目次
1 EL509 超三結アンプ製作に到るいきさつ
2 EL509 の初期動作試験
3 追加試験、更新と方針変更
4 6JS6C/EL509 D-NFB アンプの試作〜いきさつ
5 D-NFB アンプの回路図
6 D-NFB アンプの動作試験
7 変形した準超三結 V1 アンプに戻る
その後、EL509 を超三結アンプとして色々動作試験した結果、通常のビーム管として動作させると規格通り (Pp=34W) であり、少し無理すると簡単にプレートが薄赤くなることが判りました。 (G2 ドライブの動作では G2 電圧を 100V 以下に抑えるので、Pp が相当に規格オーバーでも助かるようです。)(2000/09)
そこで EL509 は電源からシャーシから、全て首位の座を 6550 に譲ってしまい、仮動作であった 6JS6C の「コンパクトロン〜マグノバー水平さんチェッカー」アンプとしてまとめて面倒を見ることにしました。 シャーシは、出力管を二種類挿し替えできる、チューブ・チェッカーに移行した 807/1625 〜 6146 の試験台を再利用しました。
このような経過により、以前の中間報告的な 6JS6C 仮動作のページは、本ページに吸収合併しました。(2000/10)
口金接続 | 8GD | 12FY | 9RJ | 9RJ | |
ヒーター電圧 | Eh (V) | 6.3 | 6.3 | 6.3 | 6.3 |
ヒーター電流 | Ih (A) | 2.5 | 2.25 | 2.0 | 2.5 |
最大プレート電圧 | Epmax (V) | 700 | 990 | 700 | 900 |
最大プレート損失 | Pp (W) | 25 | 30 | 34 | 35 |
最大遮蔽グリッド電圧 | Esgmax (V) | 200 | 220 | 250 | 300 |
最大遮蔽グリッド損失 | Psg (W) | 4 | 5.5 | 7.0 | 7.0 |
<<動作例>> | |||||
プレート電圧 | Ep(V) | 175 | 175 | 500 | |
遮閉グリッド電圧 | Eg2 (V) | 175 | 125 | 280 | |
制御グリッド電圧 | Eg1 (V) | -40 | -25 | -82 | |
負荷抵抗 | RL (kΩ) | 1.65 | |||
制御グリッド入力電圧 | E0 (Vac) | 50 p-p | |||
無信号時プレート電流 | Ip0 (mA) | 90 | 130 | 70 | |
信号時プレート電流 | Ipsig (mA) | 100 | |||
無信号時遮閉グリッド電流 | Isg0 (mA) | 7 | 2.8 | ||
信号時遮閉グリッド電流 | Isgsig (mA) | ||||
相互コンダクタンス | Gm (mS) | 6.5 | 11.5 | 18.0 | |
プレート抵抗 | Rp (kΩ) | 6.0 | 5.5 | 8.0 nom | |
最大出力電力 | Pomax (W) | 14 | |||
歪率 | KF (%) | 0.9 at1W |
B 電源 | Si Diode 整流に加えて、傍熱整流管 6AX4GT/6CA4 パラによるスロースタータとしました。 |
プレート電位 | カサ上げ電圧を含めて 400V (対カソード 320V)以上と高めに設定しました。 |
カソード電位 | 820Ω にて Ik=90mA と調整して、Ek=74V と頃合となりました。 |
G2 電位 | この系統の球は、G2 電位をキチンと設定しないと色々ありそうなので、ブリーダ電流を多めにとって、15kΩ+39kΩの途中から 264V (対カソード 190V) にて G2 に供給しました。 |
電源は回路図に記載してありませんが、タンゴ ST220 による 280V 両波整流出力をタンゴ MC3-350 による CH input として160mA 負荷時に 230V を得ていますから、ほぼ 6JS6C の動作電圧に嵩上げ電圧を加えた値になっています。 例によってかなり控え目な動作点設定となりましたが、これから段階的に出力トランスと電源トランスを交換したりして、増やしていきます。
下記の回路図にて、6JS6C/EL509 ともに動作時に Ik= 約 80mA を得ており、殆ど同一なので挿し換え可能と判定しています。 (2000/10)
