●出力トランス他
タンゴ U808 を使いました。 このトランスならば低域通過特性は一応十分と見て、SD の挿入は見合わせました。
●電源回路
使用した転用品の電源トランスの B 巻線は 360V275mA との仕様であり、一応キャパシター入力の整流回路なら十分な直流電圧が確保できると考え、B
電圧のスロースタータとして整流管を使うことにしました。 整流管は 5AR4
にしたい所ですが、電源トランスのヒーター巻線の制限から 6CA4 を並列接続とし、二本使って両波整流しました。 チョークにはタンゴ MC5-250 を使いました。
Power off 時には、AC が切れると放電する AC100V リレーの Normally
close 接点に放電抵抗を用意しようと考えましたが、動作を点検した結果 300B のフィラメントの熱容量が結構大きく、合計400μF程度のキャパシタによる B 電源チャージが意外にも急速に〜数秒以内にて放電されるので、不要と判定しました。
●初段とカソフォロ・ドライバ段
SRPP とした初段には、最初 12AT7/5965 を採用したのですが、どうやらトータル・ゲインが不足気味なので 12AX7 に変更しました。 カソフォロ・ドライバ段には 12AU7/5963 を使い、そのカソード負荷には単なる抵抗に加えて、2SK30A または 2SK68A では印加電圧が高すぎると見て比較的 Idss の大きい 2SK163 の source/gate を接続した定電流源素子を加えて負荷のインピーダンスを高くしました。
●フィラメント点火法およびハム対策
最大の課題である 300B のフィラメント点火は、取り敢えず様子を見るために AC 点火としました。 電源トランスには 5V 巻線がないので、6.3V数A の二次巻線に 0.27Ω〜0.5Ω〜1Ωの抵抗を組み合わせて、5V+−0.1V になるように直列に入れて調整しました。
動作テストの結果では、ハムバランサを最小点に調整しても出力トランス二次側にて 4mV の100Hz ハムが残りました。 カソード・フォロワの 12AU7/5963 を抜いても、初段の 12AX7 を抜いても波形が殆ど変りません。 スコープでハム波形を見ると充電と放電を繰り返すリップル・ハム状の波形です。
このハムではチョット実用には厳しいので、急遽ダイオード・ブリッジと15,000μF16Vのキャパシタだけのリップル・フィルタによる DC 点火に変更し、計って見たら 1mV までハムが減りました。 勿論 AC 点火の場合と同様にダイオード・ブリッジによる整流後に小抵抗を挿入して電圧を調整しました。 パワー ON 時のフィラメント電圧を監視すると、0.2V 程度超過するもすぐに安定するので、寿命に係わるほどではないと判定しました。
この状態で能率 91db のスピーカの場合、ウーファから 5cm 位まで耳を接近させると、100Hz のリップル・ハムが辛うじて聞こえる程度になったので、フィラメント回路は OK としました。 なお、L チャネルと R チャネルのフィラメント配線の+−を逆にしたので、定期的に L/R の 300B を挿し替えて、フィラメントの片減り対策として・・・本当なのか、それとも気にする必要がないのか判りませんが・・・精神効果的意味も含めた対策としました。
アンプ本体と電源部分の回路図を下記に示します。
●(1) 出力トランスの二次側から初段に信号を戻すオーバーオール NFB の使用を取り止めて、再現性を高めた。
●(2) 初段には終段プレートから軽く P-K NFB を掛け、全体の歪を軽減した。
●(3) カソフォロ・ドライバ段には終段プレートから P-G NFB を掛け、出力の電圧成分を抑えた。
●(4) カソフォロ・ドライバ段の負荷には定電流源を併用し、NFB
量を確保した。
本機の回路である P-G NFB 併用のカソードフォロワ・ドライブでは、終段のμは抑えられます。 即ち電圧ゲインを失うため、電圧成分に支えられた最大出力は減少すると考えます。 従って no-NFB アンプまたは over-all NFB アンプに比べ、単純な抵抗負荷による出力電力は少なくなります。 但し、終段の Gm は損ねないので、電流出力は確保されます。 この点では多極管の超三結アンプの動作と同一です。
予想通りに、本機はこれまでに聴かせて頂いた 300B アンプとはかなり異なった、むしろ既に製作・実験した UX2A3/UX45 準超三結アンプに似たサウンドが得られました。
しかし、いろいろなスピーカを鳴らす機会に恵まれて、比較してみるといかにも過制動気味の音、 「過ぎたるは及ばざるが如し」のようなので、カソードフォロワ・ドライブ段を 2A3 準超三結アンプと同様に、初期の 12AU7 にもどしました。(2007/02)