6Y6G/GT STC/Semi-STC pp アンプの試作

2002/05〜2004/12  宇多 弘
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1 いきさつ

 別項に掲げた 6BQ5/7189A STC pp アンプが一応完成したので、その再現性試験を兼ねて、以前から条件さえ揃えば・・・と計画していた、6Y6G/GT SEPP アンプをタネ機とした STC pp アンプ化に着手しました。 すなわち SEPP アンプとして試作した段階にて STC pp アンプ化を目論んではいたのですが、具体的な STC pp の実装方法についての自信が着くまでは「お預けの」仮の姿で SEPP アンプに甘んじていたのですね。(2002/05)
 上記の「試作一号機」では初段に FET を採用し、これが再現性確保の上でやや障害となっていたので分解、初段は三極五極管に置き換えて再組み立てし「試作二号機」としました。(2002/11)
 超三結 V1 C/R 結合回路を「準」超三結回路に分類していましたが、繁雑なため「純」超三結回路に編入しました。 そのため本文タイトル等を修正しました。(2003/07)
 「試作二号機」を改造して単なる P-G NFB 併用カソフォロ・ドライブに変更し「試作三号機」としました。(2004/04)

2 試作一号機の回路

 既に SEPP として稼働していたタネ機を STC pp アンプに改造するのは、非常に簡単であり、下記の各項を変更してオシマイです。 というか何れの日には STC pp アンプに改造することを見込んで、少し気を入れて配線してあったので・・・

● 初段及び電圧帰還段:
 SEPP 用の初段〜位相反転段を取り除いて 6BQ5/7189A STC pp アンプでうまく動作した、2SK30A-Y および 12AU7/5963 の片ユニットの直列による超三結 V1 回路を C/R 結合した回路構成そのままを再利用しました。
 課題はナマ B電源電圧 Ebb が 6BQ5/7189A STC pp アンプの場合の 260V 前後とは異なり、約 180V 前後なので、同様にうまく動作するか否か・・・という点でした。
 改造の途上では 2SK30A-Y の代わりに 2SK117 を使ってみたのですが、gm や Idss の値がかなり異なるらしくうまい調整点が見つからず、一旦「転進」・・・実は、本来目的から外れる・・・という理由で納得して退却して 2SK30A-Y にしました。 本件は後日改めて仇討ち?する予定です。

● 終段回路:  
 SEPP アンプの二階建て終段の二階を下に降ろして、普通のプッシュプル構成とします。 6Y6G/GT のスクリーン・グリッド供給電圧用のブリーダ・ドロッパ回路は SEPP 時のまま利用します。

● 電源回路:
 SEPP アンプでは終段が二階建てのため、B電源が 167V550mA の全波倍圧整流であったものをブリッジ整流に変更し、半分の B電圧としました。 
 回路図も 6BQ5/7189A STC pp アンプと SG 回りを除いて全く同一です。(2002/05)

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3 できぐあい

 6BQ5/7189A STC pp アンプより、若干甘めの感じですが Gm の差によるものでしょう。 音は終段球および出力トランスの差、電圧電流の比などの差を乗り越えて非常に似ているので、まずは再現性試験としては成功したかな?と思っています。(2002/05)

4 組直した試作二号機

 6BQ5/7189A STC pp アンプでも本機でもやや障害となっていた初段の FET を三極五極管で構成して、再現性をより確実にして見ようと考えました。 実の所、STC pp アンプの初期の発想ではこの構成を考えていましたが、実験シャーシの都合で初段を FET に変更して、結局は遠回りした見たいです。 今回は初段〜電圧帰還段には 6EA8/6GH8A/6U8A を起用して、メディアムμ三極部をもつ 6BL8 よりも P-G NFB を少し緩めた「気楽な」アンプとしました。
 シャーシを更新して組直しましたが、初段回りの部品配置や配線の整理・合理化が進み、次モデルの製作時には再利用できましょう。 回路図は初段まわり、および終段の SG まわり出力トランスを除き、試作一号機と同じです。(2002/11)
 ハイμながら Gm が高い上記の三極部のインピーダンスが意外に低いものと考えられます。 低音域が不足であり、カップリング・キャパシタを 0.1μF から 0.47μF に増やしました。 但し回路図は元のままです。 (2003/03)

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5 さらに改造して試作三号機に

 フト思い付いて、P-G NFB 併用カソードフォロワ・ドライブによる準超三結プッシュプル、すなわち Semi-STC pp に変更して見ました。 初段およびカソードフォロワには 12AU7/5814/5963 を起用し、初段と帰還管を直列にした超三結 V1 C/R 結合による、試作一号機および二号機とは異なり、初段は無帰還、終段には単に P-G NFB 併用カソフォロを適用した回路です。
 NFB 総量としては、試作一号/二号機より少ないですが、メディアムμ三極管による P-G NFB 併用カソフォロが効いています。 この回路は、以前 6BQ5/7189A Semi-STC pp として実験済みではありますが、筆者のホームページには記載しなかったものです。 一号/二号機での深い NFB による音の堅さから解放されるも、超三結による音質的効果は確保されて、無帰還 pp アンプとは一線を画す音が得られたようです。 (2004/04)

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以上

改訂記録
(2002/11) 初版:試作一号機・・・6Y6G/GT SEPP アンプからの 
        改造部分を本文に分離、その後改造した試作二号機を追加。
(2003/03) 改訂第一版:終段カッブリング・キャパシタの変更
(2003/07) 改訂第二版:本文タイトル他、準→純への修正
(2004/04) 改訂第三版:再改造による試作三号機、P-G NFB 併用カソフォロ・ドライブ試作三号機
(2004/12) 改訂第四版:分解・転用