6080WC バラレル OTL アンプ試作記

6080otlp.jpg
2012/07~08 宇多 弘

1.試作経緯

 これまでに考えても見なかった、真空管 OTL の試作が課題になりました。 さてどうしたものか、とにかく多角的に予習して可能性を検討しようかな・・・

1.1 必要な事項
 過去の攻略実績?を参照すると下記の表1〜5が済んでいるから、何とか参考にならないかなと前向きに発想を転換して、一発やって見るか・・・と決心したのです。 (そして何と、チャッカリ今回の OTL アンプを表の6番目に加えてしまいました。)

*** 類似アンプ試作例一覧 ***
No.
試作年
構成名称
入力トランス、位相反転
終段構成、使用素子
出力トランス/NFB他
電源
1
1999
トランス併用 SEPP
P-K 分割
6AN5 パラレル
CRD5/中点→初段k
共用単一
2
2001
トランス併用 SEPP
ミュラード型
6Y6G/6Y6GT
CRD5/中点→初段k
共用単一
3
2005
シングル~SEPP/OTL
2SK117 ソースフォロワ
イントラ兼 ST-75x4
ダーリントン型 2SD864k
エミッタ接地→エミッタ・フォロワ
シングル~SEPP SW 切換
/NFB なし
独立単一
4
2006
球リントン SEPP/OTL
TDA1552Q
イントラ兼 8/600x4
12AU7/2~2SC5200
/NFB なし
共用単一
5
2008
球リントン SEPP/OTL
P-K 分割→ミュラード型
12AU7/2~2SC5200
/中点→初段k
独立単一
6
2012
SEPP/OTL
ミュラード型
6080WC バラレル
/中点→初段k
独立単一

 振り返ると、大胆にも SW 切り換えのシングル-SEPP/OTL 兼用などに挑戦したり、球リントン回路・・・(田中 安彦氏が考案し実用化した、三極管およびパワートランジスタをダーリントン接続した合成ユニット) ・・・を保護回路なしで SEPP が安定稼働できそうだなど、試作試験してきました。
 その意味からは、一般のコンプリメンタリ素子によるエミッタ・フォロワの標準的な SEPP 回路はスイスイと登れる整備された登山道、それにくらべて脇に外れた私の「踏み跡」は背が高く見通しのないヤブ漕ぎルートやら水しぶきでズブぬれの沢登りです。 
 そして表に並べてみると、真空管 OTL だけが埋まっていない訳です。 それならこれまでの経験を活かせば、意外とイケルかもしれない・・・数々の苦い経験を思い出しながらです。

1.2 素子の選択
 出力管の種類と数と出力の関係を、シコシコと調べました。 そして最終の出力は、各素子の出力と同じ位その出力インピーダンスに依存すること・・・8Ω負荷では・・・と答えはイヤでも出てきます。 そしてズラッと真空管を並べる元気はありませんが、家で鳴らすに困らない程度の出力は欲しいなと思う訳です。  

1.3 コストと工期
 ここから非常に難しい判断に迫られました。 
 とにかく試作を決心したのが「納期」の二ヶ月半前、そしてその後半月は強烈な風邪にやられて死んだも同然・・・実は寝ている訳にも行かずに、ベッドに伏してアゴ枕にてコスト計算からシャーシと筐体の設計を何通りも検討しました。
 コストの主要部分は全て電源まわり、これを最少化・最適化して次に出力管の検討です。  手持ちの 5998/5998A に何本か追加することも一案、しかしフトコロに相談したら否定的回答、自動的に入手が容易な 6AS7-G 一族 に決定しました。

1.4 手持ち材料の活用
 全部新品で揃える必要はありません。 とにかく稼働率が低い、いや稼働していない汎用電源およびアンプを分解整理すれば必要なパーツは殆ど揃う筈・・・外観とか体裁とかはプライオリティを下げて「機能一本に絞るぞ」で、在庫部品を徹底的に活用することにしました。
 まあ、一般的には一定のコストが必要ですが、それがナント終段真空管代および木板とアルミサッシュのアングル程度で済みそうだなとの見通し、納期日(出番の日)の一月半前になり、やや焦って転用する電源とアンプの分解にかかりました。 そして分解作業の速い事でビックリします。 
 次にキッティングにかかり、搭載すべきバラバラの各種トランスが合計 9個に及んでは、我ながら呆然となりました。 前段 B の低過ぎとか、スピーカ端子をショートするタイム・ディレィ・リレーの在庫が 24VDC でその電源が加わったこともありますが。 納期日の一月前には筐体へのトランスおよび「吹き抜け自然空冷」シャーシの取り付けがほぼ終わり、配線に掛かりました。 

