6V6G/GT〜6V6GT パラレル超三結V1 アンプ
1997〜2002/02 宇多 弘
1 はじめに
6V6G/GT の超三結V1 アンプを試作したのは 1997 年のことで超三結V1 アンプとしは二番目でした。 その後何回かの改造を経て電源内蔵型から外部電源型に変更したりして命脈を保ちましたが、ユニバーサル超三結アンプの出現にて吸収され、一時的に EL34 と兼用のパラレル超三結V1 アンプに帰り咲いた (2001/06) のも束の間 、敢えなく分解です。(2002/02)
2 6V6G/GT アンプ試作歴
6V6G/GT を使用したアンプは、その昔学生の頃 (1955年)、友達に頼まれてプッシュプルのギターアンプを組んで以来です。 約 30 年間はご無沙汰していたでしょうか。 その間は主に 6F6GT/6GA4 それから 7189/A を相手にして遊んでいました。
その後 1988 年頃に、USSR の 6V6GT を入手して、固定バイアスの UL-pp ステレオアンプを組み、子供用のステレオ装置のメインアンプとして数年間稼働しました。 更にその後、動作中に切り替え比較が可能なビーム接続、UL 接続、三極管接続のシングル・テスト機を経たり、モノラル二台の UL-pp アンプに変形して、チャネル・セパレーションを改善したりしました。
ところがシングルアンプの音に目覚めて暫く後、807 アンプの試作では超三結 V3 の試験を行い、その跡地に 6V6G/GT が 超三結 V3 アンプとして居座りました。 その後 6BM8 超三結 V1 アンプの試作試験を経て、少し自信が付いたので 6V6G/GT の V3 アンプを小改造して V1 アンプ化しました。(1999/02)
3 超三結V1 化の課題
●終段のカソード抵抗値の設定
超三結V1 化にあたり、課題の一つは前段の五極管部のスクリーングリッドに供給する電圧 = 終段の 6V6G/GT の自己バイアス電圧+ 直結カサアゲ電圧調整を行なうための抵抗値 Rk の設定と、上の三極管による電圧帰還管の負荷抵抗値の設定でした。
何分、前段には V3 時代の 6GH8A が挿してあるので、そのまま流用しようと考えたのですが、五極管部はともかく、三極管部は 6BM8 の三極管部 = 6AT6 相当とは全く異なる 12AT7/2 類似であり、μの相違 100:46 よりも Gm や Rp の相違がどのように影響するか、皆目見当がつかないというのが正直な話でした。 そこで、計算して心配するより「ヤッテシマエ」とハンダこての出場です。
上條氏の記事による 6BM8 超三結V1 アンプの例では、6BM8 の五極管部のバイアス兼前段直結調整用のカソード挿入抵抗の値は1200 Ωで、動作時は 42V35mAです。
6V6G/GT の場合、250V 近辺で動作させるには、 6BM8 に比べてもう少し B 電圧全体が高めの 300V 程度必要とするし、前段の五極管部の動作を楽にするため、Ip + Isg = 50mA 程度までなら安全であると考え、自己バイアス電圧+直結カサアゲ電圧調整抵抗を1200Ω =(50mA x 60V) とし、動作点の調整は初段の五極管部のバイアス調整でどうにでもなると楽観的に構えました。
この設定法は正解だったようで、 6GH8A 類似の一族 6U8A/6EA8 は挿し替えテストした結果全て動作しました。
●電圧帰還管段の負荷抵抗値の設定
二つ目の課題である抵抗値の設定ですが、設定のための一般的方法が皆目わかないので、上條氏の記事による 6BM8 超三結V1 アンプの例の 5.6kΩを中心として、 試行錯誤によって決めました。
低い方は4.7kΩから高い方は12kΩまで取り替えてバイアス調整しながら、出力と終段の安全とを確認し、好ましい音質が得られる値を探った結果、6.8kΩ〜7.5kΩ〜8.2kΩ 辺りが適当と判定しました。(1997)
この負荷抵抗値は、後に 12AT7/2〜6AQ8/2〜6DJ8/2 を使う場合の標準としました。 但し B 電圧が低めの時は少なく、高めの時は大きくして、出力点の電圧を調整するようにしています。 後に製作実験した殆どの超三結 V1 アンプでも上記と全く同様に考えて設計しました。(1999/02)
4 実験台としての用途
この 6V6G/GT 超三結V1 アンプでは、ソケット互換の五極管 6K6GT, 6F6G/GT, EL33、ビーム管では 6L6GC, KT88, 6550 などを一通り差し替えて聴いてみました。 また #1 ピンには配線せず、6GA4 も挿せるようにしてみました。 #1 ピンをグランドする必要のある 6F6, 6V6, 6L6 のメタル管は持っていないので問題なしとしました。
6L6GC, KT88, 6550 の場合はカソード抵抗が高すぎて、端に寄った動作点に押やられる所為か、唯鳴るだけという音ですが、球が生きていることの確認程度には使えました。
それにしても、どの球も似たような音になる特徴がありました。ビーム管に比べ、五極管の超三結化が効果的であることは EL34 超三結V3 アンプでの 6L6GC との比較と同様の傾向でした。(1999/02)
5 回路設計と実装上の配慮
使用する実験用電源の B 電圧が低いので少し電流を大目にするため、Ep=Esg=250V の時 6V6G/GT のカソード電流が 48mA になるよう電圧配分することにしました。 結局、 6V6G/GT 超三結V1 アンプは下記のような構成になりました。(1999/10 移設後)
初段 linearizer 電圧帰還管 出力段 出力トランス 出力段 SD
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6BX6 なし 12AX7/2 直結 6V6G/GT タムラF475 1N4007
