P-G NFB 併用 カソード・フォロワ ドリブン 300B アンプの製作

2001/06〜2007/02 宇多 弘
300b.jpg
P-G NFB jointed cathode follower driven 300B amp

1 いきさつ

 P-G NFB を併用したカソードフォロワ・ドライブによる UX2A3/UX45 の超三結「類似」〜準超三結アンプを完成して、課題であった 300B の同回路形式による準超三結アンプの製作にかかりました。
 収容するシャーシ・キャビネットは移動運用を考慮して、リード(株) のMk400 W=400mm, D=250mm, H=(ボンネット150mm + シャーシ50mm) としました。(2001/06)
 別項の 2A3/45/5998(A) 準超三結アンプにての、カソードフォロワ・ドライブ段の三極管のμを低くする実験の結果を踏まえて、本機にも同じ改造を施しました。(2002/07)
 一般的なスピーカとの整合性を考慮して、カソードフォロワ・ドライブ段管を初期に戻しました。(2007/02)

2 取り敢えずの回路と調整

●トータル・ゲイン課題
 回路は準超三結アンプの実証機として先行製作した UX2A3/UX45 に準じました。 しかし 300B ではドライブ電圧振幅をより必要とするため、全く NFB を併用しない場合ならいざ知らず、満足にドライブするには標準の SRPP 回路、および P-G NFB 併用カソードフォロワではトータル・ゲインが不足するのではないか、さらに終段 300B のプレートから SRPP 初段のカソードに軽く P-K NFB を掛けたら、更に不足しないか?と大変心配でした。
 しかし迷っても先に進まないので、最悪の場合にはライン入力トランスによる昇圧という術もあるし何とかするさ、と覚悟して突進しました。

●出力トランス他
 タンゴ U808 を使いました。 このトランスならば低域通過特性は一応十分と見て、SD の挿入は見合わせました。 

●電源回路
 使用した転用品の電源トランスの B 巻線は 360V275mA との仕様であり、一応キャパシター入力の整流回路なら十分な直流電圧が確保できると考え、B 電圧のスロースタータとして整流管を使うことにしました。 整流管は 5AR4 にしたい所ですが、電源トランスのヒーター巻線の制限から 6CA4 を並列接続とし、二本使って両波整流しました。 チョークにはタンゴ MC5-250 を使いました。 
 Power off 時には、AC が切れると放電する AC100V リレーの Normally close 接点に放電抵抗を用意しようと考えましたが、動作を点検した結果 300B のフィラメントの熱容量が結構大きく、合計400μF程度のキャパシタによる B 電源チャージが意外にも急速に〜数秒以内にて放電されるので、不要と判定しました。

●初段とカソフォロ・ドライバ段
 SRPP とした初段には、最初 12AT7/5965 を採用したのですが、どうやらトータル・ゲインが不足気味なので 12AX7 に変更しました。 カソフォロ・ドライバ段には 12AU7/5963 を使い、そのカソード負荷には単なる抵抗に加えて、2SK30A または 2SK68A では印加電圧が高すぎると見て比較的 Idss の大きい 2SK163 の source/gate を接続した定電流源素子を加えて負荷のインピーダンスを高くしました。

●フィラメント点火法およびハム対策
 最大の課題である 300B のフィラメント点火は、取り敢えず様子を見るために AC 点火としました。 電源トランスには 5V 巻線がないので、6.3V数A の二次巻線に 0.27Ω〜0.5Ω〜1Ωの抵抗を組み合わせて、5V+−0.1V になるように直列に入れて調整しました。 
 動作テストの結果では、ハムバランサを最小点に調整しても出力トランス二次側にて 4mV の100Hz ハムが残りました。 カソード・フォロワの 12AU7/5963 を抜いても、初段の 12AX7 を抜いても波形が殆ど変りません。 スコープでハム波形を見ると充電と放電を繰り返すリップル・ハム状の波形です。
 このハムではチョット実用には厳しいので、急遽ダイオード・ブリッジと15,000μF16Vのキャパシタだけのリップル・フィルタによる DC 点火に変更し、計って見たら 1mV までハムが減りました。 勿論 AC 点火の場合と同様にダイオード・ブリッジによる整流後に小抵抗を挿入して電圧を調整しました。 パワー ON 時のフィラメント電圧を監視すると、0.2V 程度超過するもすぐに安定するので、寿命に係わるほどではないと判定しました。
 この状態で能率 91db のスピーカの場合、ウーファから 5cm 位まで耳を接近させると、100Hz のリップル・ハムが辛うじて聞こえる程度になったので、フィラメント回路は OK としました。 なお、L チャネルと R チャネルのフィラメント配線の+−を逆にしたので、定期的に L/R の 300B を挿し替えて、フィラメントの片減り対策として・・・本当なのか、それとも気にする必要がないのか判りませんが・・・精神効果的意味も含めた対策としました。

 アンプ本体と電源部分の回路図を下記に示します。

300bsch.gif

300bps.gif


3 できぐあい(2001/05)

 さて本機の回路図は、よく見かける古典回路の SRPP-カソフォロ・ドライブの直熱三極管アンプと類似ですが、下記の特徴による近代回路となっています。

 ●(1) 出力トランスの二次側から初段に信号を戻すオーバーオール NFB の使用を取り止めて、再現性を高めた。
 ●(2) 初段には終段プレートから軽く P-K NFB を掛け、全体の歪を軽減した。
 ●(3) カソフォロ・ドライバ段には終段プレートから P-G NFB を掛け、出力の電圧成分を抑えた。
 ●(4) カソフォロ・ドライバ段の負荷には定電流源を併用し、NFB 量を確保した。

 本機の回路である P-G NFB 併用のカソードフォロワ・ドライブでは、終段のμは抑えられます。 即ち電圧ゲインを失うため、電圧成分に支えられた最大出力は減少すると考えます。 従って no-NFB アンプまたは over-all NFB アンプに比べ、単純な抵抗負荷による出力電力は少なくなります。 但し、終段の Gm は損ねないので、電流出力は確保されます。 この点では多極管の超三結アンプの動作と同一です。
 予想通りに、本機はこれまでに聴かせて頂いた 300B アンプとはかなり異なった、むしろ既に製作・実験した UX2A3/UX45 準超三結アンプに似たサウンドが得られました。 


4 カソードフォロワ段のμ低減改造および復帰

 別項の 2A3/45/5998(A) 準超三結アンプにて、カソードフォロワ・ドライブ段の三極管のμを低くする実験結果がマズマズ予想通りでした。 そこで、基本構成が全く同じ本機にも同じ変更を加えてみようと、短時間作業にてカソードフォロワ・ドライブ段を 12AU7 から 12B4A に変更してみました。 結果は 2A3 準超三結アンプと類似ですが、音質の変化は 2A3 ほど顕著ではないと感じました。 300B は裸特性の状態にて既に個性が希薄なのでしょうか、より深い P-G NFB の効果として現われないのでしょうか。 また 2A3 準超三結アンプと同様にゲイン、出力ともにダウンしましたが、音質的な端正さの魅力が増しました。 (2002/07)

 しかし、いろいろなスピーカを鳴らす機会に恵まれて、比較してみるといかにも過制動気味の音、 「過ぎたるは及ばざるが如し」のようなので、カソードフォロワ・ドライブ段を 2A3 準超三結アンプと同様に、初期の 12AU7 にもどしました。(2007/02)

以上

改訂記録
2001/06:初版
2002/07:カソードフォロワ・ドライブ段の変更の経過と結果概要を追加
2007/02:カソードフォロワ・ドライブ段の復帰