その記事を読んで、超三極管接続アンプとの共通点・相違点などをアレコレ考察したのですが、私には完全に理解できませんでした。 その後上條 信一 氏のホームページにD-NFB 回路の解析、シミュレーション、EL34 D-NFB アンプの試作例が掲載されました。 その内容は大変判りやすく不明点がクリアーになったので「ナ〜ルホド納得、ではとりあえず追試験してみよう」・・・となりました。
コストの軽減のため、例によって新造せず「血祭り」アンプの選定にかかりました。 槍玉に上がったのが、発熱が大きいのにソケットの周りに放熱孔の開けられていない設計不良シャーシに乗った 6JS6C/EL509 の挿し換え運用タイプの超三結アンプです。
電源部分および前段ヒーター配線のみ残してその他の配線を一旦取り除き、ソケットを外して終段のソケット穴四個の周辺に 30度毎に電気ドリルで回すテーパーリーマにて10mmの通風孔を10個あけました。 そのソケット穴四個からなる長方形だけを残してシャーシ全体をマスキング・テープで養生し、以前の塗装であるメタリック・シルバーを吹き付けて上塗りし乾燥させてシャーシ改造は終り、ソケット等を取り付け直して復旧しました。 実はソケット穴からシャーシ内部にも吹き込んだ塗料が、残したヒーター配線等にも付着してしまい、あまり見た目には美しくありませんが、シャーシ内部はヤタラに見せるものでないからカンベンナです。 (2000/12)
出てきた音は、何という表現をすれば適切なのか判りません。 超三結アンプの様に音が手前に迫り出して来ずにスピーカ位置に止まっています。 また明らかに電圧成分の多い、よりカマボコ的な特性のオットリして控え目の美しい感じの音です。 どちらかと言えばクラシック・ファンに好まれるかなぁ、と言う感じでもありますが、ジャズやフュージョン等を鳴らして見ても特段の違和感はなく、歪が少ない所為か長時間聴いても疲れしません。(2000/12)
但し、純 に比べ、デメリットとしては
● C/R 結合となり、部品点数が増加する
● その C/R 結合が、音に影響する可能性がある
の二点があると思います。
その反面 準 のメリットとしては
● より低い B 電源電圧ですむ(直結部分の嵩上げが不要になる)
● 直結回路に必須の動作点調整と点検が不要となる
● 直結回路の未経験者でも容易に試験可能である
の三点をもつことになります。
なぜ筆者は、これまで試作した多数の多極出力管の超三結 V1 アンプに、この回路方式を適用しなかったのか?・・・C/R 結合は部品によって音が変るので、それを回避するためには音に影響の少ない「直結の 純 超三結 V1 アンプ」に限る・・・と単にこだわったのですね。
しかし抵抗感を感じるとは言うものも、別項に示した大ドライブ振幅を要求する 2A3/45 の超三結 V1 アンプを、実用的な一電源にて構成するには目をつぶって C/R 結合に頼らざるを得なくなり 準 超三結 V1 アンプとなりました。 その試験結果「普通の C/R 部品」を使えば、音には極端な悪影響はないことが判明し、見直しました。
これまでにも実際には別項ページ 「Triodes P-G NFB jointed SRPP Driven (1626, 2A3, 6EM7, CV18) 」に示すとおり、以前に何台か試作した「三極出力管相手の超三結もどき」アンプでも、一電源構成を優先させて SRPP 出力を終段に C/R 結合していましたし、6AC5GT 等、小ドライブ振幅で済む一部アンプを除いて、一般の大ドライブ振幅を要求する三極出力管相手では頭から 純 の直結は、実用的構成としては諦めていた事実もあるのですがね。
スイッチ切り替えにて他の直結 純 超三結 V1 アンプと瞬時 A/B 比較してみると、直結に比べて明らかに 平板 な音になっていることが判ります。 もしかすると 準 超三結 V1 アンプが、おとなしく且つ美しく聞こえる原因はこの 平板 さかもしれません。
本機の場合は終段の電圧ゲインが 2A3/45 に比べて遥かに高いので、初段および電圧帰還管兼カソードフォロワ・ドライバーは 12AT7/5965/12AY7 で何とか足りていますが、終段のプレートから初段のカソードに掛ける P-K NFB の量が不足であり、これを増やすとなるとトータルゲインが不足しそうです。
上記のような何例かの結果を踏まえて、今回は筆者としては初めて多極出力管に 準 超三結 V1 回路を(実験的に)適用したことになります。 回路図を下記に示します。(2001/01)
電源部分は、超三結アンプ時代 (?!) の電源をそのまま流用して、タンゴ ST220 による 280V 両波整流出力をキャパシタ input として160mA 負荷時に 320V を得ています。 以下に回路図を示します。 (2001/04)