以下に 6V6G/GT 超三結V1 アンプの回路図を示します。
5.1 発振対策
6V6G/GT の G1/P に例によって 330Ω/20Ω 程度の抵抗を直列に挿入しました。まだ不安定なので、初段五極管の G1 に 50pF程度のキャパシタで接地しました。 入力加減用のヴォリュームを10kΩ A にすれば、この G1 対策は不要ですが、古い 500kΩ A では 12時から15時位の角度の位置で G1 のインピーダンスが上がって発振するものです。
移設を機会に入力加減用のヴォリュームを 2kΩ A に交換して、これらの発振対策を全部取り払ったのですが、安定に動作しています。
5.2 G2 電圧対策
最初は終段の G2 電圧にナマB 電圧を掛けて涼しい顔をしていても問題はありませんでした。 しかし、6Y6G/GT での悪夢を経験して、とにかく Ep>Eg2 となるように G2 にはドロッパを通して電圧供給するように 3kΩ程度を直列に挿入して100μFでグランドし信号分に対するインピーダンスを下げました。
5.3 配置など
超三結アンプでは横長配置のほうが配線長さを飛躍的に短くできます。 本機ではもともとスピーカ交換などの操作性の良くない、端子類を後面に配置した古い設計の横長シャーシで選択の余地はありませんが。 (1999/10 移設後)
6 出来映え、その後
最初に組んだ超三結 V1 アンプなので、初期の頃は比較対象がなかったのですが、最近は仲間の増えた他の超三結アンプと比較しています。 拙宅や他所のお宅で鳴らしてみると、まあそこそこ素っ気ない結構な音なので、自分で言うのも変ですが、程度の良い方に属するかなと思っています。 その証拠に本アンプは分解、転用の魔の手から逃れて、小改造を受けながら二年半の記録的な長寿!を保っています。 (1999/2)
所が、 6384 超三結 V1 アンプの試作では、とうとうシャーシを転用してしまったので、出力トランスを道連れに、外部電源方式の新シャーシに移設することになりました。 単なる引っ越しで済ますのもつまらないので、初段のリニアライザを廃止した代りに P/K NFB 回路など若干の改善を加えました(1999/10)。
その後、長期寿命を誇った 6V6G/GT 超三結 V1 アンプも、ユニバーサル(チューブチェッカ)アンプに吸収・合併しました。(2000/05)
7 パラレル超三結 V1 アンプに挑戦
ヒマに飽かして、6V6G/GT 同族を調査すると 6V6 (メタル), 6V6G (ガラス部分が ST45 スタイル) とか、メタルまたは GT の -W とか -Y の特別仕様の他に下記のように結構ありました。 同族が豊富とは、結構な球であることの証です。
電圧違いの 5V6GT, 12V6GT、6V6GT Special の 5992
ミニチュアの 6AQ5 (6V6 より小), 6BW6 (=6V6 の 9ピン)、6AQ5 Special の 6005, 6669
ロックインの 7C5, 14C5
ヨーロッパ GTの CV509, CV510, CV511, CV371
ヨーロッパ ミニチュアの CV4043 (=6BW6)
ヨーロッパ ロックインの CV885, CV886
さて、普通の超三結V1 アンプはすでに二台作ってプレゼントしてしまったし、比較的コンパクトに纏まるプッシュプルもビーム接続、UL 接続ともに大分以前に作りましたし。 それで・・・考えたのがパラシングル超三結V1 アンプです。 これなら作例も少なく、なにか新しい発見があるかもしれない?・・・。
決まれば、話は簡単。 EL34 パラレル超三結V1 アンプを改造して、嵩上げ兼自己バイアス用カソード抵抗をスイッチ切り替えとし、出力トランスは最大直流電流が少ないものに交換して EL34 兼用パラシングル・アンプとなりました。 電源も EL34パラレル・アンプ用のものを低い B 電圧に設定すれば OK です。
しかし肝心の球が揃いません。二本しか持っていない 6V6G との混用は美的観点からはイマイチ、短波受信機に使用中の 6V6GT を 6F6GT に挿し換えたりして何とかGT 管を 4本確保しました。 それらのブランドはまちまちで、旧東芝の「マツダ」マーク、神戸工業の TEN、GE、最後は新しい英文字の東芝です。 最後の製造と思われる東芝製 6V6GT は、何とチューブトップにゲッターを飛ばし、ボトムステムという EL34 または 6GA4 みたいな近代的な作りで、同じ構造の東芝製 5Y3GT と同様に、イササカ異様です
早速、上記の変更工事を行い、直ちに動作試験にはいり、特に問題の無いことを確認しました。 これだけ 4本の球がバラバラであっても、動作させて見たら自己バイアス電圧は相互に 5% も違わないのだから、規格維持精度は相当なもので感心してしまいます。 音は・・・単管シングルに比べすこしバラける・・・雑然とする・・・のは予想のとおりですが、あまり酷くないのは、Ip や Zp が揃っているからでしょうか。
以下に EL34 兼用 6V6GT パラレル超三結V1 アンプの回路図を示します。 (2001/06)
本機は 6550 パラレル超三結V1 アンプの EL34 挿し換え兼用化が完了したことにより、役目を終えて分解しました。(2002/02)
以上
更新履歴
(1999/02) 6V6GT 超三結V1 アンプ、初版記述
(1999/10) 外部電源方式に改造、回路変更、写真更新
(2000/05) ユニバーサル・アンプに併合、消滅
(2001/06) EL34 兼用パラレル超三結V1 アンプに帰り咲き
(2002/02) 機種交代のため分解、消滅