6CD6-GA UL 接続シングル・アンプの試作実験

2018/07 宇多 弘
6cd6gaul.jpg
6CD6-GA UL 接続シングル・アンプ (本体) です。

1. 6CD6-GA UL シングル・アンプ製作の経過

1.1 縁遠かったウルトラ・リニアー接続

 20年ほど前から、各種の水平偏向出力管をユニバーサル超三結アンプの出力管として、またはユニバーサル p-k NFB アンプの出力管として、試験動作し常用してきました。 そして多極管のウルトラ・リニアー接続 (UL 接続) のアンプ試作は殆ど忘れていました。
 思い出せば・・・超三結アンプにノメリ込む以前に 6V6-GT ブッシュプル (PP) アンプを組んだり、10年位前の EL34/6CA7 三極管接続 PP アンプをまとめる際に一時的に動作試験した程度でした。 そしてシングル・アンプなら超三結または P-k NFB に馴染んでいたので、特段に試す必要がなかったのです。
 さらに規格表を点検すると、大抵の水平偏向出力管はプレート電圧 (Ep) がスクリーン・グリッド電圧 (Esg) より可成り高く、SG タップ付きの UL 接続が可能な出力トランス (OPT) は、そのままでは使えないので諦めてもいました。
 とは言いながら 6Y6-G/-GT には Ep=Esg=135V の動作例があり、6CD6-GA/6CL5 なら、Ep=Esg=175V の動作例が規格表に記されて、機会があれば UL シングル・アンプはカバーしてみようとマークだけはしていました。 またネット検索にて、水平偏向出力管の低い Esg を MOSFET を介して調整し実質的な三極管接続を実現している、前川氏のホームページも横目でみてはいたのですが・・・

1.2 主客転倒ながら

 そしてこの度、その機会が巡ってきたのです。 そのキッカケは「B 電源が 200V 程度しか取れない junk の電源トランスを単独にて活用してみよう」という発想でした。 主客が転倒して「電源トランスありき」ながら、この電源なら 6CD6-GA/6CL5 が活用でき、ついでに念願の水平偏向出力管の <純粋> な UL 接続シングル・アンプを実験するにマレな機会です。
 そしてもう一つ、大きな理由がありました。 6CD6-GA/6CL5 は口金接続が <5BT> にて、ユニバーサル・アンプで運用するには専用ソケットの装備または Pキャップ付きのソケット・アダプタ併用が不可欠にて、スマートではない・・・専用アンプにするチャンスでもある、など色々な圧力が同時多発したのです。

2. 6CD6-GA の先行動作試験例

 実際には、これまでに挿し換えにて <"チューブチェッカー" ユニバーサル 超三結 V1アンプ>、 <超 ユニバーサル p-k NFB アンプ> および <25CD6-GB Semi-STC pp アンプ> の可変 B電源併用にて、Ep>Esg および Ep=Esg による一通りの動作試験を経て、疑問の余地はないのですが・・・ 水平偏向出力管の<純粋> UL 接続の試作・試験は初体験にて、若干ワクワクしながら着手しました。 

3. 概要設計と回路図

3.1 本体部

 6CD6-GA/6CL5 の比較では、自己バイアス用の抵抗値は同一にできないので、切替式にしようかとも考えたのですが、少数派の 6CL5 は涙を呑んでスタンバイとし、多勢を誇る 6CD6-GA 専用としました。 
 初段は回路図の通り普通の電圧増幅五極管です。 ハイμ三極管ではドライブ振幅が足りないと見たのですが、B電源電圧が低いうえに終段のバイアスが深い (-30V) ので、本気でドライブするなら初段と次のカソード・フォロワ・ドライバー段の B電源は 300V 位にしたい所です。 次のドライバー段は・・・実は終段のプレートで吊って P/G-NFB・・・超三結にするか、とのモクロミ含みですが・・・取りあえずはオトナシく B電源で吊ってあります。 このドライバー段なら終段の G1 回路のインピーダンスが低くできるとの読みです。 Pキャップの直後に挿入するパラ止めを省略してもオトナシく動作しました。

3.2 電源部

 回路図には記載してありませんが、本アンプの震源地となった電源トランス (PT) は・・・
 ◆ B巻き線:167V~550mA、◆ ヒーター巻き線:6.3V3A x2、◆ リレー電源らしい巻き線

・・・という 40年以上経ている古兵、旧 Trio (株)の送信機キット TX-88DS の PT の流用です。
 本来用法では倍圧整流にて 6146-B シングル等の短波送信機の終段および AM 変調機を駆動する PT でした。 これの B巻き線に数10V のトランスを上乗せすれば、直ちに頃合いの汎用電源となります。 それで長らく各種のアンプ実験用の汎用電源として活用したので劣化が抑えられて十分に現役。 遂に B=200V アンプ用の外部電源用トランスに納まりました。

 B巻き線はブリッジ整流して C入力で受けます。 ブリッジ出口では無負荷にて 238V程度、 6CD6-GA 二本分他の約 165mA の負荷が掛かると 215V程度に落ち着きます。 その先に小抵抗および大キャパシタによる二段πフィルタを経てさらに数V ドロップします。 規格表に示された 6CD6-GA の動作点では (自己) バイアス Ek=30V, Ep=175V, それに OPT の抵抗ドロッブを=15V 程度とするとピッタリ、もはや定電圧回路の挿入余裕はありません。

 大キャパシタのフィルタ残留チャージが怖いので normally close 接点の AC100V リレーを取付けて power off 時または停電時に大ワット数のシャント抵抗にて B電源回路を接地し急速放電する安全設計としました。 
 本体部と電源部の接続方法は、本体側から US ブラグ直出しとし電源側は US ソケットで受けました。 ケープルの一端をプラグとし電源の筐体はソケット、他端はジャッグ (female) として本体にプラグを取付ける組合わせでは接触抵抗が大きい為ヒーター電圧が若干低くなるので、コネクタ接続は一方のみにした「尻尾つき」方式です。 さらに前段およびドライブ段用に 12V1A のヒーター・トランスを追加してあります。
 なおこの電源は、他の低 B電圧の真空管アンプにも、または真空管式の受信機にも利用可能です。

4. 本体回路図、できばえ

 下記の回路図です。 出て来た音は・・・まあ素っ気ない普通の控え目な、結構なアンプでした。 ビーム管の個性が UL 接続で抑えられて、三極管に近づいたのでしょう。 試みに口金接続が同じのシャント・レギュレータ管 8068 に挿し換えてみたら Ip=40mA と大幅に少なく、OPT がミスマッチ気味の音ながら一応の動作が得られました。  
 次に・・・問題のカソフォロ・ドライバー段の P を終段の P に接続する、念願の P-G NFB'ed カソフォロを試みたのですが・・・予想に反してヘンな音になりました。 どうやら P-G NFB と UL 接続とは天敵関係みたいです。 元に戻しました。 純粋ビーム接続にしてのカソフォロ P-G NFB は既に実験例があり正解の筈ですが・・・UL 接続の素直な音を楽しむことにしました。(2018/07)

6cd6ulpg.gif

改訂記録
(2018/08):初版
以上