2E24 超三結アンプ製作記

2008/06 - 2008/09宇多 弘
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1 始めに

 直熱管のアンプを作る事になりました。 一応オーディオ管と決めて、今度は三極管か多極管かの選択です。 そこで余り例の多くない「直熱多極管に挑戦するぞ、しかも超三結アンプにするぞ」となりましたが、品種は限られてきます。 検討の結果、以前に 1619 の超三結アンプは製作済みなので、入手しやすい 2E24 にて超三結アンプを作る事にしました。 筆者にとってはひさしぶりの「初顔合わせ出力管」となりました。 
 規格概要は下記の通りで、A1シングルなら自室で使うには丁度の規模です。 例により改造ベースにて設計・製作しました。  

 2E24 電気的仕様 :Ef=6.3V,If=0.65A, Epmax=300V, Pp=10W, Esgmax=200V, Psg=2.5W, 口金接続=7CL


2 実装設計  

● 終段の動作点、自己バイアス+嵩上げ抵抗
 2E24 自己バイアス電圧+嵩上げ電圧を約 50V に設定しカソード電流は控えめとするため、カソード抵抗は 1500Ωに設定しました。 

● 出力トランス
 5kΩ/8Ωにて直流電流容量 50mA 程度の中型形出力トランスにて納まります。

● 終段回路およびB 電源電圧
 2E24 は超三結 V1 回路で十分ドライブできそうなので、プレート電圧を 250V とし、カソード電圧を 50V 加えて B 電源電圧を 300V としました。 終段スクリーン電圧は対カソード電圧 150V、絶対値にて 200V をブリーダ・ドロッパにて確保しました。 

● 初段管、電圧帰還管
 6AW8-A を採用しました。 その経過は本文「3 三極五極管による前段球について」にて説明します。

● 終段保護回路
 例によって 30V のツェナーダイオード二個および LED による、初段管不良による終段管破損防止回路を初段管プレート回路に並列接続しました。
 ところが Power on 後コールド・スタート時に、電圧配分がしばらくギクシャクする状態が起きました。 それはヒーター・ウォームアップ・タイム (HWT) の差に起因する問題でした。 終段 2E24 が先にウォームアップし、次に 6AW8-A の三極部が立ち上がり、五極部が最後に立ち上がるのです。 その数秒間は、五極部 P〜終段 G1 に高いプラス電位が掛かり、ハムノイズが出るとともに保護回路の LED が派手に点灯して「ドキッ」と驚きます。
 そこで保護回路に並列に 4.7MΩを並列接続して、予め五極部 P〜終段 G1 電位を 0V (グランド) に設定したら、LED が短時間点灯するだけに抑制できました。

● B 電源回路
 100v-220V 50VA のセパレーション・トランスに 48V0.3A の汎用トランスを継ぎ足して、1N4007 によるブリッジ整流としました。 リップル・フィルタには 350V100uF x2x3 および 400V560uF x2 にて、二段パイ構成の途中から L/R 電源として分岐しました。

● フィラメント/ハムバランサ/ヒーター電源回路
 終段管 2E24 のフィラメント電圧が 6.3V であり、交流点火ではハムが取りきれないと予想、取りあえずの試験では盛大なハムでした。 口金接続を参照するとフィラメントに中点が引き出されているけれど、それは無視して SiDi ブリッジおよびキャパシタにて直流点火しハムバランサを調整しました。 ブリッジ整流出力が高いため、1Ωの直列抵抗を挿入して DC6.3V となるように調整しました。
 ハムバランサは、回路図に示すような固定抵抗を組み合わせた構成とし、発熱および直列抵抗値を減らし、微細な調整を可能としました。
 終段管の他に初段管、電圧帰還管を AC 点火するため余裕を見て AC6.3V3A 二系統のヒータートランスを用意しました。 
 初段管、電圧帰還管に対するヒーターハム対策の DC 電圧付与は、終段管フィラメントを通じて接続されており不要となりました。

