば G1 はグランド電位で C/R 結合とポテンショ一個で即実験可、道具立ては簡単なのでいずれ実験して見ようと思います。
本機の例と同様にカソードフォロワ・ドライブ回路が必要となるシングル・アンプ回路には、目一杯ドライブしてプラス・グリッド領域に達する A2 級動作、G1/G2 同時ドリブン(プラス・グリッド動作もある)三極管接続、ダイレクト・カップルド管等の例があります。 これら回路に併用のドライバでは直流電圧電流とドライブ信号を同時に扱うため、両面からの配慮が必要です。(2002/08)
● ドライバ側の準備
原理的・基本的なドライブ方法の説明回路では、終段 G2 の直流動作電圧供給源と G2 間にトランスを挿入し、G2 動作電源を信号で「振幅変調」することになります。 実用的なドライブ方法は、カソード・フォロワ直結ドライバが最も簡単です。
一般の G2 ドリブン・アンプでは、カソード・フォロワの抵抗負荷に流す電流とスクリーン・グリッドに流す電流の合計をドライバ管に負担させ、同時に適正な直流電圧〜ドライバ管カソード電圧 Ek = 終段 G2 電圧を作り出します。
ドライバ管の特性、ドライバ管に課すプレート電圧 Ep、ドライバの自己バイアス用抵抗を含む抵抗負荷の設定と、自己バイアス用抵抗の値、それに終段 G2 が分流する Ic2=Isg (以後 Ic2 に統一) によって Ek がきまります。 ただし小電流にて設定した Ek では終段 G2 が吸い込む Ic2 で狂ってしまうので、その倍程度の余裕が必要です。
なお、前記のダイレクト・カップルド管 6AC5GT の回路ではドライバ管のカソード電流全部を終段のグリッドに注ぎ込んでいる、カソード・フォロワ直結ドライバ用法の特殊例と考えられます。(2002/08)
● 余談です・・・(2002/09)
そう言えば、昔むかしアマチュア無線電話が A3=振幅変調であった時代には
UY807 のA級動作が自作送信機 (送信機=TX) の高周波電力増幅用終段管
(ファイナル) の標準みたいなものでしたが、普通はマイク・アンプの終段を UZ42 プッシュプルにして・・・オーディオ用出力トランスの二次側も kΩオーダの高いインピーダンスを持つ「変調トランス」を使い、TX ファイナルヘのプレート供給電源を揺さぶる「プレート変調」とするのが主流でした。
ところが G2 ドリブンとソックリな「スクリーン変調」という方式もあります。 但しマイク・アンプの終段はカソード・フォロワで直結ドライブするのではなく 6ZP1 等の小電力出力管のプレート回路にチョーク負荷を入れて動作させ、そのままを TX ファイナルのスクリーン・グリッドに直結して、供給電源を揺さぶってしまうものです。 マイク・アンプが小電力で済むメリットの反面、変調度を深くできないデメリットもあり、A1=無線電信を主に運用する局での補助的な振幅変調方法であったようです。
TX ファイナルとは RF アンプであるから、実際には音質に関係しない程度の
RF パスコンにてスクリーン・グリッドからグランドに落とす必要があります。 「プレート変調」でも同じことで「変調トランス」の二次のホット側から RF パスコンにてグランドに落とします。
● 余談です PART2・・・(2002/09、2002/10 追加)
従って G2 ドリブン・アンプの場合でも、チョーク負荷によるプレート直結回路は可能です。 しかし音質を論じれば負荷チョークの品質が課題となり、また抵抗で済むカソード・フォロワ直結には品質・コスト両面から一歩譲らざるを得ず、実用になりえないと考えられます。(2002/09)
ところが、A市在住のTさんは 6CL6 の G2 ドリブン・アンプの試作に際して初段を 5670/2C51の パラレル接続とし、敢えてチョーク負荷による終段 G2 への直結によるドライブを実験されました。 負荷チョークの仕様は 30H10mA、実測の結果ではチョークの周波数特性も殆ど問題ないとのことで、当然のことながら出てきた音には問題なく、ややナローになったためか、むしろ躍動感がありました。
チョーク負荷プレート直結回路でも、追加重量もわずか、聴感的には十分実用になり、カソードフォロワ・ドライブに対抗可能、上記の「実用になりえない」云々は取消します。 また、少々の周波数特性上の問題に目をつぶるならば、筆者が愛用する小形出力トランスの一次側にて負荷チョーク代用が可能と思われます。
但し、カソードフォロワ・ドライブでは一切問題がなかった、初段への
P-K NFB または終段自身への P-G NFB の適用では、チョーク負荷ドライブの場合はインダクタが回路中にあるため、その周波数特性・位相特性等が問題になり、対策が必要となる可能性があります。(2002/10)
● 終段側の準備
適正な G1 のバイアス値を設定し、予定した Ep を設定してドライバから予定した直流動作電圧を G2 に供給すれば予定の動作点にピタッとくるはずですが・・・。