 トランスの内訳:(B +ヒーター +バイアス)x2/前段用 B+H/前段 B嵩上げ/24V リレー電源

1.5 突貫工事
 秋葉原に行き終段真空管を購入して、帰って直ちに封入二素子のバランス・チェックのソケット器具を作り、点検したら可成りによく揃っているので「これなら十分行けそう」と安心し嬉しくなりました。 突貫工事はなんとかなるもの、納期日の半月前にとにかく音が出りゃコッチのものです。 それから小修正やら小改造にて一週間ガタガタ、なんとか我慢できる状態になりました。 


2 回路構成など

 回路は、どうやってもドチラさんの例も似ているので・・・ただし工夫したのは終段管を挿してない状態にて固定バイアスのプリセットを済ませたいので、B電源のブラス〜マイナス間に「大ブリーダ」をブラ下げました。 
 回路図はゴチャゴチャしていますが、これで半分以下です。 同じものをもう一つ、それに侮れないのが電源部分です。 火を吹いてもらっては困るから、電線の太さやら経路やら本体シャーシとの接続電線やら、カールカバーによるプロテクションなど、何回か張り替えを行いました。 
 アンプ本体回路図面に誤りがあり訂正しました。 (2012/08)

6080otls.gif

6080pwrs.gif

2.1 動作電圧など
 各種トランスの数が増えた原因は、オフセットが発生しない・・・R/L いずれの終段回路もスピーカ端子のグランド側以外はシャーシに落とさず、B 電源および下の素子のバイアスを完全にフローティングにしたこと・・・が関係しています。 まあ他所さんのスピーカを使う前提では、安全設計に越したことはないとの考えです。 
 予想通り、初期構成の電源ではいろいろ不十分でした。 動く前から「まあ動作はするよね」といった程度でしたから。 初段~位相反転段への供給電圧が不十分で、ドライブ不足は予想通りですが、さらに位相反転段の動作電圧調整では少し手こずりました。 五極管初段のミュラードタイプ位相反転は三極管初段よりもクリティカルなことを忘れていました。 この部分はまだ仮組、もう少し調整しようと思っています。 そして終段電源も・・・当然だろうな、と思った通り出力が伸び悩みました。 

2.2 小改造
 出力キャパシタに終段管の輻射熱がモロ照射する配置、遮熱板を設けたに係わらず、結構暖まるので「変だな」と調査しました。 それは、熱せられた終段管ソケットがシャーシを熱し、出力キャパシタのバンドを暖め、キャパシタ本体がホンノリと暖まる「間抜けな熱伝導設計」だったと判明しました。
 キャパシタの温度は相当に余裕はあるもののなんとも恥ずかしく気に入らず、ソケットの一端を別のアングルに取り付けてシャーシとは隔離、出力キャパシタは殆ど暖まらず効果が確認できました。 この工事は出番の数日前に施しました。
 出番の数日後、早速電源まわりに一大改造を施しました。 トランスの数がまた増えて筐体を作り直すハメになりましたが。 しかし木板筐体のメリットはとにかく気楽な事です。 ノコで切って角をペーパーで落として、並べ替えて配線して半日です。 それで音はシッカリして大分「らしく」なりましたが、あとワンステップ電源まわりを拡充して完成させたいです。


3 できばえ等

 まあ、やっとデッチ上げたという感想ですが・・・素っ気ない音のアンプです。
 ゴタゴタ小物を手掛けた経験から「大して変らないだろう」なんて安易な短期決戦でした。 そしていくら時間的余裕があっても、処理する作業は同じようなものでしょうね。 
 最終的には金属製筐体に収容しなおして、安全性を確保しようと考えています。 
以上

改訂記録
2012/07:初版
2012/08:改訂第一版:回路図誤り訂正、その他小修正。
End of text