6Y6G/GT SEPP アンプの試作
2001/03〜2002/05 宇多 弘
1 いきさつ
1999/12 に試作した 6AN5 パラレル SEPP アンプ (以下、先行例) が成功したので、その再現性試験とスケール・アップを狙って 6Y6G/GT SEPP アンプの試作を計画しました。
6Y6G/GT は超三結アンプで色々イジリ回したので、特段の問題点はすでにクリアーと考え、回路は先行例と同様に、一電源による一次巻線が分離された出力トランスによる合成としました。 そのために、お誂えむけの出力トランス、タンゴ CRD5 を起用しました。 電源はこれまた何度も使い回しした、トリオの送信機 TX-88DS のパワートランス、167V550mA の全波倍圧整流と 6.3V3Ax2 とで賄います。(2001/03)
2 回路
SEPP 回路としては特段に変った点はありませんが、先行例の 6AN5 パラレル SEPP アンプと、本機とが異なる点は下記となります。
(1) スクリーン・グリッドにドロッパ抵抗を挿入し、出力トランスの一次側バイパスとスクリーン・グリッドのバイパスとを分けて、ややゴタゴタすること。
(2) 制御グリッドのグリッド・リーク Rg には特段の制限がないので、カップリング・キャパシタ Cc の容量〜すなわち C/R 結合の時定数〜低域の特性にはあまり気を使う必要もなく 0.22μFと470kΩで勘弁して貰いました。
(3) 先行例に従って、本機でも出力トランスの二次側から初段のカソードに戻すオーバーオール NFB は採用せず、単に SEPP 段の下側と上側の接続点から初段のカソードに直流分も切らずに・・・・少しバイアス電圧に影響するのですが・・・・ P-K NFB を軽く掛けました。 また、この影響も直結部分の調整範囲の内ということで、手を打ちました。
(4) P/K 分割による位相反転段と初段プレートとの直結部分は、例によって現物合わせとすることにしました。
ここまでの検討結果を回路に盛り込みました。(2001/03)
3 配置
本文の最初に掲げた写真の通り、例によって本機も私の標準である縦長配置にこだわりました。 横長配置にすれば最短配線が可能ですが、電源トランスに近い側のチャネルにて S/N が低下しそうな抵抗感が頭をもたげます。 それに収納場所の関係からも間口が狭い方が何かと都合がよいこともあり・・・。
電源トランスが無防備なので、先行例と同様に敢えて出力トランスと終段球を入れ替えた配置にしました。 すなわち終段周りでは信号の流れに逆らった配置ですが、すでに実績もあることだし・・・でも配線の途上では一瞬「失敗したかな?」。 とはいうものの分解してシャーシから作り直す元気もなく、初期計画通りに押し通しました。(2001/03)
4 完成して
先行例を踏まえて、動作試験と言うよりは直結部分の電圧配分の最適化? 調整だけ済ませれば完成と考えていましたが、まず予想どうりに動作して呉れたのでホッとしました。
音は・・・普通の電圧アンプの音です。 相対的な相違ですが、超三結アンプのように少々左右にズレてもスピーカの中央から纏まって音が飛んでくるようにはならず、左右のスピーカから直に音が出る感じで、定位は比較的クリティカルです。
予想したとおり終段の Ep/Ip 比が先行例の 6AN5//SEPP の120V70mA に比べて本機 6Y6G/GT SEPP アンプでは 200V60mA と大きくなるためか、先行例に比べると更に出力の電圧成分が大きいらしく、オットリとした音になっています。(2001/03)
5 役目を終えて
別項に掲げた 6BQ5/7189A Semi STC pp アンプが一応完成したので、その再現性試験を兼ねて、以前から条件さえ揃えば・・・と計画していた、本機の Semi STC pp アンプ化に着手しました。 すなわち本機を SEPP アンプとして試作した段階にて STC pp アンプ化を目論んでいたのですが、具体的な実装方法の自信が着くまでは「お預け」でした。 この段階にて SEPP アンプは役目を終わりました。(2002/05)
以上
改訂記録
(2001/03) 初版 :6Y6G/GT SEPP アンプ
(2002/05) 改訂一版:6Y6G/GT Semi STC pp アンプに改造