運用してみると上記の 3#ピン 切り替えスイッチ操作が繁雑であり、6F6GT 等の 7AC 接続に類似の 6DQ6B 等の 6AM 接続および 6CM5 等の 3#ピン IC 接続のある 8GT 接続による水平偏向出力管は全て区別せずにプレートキャップ付きのソケット・アダプタに (固定的に) 着装して運用する「モジュール化」に統一しました。 シャーシ上に設置のプレートキャップ端子は廃止して安全性を向上させました。(2003/04)
前回の更新時にはうまく動作できなかった 6BK5, 6BQ5/7189A の自己バイアス抵抗値を探って設定し、スイッチ切り替えによる運用環境を追加しました。(2003/06)
下記回路図は最新のものです。(2003/06)
● 基準管、および類似管の動作試験
6DQ6B と 6AV5GA は、予定通り正常動作したので、しばらく音質をチェックした後、他の水平偏向出力管一族の挿し換え試験では
6AU5GT, 6DQ6A, 6G-B3, 6G-B7 が少々の Ip 出入りやゲインの前後があるも、まずまず動作しました。 一本のみの 6BQ6GTB はほぼ OK, 同じく 6G-B6 はやや不調でした。(2002/08)
● 基準管から外れた管種・・・その他何種類かの水平偏向出力管等を試して見ました。 どれもやや Ip 不足のようですが、静かに鳴らすならば全く支障ありません。
◇CV450 は 6CU6 互換ですが、通常の超三結 V1 でも Ec2
を少し上げてやらないと機嫌よく動かない・・・ヤッパリ Ip 不足でした。
◇6CL5 は一応鳴ったものの煮え切らない音、Pp=25W と Ip が大きい球で Rk 過大=バイアスが深めの Ip 不足です。
◇送信管の 6146/S2001 は、もともと水平偏向出力管一族より高めの Ec2 を必要とし、やや Ip 不足でした。(2002/08)
● オーディオ管
規格表に 6L6G の Ec2 別 Ep-Ip 特性に Ec2=100V〜150V の範囲の記載があり、それではと 6L6GB/GC に挿し換えてみると、安全サイドに縮退した Ip の少ない動作点にて一応は動作しました。 Ec2=Ep が標準動作である 6K6GT/6V6GT も、6L6 一族 と同様に Ip 不足でした。
また 6L6GB/GC では、最初のドライバ管 12AU7 パラレルではドライブ振幅不足で出力が伸びずに 12B4A に変更を迫られました。 一般にオーディオ管が基準管に比較してゲインが低く〜所要ドライブ振幅が大きい原因として、水平偏向出力管よりも G2 が鈍感で、また一般に Ic2 が大きい・・・カソフォロからの「吸い込み」が大きいことが確認できました。
オーディオ管および前項の基準管から外れた管種は、低い Ec2 にて安全サイドに落ち着き、「音が出る程度」のおとなしい動作であり、聴くに耐えないような歪みは伴なわないので「聞き流し」用には十分使え、省エネ運転にもなります。 ビーム管は結構低い Ec2 に対して柔軟性があるのだな、と感じました。(2002/08)
● 取り敢えずの汎用化対策
上記の基準管外およびオーディオ管の一群でも、(1) ドライバ段のカソード電位調整、および (2) 終段の G1 電位=Ec1〜バイアスの調整にて、適切な動作範囲に誘導できる筈と考えて、取り敢えずの汎用化対応策として (2) を適用しました。
終段の自己バイアス抵抗を、中点解放二接点スナップ・スイッチにて「基準管ポジション」「その他管ポジション1」「その他管ポジション2」の切り替えとし、さらに終段の自己バイアス電圧の確認・監視用テスト端子を設けて、基準管との類似管およびオーディオ管の一群を吸収しました。
下記表には回路図に示した動作状態での 6V6GT および 6L6GC それぞれの自己バイアス抵抗値対カソード電流 Ik を一覧化しました。 但し傾向を見る目的で示した数値とお考えください。(2002/08)
変更後の 340Ωおよび他の抵抗との並列では何れも減少しました。(2002/09)
基準管ポジション :300Ω | 24mA |
30mA |
その他管ポジション1:160Ω | 38mA |
46mA |
その他管ポジション2:127Ω | 41mA |
50mA |
自己バイアス抵抗を可変にして判ったことは、管種によっては上記のオーディオ管二種のように、カソード電流が大幅に変動するものと、そうはならないものとがあり、後者はすでに Ep-Ip 特性上では平坦な部分に達しているらしい・・・。 ということは、各管種ごとに細かく Ec2 を調整する必要が出てくる・・・従って過度の汎用化は無理かなとも感じます。 但し、筆者は習慣的にアンダーな動作点に設定しがちなので、Ec2 の低いほうに寄せられて助かっているケースがあるかもしれません。(2002/08)
8.2 事前調査不足!
