6197/6CL6/6AG7〜12BY7A 超三結アンプ製作・改造記
1998/08〜2001/07 宇多 弘
12by7a.jpg
12BY7A 超三結アンプ


1 始めに

 曾てRF 関係に少し手をだしていた関係から、ヴィデオ増幅管である 6CL6 が、メタル管の 6AG7 の MT 化品種であり、送信機のドライバー段にしばしば使用される、と知ったのが1960 年頃です。 (但し 6AG7 の方が最大規格が大きい等、若干の差があります。)
 1980 年頃でしょうか、勤め先にあった航空機部品で有名な Bendix 社が 1955 年頃に開発発売した磁気ドラム式の、当然真空管式コンピュータ・システム G-15 の補給部品の球には、多数の 5963/5965、少数ながら 6350、もっと少ない 6197 がありました。 そのコンピュータはとうに廃棄処分され、補給部品の整理時に 6197 を分けて貰ったのが、始めての出会いでした。
 いろいろ球の互換性の表を見て行くうちに、特性的には 61976CL6 相当と知った訳ですが、両方の球を並べて観察すると、プレートの形状はまったく同じで、互換性は納得、但し少し管内のシールドの回し方が違い 6197 の方が簡略化してあります。 それで 6197 の RF 用法では中和など少し気を付ける必要があるな、位のつもりでストックしていました。 

 一方、同じヴィデオ増幅管である 12BY7A はアマ無線用の送信機のドライバーとして、手持ちしていたトリオTX88DS、同TS510X、八重洲無線のFT101ES に使っていたので、スペアとして数本確保していました。 12BY7A をオーディオアンプとして設計・製作した経験は全くなかったので、6197/6CL6 の超三結 V1 アンプ (以下 V1 を省略) の実験を機会に、一緒に面倒を見ようと考えたのです。

 その後、色々な実験台として6AG7 グループアンプおよび 12BY7A アンプは他の球の実験のために改造対象になったり、後に復旧したりを繰り返し有効に利用しました。 オリジナル球であるメタル管の 6AG7 超三結アンプを組んで、6197/6CL6 はソケットアダプタにて維持した後 (2000/10)、前者グループはユニバーサル・アンプに吸収され (2001/06)、12BY7A アンプだけになりました。(2001/07)


2 過去の製作例 

 1983 年頃アンプのオイタをしたくなり、材料をかき回していたとき 6197 に目を付け、細工してやろうと言うことになりました。
 いろいろ 6CL6 の特性表やらEp-Ip カーブ等を見ているうちに着想したのが、6197 三極管接続の (T) pp です。 Pp が小さく、あまり高い Ep が掛けられないので、 Ep =200V, Eg=-6V の時 Ip=20mA の動作点にて、軽い AB1級pp になりました。 出力トランスにタンゴ U13-8 を宛て、電源トランスには菅野 SEL M11A を組み合わせました。 構成は下記の通りです。(1983/04)

12AT7/2 初段、 12AT7/2 直結のPK分割位相反転、 6197(T) pp

 6197(T) は Eg=-6V と大変少ないドライブ電圧で動作するので、ゲインは Overall NFBを10db 位掛けても十分とれました。
 このアンプは、一時子供用ステレオ装置のメインアンプとなり、後にイコライザ組み込みのプリメインに改造したり(1984/01)、イコライザを取り払って、12B4A pp に換装したり(1990/07)、最後は再び終段のみ 6197(T) pp に戻し、電源トランスを B とヒーターを分離独立して改良?して(1994/09) 、勤め先のE氏にオイタ用にと進呈しました。
 ところが、そのアンプがナント今尚健在であり、持ち主のE氏から戴いたディジカメ写真を記載できました。 Eさんありがとうございました。 もし私の手元にあったら、とっくの昔に分解されて形を留めていないでしょうね。

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写真:6197 三極管接続の pp アンプ

3 超三結にして見る 

3.1 回路:  

 何も考えずに 6197 超三結アンプとします。 所要部品が少なくてすみ、成功率が非常に高く、結構な音が得られます。 それよりも何よりも、これまで実験してきた各種の球による超三結アンプとの試聴比較をするのが最たる理由です。
 なお12BY7A はソケット接続と自己バイアス用カソード抵抗のみを変更して、動作実験に留めたのですが、その後、新規製作し更新しました。

