807/1625 超三結V1 アンプの製作

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1625 を挿した写真です。807 は右側の UY に挿します。
(1996/03:超三結V3) 1999/01〜2001/02  宇多 弘


1 はじめに

 UY807 は、曾てはアマチュア無線に限らず送信機の終段用として、また AB2 級の pp アンプなどで運動会の PA 等に広く使われた、大変ポピュラーな 6L6 一族のビーム管です。(1999/01)
 1625 はヒーターの仕様が 12.6V0.45A の 807 相当管です。 ソケットが UT 〜大型 7 脚でやや高価です。 しかし 807 にくらべて、振動などで球がソケットから容易に抜けないというメリットもあります。(2000/06)


2 試作歴

● UL シングルアンプ (1995/11)
 取り敢えず、6L6GB/GC と同じつもりで UL シングルアンプを組み、様子を見たのですが、UL 回路では G2 の耐電圧が限界で思うように出力が取れませんでした。

●超三結V3 アンプ(1996/03)
 次に、C/R 結合ながら超三極管接続がトライできる回路として、MJ 誌1993 年 2月号の上條氏の記事に記載された KT100 V3 回路を試しました。 その頃は直結がまだ怖かったのですね。
 この超三極管接続V3 アンプ (以下、超三結V3 アンプ) は、完全なビーム管接続とし、適度なプレート電圧を掛けたので、出力は取れたのですが、初段の電圧増幅五極管の自己バイアス抵抗と、P-K NFB に挿入した電圧増幅三極管のカソードをコモンにしているためバイパス・キャパシタが並列にできず、電流負帰還が掛り、総合ゲインがやや不足していました。
 このアンプが、私が最初に聴いた超三結アンプであり、それまでに聴いたことのない固めの音が得られました。 すなわち低域が筋肉質になったのです。

●超三結 V1
 その後 6V6G/GT の超三結V1 アンプを組んだので、ソケット互換の五極管では 6K6GT, 6F6G/GT, EL33、ビーム管では 6L6GC, 6550 などを一通り差し替えては聴いてみたものです。 どれも似たような音になる特徴がありました。 それでも前記のとおり、ビーム管に比べ、五極管の超三結V1 化が効果的であることは同様でした。
 その後に EL34 を同じ 超三結V3 回路で試した見た結果 (1996/05)、もともと素直なビーム出力管よりは、ビーム五極出力管または純粋の五極出力管の方が、超三極管接続の効果が著しいことが確認されました。
 さらに 6BM8, 6BQ5 等の超三結V1 アンプの試作を重ねているうちに、超三結V1 が、聴感的により優れており、使用部品が極めて少ないので、必然的に私の超三結アンプの標準回路となってしまいました。
 ただし 807 だけはソケット交換とトッププレート化の改造を要するため、試験対象になりにくく、今回やっと取り上げたような訳です。 (1999/01)

 その後、 超三結V1 一号機は半年ほど稼働した後、他の実験のために分解・流用してしまい、今回のカムバックに際しては、1625 を収容してチューブチェッカ仕様?とし、併せて P-K NFB を追加しました。(2000/06)


3 回路設計と実装上の配慮

 と言うほどのことはありません。 少しプレート電流を大目にしたいのでスクリーングリッド電圧を下げて、807 のカソード電流が 80mA になるよう電圧配分しました。  下記のような構成しました。

初段   電圧帰還管 P/K NFB   出力段  出力トランス 出力段 SD
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6U8-p  12AX7/2  6U8-t 直結 807/1625 中型 OPTx2  1N4007  

 以下に 807 超三結アンプの回路図 (2号機) を示します。

807sch.gif

3.1 発振対策

 発振するのは概して高い周波数であり、テレビや FM に雑音がまじるので発見できます。 例によって 807 の G1 に330Ω、P に 20Ω 程度の抵抗を直列に挿入して様子を見ます。 まだ不安定ならば、初段の電圧増幅五極管の G1 に 50pF 程度のキャパシタで接地して抑えます。 これで大体止まります。 それでも不安定ならば、入力信号の加減ヴォリュームの値を10kΩ A カーブなど低くします。 {最近作るアンプは全て5kΩ〜20kΩ A にしているので容易に発振しません。}
 最近の CD プレーヤまたはチューナは出力インピーダンスを低く取ってあるので、直接接続するなら全く問題ありません。 むしろ古い球式プリアンプの出力インピーダンスが高くて負荷のアンプが低いことが問題になるでしょう。(1999/01)

3.2 G2 電圧対策

 P 電圧が G2 電圧と掛けはなれているなら問題はありませんが、接近している場合は気をつけないと出力トランスでの電圧降下にて、Ep<Eg2 となる可能性があります。
 これでは 6Y6G/GT での悪夢が思い出されます。 とにかく Ep>Eg2 となるように G2 にはブリーダ形式のドロッパを通して電圧供給するか、別電源として印加しましょう。(1999/01)

3.3 出力トランスを重ねる場合の留意点

 但し、写真に示したように、中型出力トランスを二個縦に重ねて一次並列二次直列にする場合には、一個は一次側のプレート側と B電源側を逆に接続し、二次は 8Ω-0〜0-8Ω と位相を逆転して接続します。 このようにしないと、漏洩磁束が相互に干渉しあうのか、スッキリした音が得られませんでした。 同一平面に横に並べる場合は、結合が「疎」であるため一切問題はないと思われます。(2000/06)


4 出来映え、転用から再起

 素っ気ない音で普通に鳴りはじめたので、「まあこんなもんか」と初段の自己バイアスを調整して出力段の動作点を設定し、電圧電流を点検して、807 超三結 V1アンプ 「1号機)」の製作は一応オシマイ、CD を次々と聴き、異常がないことを確認しました。 (1999/01)

 所が、試験対象の球が次々と発生して、上記の1号機は半年稼働した後分解され、807 は一年近くレイオフ状態にありました。 さらにその後に「チューブチェッカ・アンプ」の整備が進み、US ソケットに挿せる球のアンプが一挙に整理統合され、空きシャーシが発生し、出番が回って来ました。
 そこでついでに最近入手した 1625 を挿し替え可能とした「2号機」にてリバイバルしました。 回路的には1号機の初段リニアライザを廃止して、非直線素子として6U8-t の二極管接続を挿入した P-K NFB を加えた他は、殆ど変わりません。 (2000/06)

 暫く 1625 を挿した「2号機」を続けて聴いているうちに、エクボがアバタになり・・・なんとなく音が釈然としないことが耳に付いてきました。 アチコチと点検したのですが、決め手はスクリーン・グリッド電圧 Esg が低すぎであると判明しました。 ドロッパ・ブリーダのドロッパ抵抗を減らして対カソード Esg を 265V に上げて解決しました。 
 以前から 807 はメーカによって音がかなり違うという印象がありましたが、どうやら 1625 も例に洩れず、Esg の個性〜供給電圧が音にデリケートに反映するのかもしれません。(2000/07) 

 本機は役目を終わり、ユニバーサル超三結V1 アンプに統合吸収されて分解しました。(2001/02)

以上

改訂記録
1999/01:試作1号機
2000/06:復活2号機
2000/07:復活2号機の小修正
2001/02:統合吸収により分解