試験に入る前に規格表からの調査不足がバレました。 組み上がったばかりのユニバーサル化した二号機による 12G-B3 の試験では、外部電源の B スイッチ on と 同時に異臭と発煙です。 早速規格表をチェックしたら、12G-B3 はピン#3 が IC=Internal Connection (内部接続) となっています。 しかし、同じ 12G-B3 でもメーカーによってピン#3 がないものと、あってIC しているものとがあります。
どうやら一号機での試験では偶然にもピン#3 なしの球を挿してセーフ、規格表をよく読んでいないことがバレてしまいました。 そこでイッソ#3 のピンをニッパーで切り落とそうか・・・でも原因は当方にあり、IC は放熱用の引き出しかもしれないので、残すことにしました。
さらに規格表を点検すると、#3 が IC である (可能性のある) 管種は下記の通りです。
6CM5, 25E5, 50E5(8GT) それに国産系の 6G-B3, 6G-B3A, 6G-B6 とその 12V 管。
また規格表では 6BQ6, 6DQ6(6AM) 系とその異電圧ヒーター系、および国産系の 6G-B7, 12G-B7, 6G-B9 (-B9 の12V 管はなし) はもともと #3 の足がないのでセーフでした。 たとえ足があるとしても NC=No Connection でしょう。
それでは、とトップ・プレート管を挿し換える場合には #3 ピンを解放して、プレート・キャップ端子に切り替えるトグル・スイッチを併用するように急遽変更しました。(2002/12)
ところが、#3 ピン切り替え操作に際して管種を確認するなど繁雑なので、前記「7 回路図」にて述べたように、プレートキャップつきソケット・アダプタを都度または固定的に着装・運用するように統一しました。(2003/04)
8.3 二号機でのユニバーサル化動作確認「二次」試験
先行した簡単な試験にて、終段自己バイアス用のカソード挿入抵抗は水平偏向出力管むけの深めの 340Ω (680Ωx2 の並列接続)、およびオーディオ管用の浅い 134Ω (340Ωに 220Ωを並列接続) の二とおりで済むことが判りました。
そこで、管種グループ毎に自己バイアス用のカソード抵抗 (A or H) を、二接点トグル・スイッチにて切り分けて使うことにしました。(2003/04)
試験環境が整備されたので 6CM5 を試験、正常動作でした。 また一本だけの 6G-B3/6G-B6 の再試験では正常動作でした。(2003/04)
前回保留だった 6BK5 6BQ5/7189A に適する自己バイアス抵抗値を探って自己バイアス用のカソード抵抗 (B) を設定し、中点解放・・・中休み付きのトグル・スイッチに変更して (A/ H/ B) 三とおりの切り替えに変更しました。(2003/06)
・・・・管種グループ別の自己バイアス用カソード抵抗 (A, H, B) の設定(2003/06)
● 水平偏向出力管は「H ポジション」〜Horizontal tubes の意味です。
● 一般オーディオ出力管用としては「A ポジション」〜Audio tubes の意味です。
● バイアスの浅いオーディオ出力管用としては「B ポジション」〜6BK5/6BQ5 の名前の共通点 B です。
◇トッププレートの大型および中小型の水平偏向出力管は、プレートキャップつきソケットアダプタに着装して
「モジュール化」状態にて挿し換え、「H ポジション」にセットします。
◇シングルエンド管水平偏向出力管も、「H ポジション」にセットします。
◇水平偏向出力管に分類され低電圧電源動作の 6Y6G/GT は、バイアスを浅くするため例外的に「A ポジション」にセットします。
◇シングルエンドの一般オーディオ出力管は「A ポジション」にセットします。
◇6BK5 6BQ5/7189A は、それぞれ専用のソケットアダプタに着装して挿し換え、「B ポジション」にセットします。(2003/06)
次に、種々の水平偏向出力管、オーディオ管を挿し換えて、プレート損失の範囲内にあるなどの動作状態を確認しながら、実用可能な音質が得られることを確認しました。 下記表に記載の各管種の動作状態にて一応実用可能と判定しました。
なお 6BQ6GTB, 6G-B6 はペアの手持ちがなく、下記のリストに含めませんが、前記「基準管」の動作とほぼ同等でした。(2003/04)