3.2 電源:

 B 電源は100V-100V セパレーショントランスの二次タップ115V を全波倍圧整流して 280V 程度、終段のカソード電圧を 60V 程度にします。これでも例の出力トランスの直流抵抗 (=300Ω) による電圧降下は 300Ωx35mA=10.5V となり、実質の Ep=230V 程度の確保がヤットです。

3.3 適正 Rk 値および適正 Esg 電圧の供給:

 規格表の動作例によれば

6197/6CL6:Eg1=-3V, Ep=250V/Ip=30mA, Esg=150V/Isg=7mA, RL=7.5KΩ, Po=2.8W

6AG7   :Eg1=-3V, Ep=300V/Ip=30mA, Esg=150V/Isg=7mA, RL=10KΩ, Po=3.0W

12BY7A   :RK=100Ω, Ep=250V/Ip=26mA, Esg=180V/Isg=6mA

 となっています。 12BY7A の Po が不明ですが、6197/6CL6 の規格から比較して 2.4W 程度としておきます。

 適正 Rk 値の設定では、いずれも所要バイアス電圧が -3V 程度と非常に低いので、嵩上げ電圧そのものを考慮すれば良いことになります。
 前段を真空管で構成するなら 55V、FET なら40V 程度を目標とするなら、6197/6CL6/6AG7 では 1500/1100Ω、12BY7A では 1700/1250Ω程度となりますが、あまりクリティカルではないので、近い抵抗値でよいでしょう。 実際の値は、後述の各回路図に示したようになりましたが、例によって調整時にオーバーしにくくするために控え目な動作点にしてあります。

 電圧配分を Esg>Ep とした場合の 6Y6G/GT の超三結アンプで経験した悪夢〜音の悪さ、ゲイン低下が思い出されます。 そこで SG 回路にはドロッパ抵抗 12kΩ 程度を B電源の下に入れて調整します。  

3.4 出力トランス:  

 いずれも 7kΩ 以下と踏んで、37mA のプレート電流に耐えられる例の愛用小型出力トランスとします。

3.5 初段と電圧帰還管:

 初段にはよく動作してくれる 6AK5, 6AS66U8A, 6GH8A の五極管部または 2SK30A-Y、電圧帰還管には前記の三極管部または12AX7/12AT7/5965 とします。  以下に 6197/6CL6/6AG7 超三結アンプの回路図を (最終更新後) 示します。

6197sch.gif 



 以下に 12BY7A 超三結アンプの最新更新 (2001/07) 後の回路図を 示します。

12by7as.gif


4 試聴結果、アフターフォロー

 「そんなに変わった音が出る訳はないよ」と、6197/6CL6 超三結アンプは、いつもの予想通りに普通の超三結の音が出ます。(1998/08)
 6197/6CL612BY7A を比較すると、後者の方がやや早くクリップが始まるようですが、規格の上からも12BY7A は一回り小さいといえます。(1999/01)
 12BY7A 超三結アンプは 6197/6CL6 超三結アンプよりも豪快さと潤いがあり 6BM8 超三結アンプに似た音になりました。 出力トランスはいずれも同じものです。 いずれのアンプも、入力感度が高く、ヴォリュームをあまり回さなくてもすぐにフルゲインになります。(1999/06)
 6AG7 を入手して超三結アンプとしましたが、 6197/6CL6 とは特段の相違はありませんでした。(2000/10)

以上

改訂記録
1998/08:6197/6CL6 超三結アンプ〜初期組み立て
1999/01:12BY7A 超三結アンプ  〜動作試験 (ソケット変更による)
1999/06:12BY7A 超三結アンプ  〜別途組み立て
1999/09:6197/6CL6 超三結アンプ〜別電源化、重ね出力トランス
2000/07:12BY7A 超三結アンプ  〜6R-HP3 超三結アンプ試験に流用
2000/10:6AG7 超三結アンプ   〜新作復活、アダプタにて6197/6CL6 兼用
2001/07:6AG7(6197/6CL6) はユニバーサルアンプに吸収、消滅。