7189A は 6BQ5 と同等扱いです。(2003/06)
6G-B3/12G-B3 は Pp=10W であり、下記 6G-B3A 例では Pp オーバーなのでご注意ください。(2003/07)
管種 | スイッチ位置 | Ep~K | Ec2~K | Ek | Ik |
オーディオ管 (中) | |||||
6BK5 (2003/06 追加) | B | 240V | 128V | 1.8V | 27mA |
6BQ5 (2003/06 追加) | B | 276V | 147V | 3.0V | 39mA |
6F6GT | A | 295V | 145V | 4.4V | 33mA |
6K6GT | A | 285V | 140V | 4.8V | 36mA |
6V6GT | A | 275V | 140V | 4.8V | 36mA |
水平偏向出力管 (小/中) | |||||
6AU5GT | H | 226V | 118V | 14V | 41mA |
6AV5GA | H | 262V | 122V | 18V | 53mA |
6CM5 (2003/04 追加) | H | 205V | 100V | 14V | 44mA |
6G-B3A | H | 263V | 123V | 17V | 50mA |
6G-B7 | H | 263V | 123V | 17V | 50mA |
6DQ6B | H | 261V | 120V | 19V | 56mA |
6W6GT | H | 267V | 136V | 12.5V | 37mA |
6Y6G/GT | 例外 A | 183V | 93V | 7.3V | 55mA |
6146 | H | 311V | 151V | 19V | 56mA |
オーディオ管 (大) | |||||
6L6GB | A | 324V | 162V | 8.0V | 60mA |
EL34 | A | 310V | 156V | 8.6V | 64mA |
KT88 | A | 320V | 150V | 10V | 75mA |
6550C | A | 321V | 156V | 9.2V | 69mA |
水平偏向出力管 (大) | |||||
6CL5 | H | 293V | 133V | 27V | 79mA |
6JS6C | H | 292V | 132V | 28V | 82mA |
EL509 | H | 289V | 129V | 31V | 91mA |
P-G NFB を併用しない場合、併用するスピーカによっては低域の f0 辺りが盛り上がります。 殆ど水平状態に入った Ep-Ip 特性を利用するので、終段管の内部抵抗は五極管と変わらないからですが、少ない G2 のμでも P-G NFB により若干は抑えることができます。(2002/08)
Ep=Esg の動作条件で使う、一般のオーディオ専用管類の G2 感度の鈍さにはやや呆れていますが、音には特段の問題はないので、放り出さずに仲間にいれています。
とにかく、一体どうなることやら・・・と身構えた動作点設定課題が、取り敢えず適当に?収まって一安心、実用性は十分であり他のアンプとは互角に鳴っています。(2003/06)
さらに下記のような、やってみなければ判らない課題と調査事項がいろいろ残っています。 G2 ドリブン・アンプの底の深さを改めて感じました。(2003/06)
(1) 正式な実験回路は可変 Ec2 電源および G2 変調トランスと信号発生機によるべきでしょう。
カソードフォロワ・ドライブまたはプレートチョーク負荷ドライブは、あくまでも実用目的の回路でしょう。
(2) Ec2 が低いのではないかという前記の疑いは、水平偏向出力管では却って高すぎの傾向、
またオーディオ管では低すぎの傾向であり、要確認です。
(3) (2) の傾向から、Ip 調整は Ec1 可変ベースの他に、 Ec2 可変併用も考えられ、要確認です。
(4) プレートチョーク負荷ドライブの場合、チョークの代わりに抵抗または定電流源を挿入した動作が要確認です。
(5) カソードフォロワ・ドライブを行う場合、負荷には抵抗の他にチョークまたは定電流源を挿入した動作が要確認です。
(6) G1/G2 同時ドライブの動作検証、ドライブ比率設定およびバイアス設定などが要確認です。