● 回路図
2e24.gif


3 三極五極管による前段構成

● 3.1 前段球のピン配置について
 過去に試作した何例かの超三結 V1 アンプでは 6U8A/6EA8/6GH8A 等の口金接続が 9AE タイプのカソードが分離された三極五極管を、そのまま初段管および電圧帰還管として構成して、しばしば 高周波発振に悩まされて色々対策を講じてきました。 
 ところが初段の五極管および電圧帰還管の三極管を別の球で構成した、 6AU6+12AT7/2, 6EJ7+12AX7/2 および 6AK5+6BM8(t) 等の組み合わせでは容易に発振しませんでした。 
 そこで 9AE タイプ管種での発振の原因を追求していくと、超三結 V1 回路では電圧帰還管である三極部プレート (Pt) に終段プレート (Pp) が接続され、さらに三極部プレートのピン#1 および五極部グリッド (G1p) のピン#2とが隣りあっているため、配線間〜ソケットのラグ間〜管内のピン間の微少容量にて正帰還回路を構成し、100kHz 単位の高周波発振を起こすことが判明したので、それ以後は別の球で構成した「分離構成」を超三結 V1 アンプの標準構成としてきました。

● 3.2 本アンプの場合
 超三結 V1 アンプを試作して三極五極管での発振対策を模索中のSさんに各種の対策をお教えした際に「9AE タイプ以外の三極五極管、例えば 9DX タイプの 6JV8 なら、Pt-G1p 間容量が微少であり発振を回避できるのでないか?」との素晴らしいアイデアをいただきました。
 規格表によれば手持ちの 6AW8-A が同様に Pt-G1p 間容量が少ないので、早速稼動中のユニバーサル超三結アンプのソケット配線を変更し挿し換えて動作試験した結果、発振することなく見事に成功しました。 さらに 6AW8-A の管内電極構造を観察すると、Pt およびそのリード線が G3p に接続されたシールド板にてシッカリ G1p から隔離されていました。
 本アンプの場合は、使用したシャーシには前段用に 9 ピン・ソケット二本分しかないため初段の電圧増幅五極管には 6EJ7、電圧帰還管には 12AX7 をシャーシ内に寝かせて取り付ける予定でしたが、早速 6AW8-A に変更してスマートに解決しました。 なお 9DX タイプの口金配置以外にも同様に 9FA タイプの口金配置をもつ 6BR8-A などの三極部・五極部を隔離した複合管があり、同様に安定な初段管、電圧帰還管として適用できるものと考えられます。

● 3.3 発振対策のまとめ
 余談ではありますが、初段管および電圧帰還管の構成に関連して発生する高周波発振の回避策または発振防止対策を下記のようにまとめました。 まずは (1) が確実です。 (2) は部分的に利用して (1) を構成する場合です。 (3) は該当する管種の入手が問題になるかもしれません。 (4) は配線または配置、併用機器などにより不確実な要素が残ります。

(1) たとえば 6AU6 + 12AX7/2 など五極管および三極管を別のもので構成する。
(2) 三極部を別の電圧増幅三極管に変更、または五極部を別の電圧増幅五極管に変更して分離する。
(3) 三極部・五極部が隔離された管種 (例えば 6AW8-A 口金接続=9DX 等) に接続変更する。
(4) 9AE タイプそのままの構成で発振防止対策をとる場合 (ただし試作例では抑制しきれない場合がありました。)
   初段入力加減 VR の値を 5kΩなど少なく設定して G1P のインピーダンスを下げる。 
   ・・・但し CD プレーヤ等は下限を 10kΩとしているので音質等に影響する可能性がある。
   初段管グリッド G1 を 50pF 程度のCで接地して、フェライトビーズを通して入力する。 
   終段管 G1 に〜1kΩ程度までのRを直列に挿入し、フェライトビーズを通して入力する。
   終段管 P (プレート) に 20Ω程度までのRを直列に挿入し、フェライトビーズを通して出力する。


4 製作と動作試験

● シャーシと部品配置
 写真に示した通り、アルミ製 350x200x60 T=1.2mm の汎用シャーシの妻面下方をL型アルミサッシュにて補強し、縦型配置としました。 シャーシ前妻面には電源スイッチ他、上面には真空管類、トランス類、キャパシタをのせ、後方の妻面には AC 電源コンセント、フューズホルダ、スピーカ端子を取り付けました。

● 動作点調整
 初段カソードに挿入した可変抵抗を加減して 2E24 の嵩上げ電圧込みのカソード電圧を 50V に設定し、さらに前後に動かしても歪が急激に増加しない良好なポイントにあることを確認し、P/G2 合計概算入力が 9W 程度にて Pp/Psg は何れも安全圏内にあることを確認しました。


5 出来映えとアフターフォロー等

 以前に試作した直熱ビーム管の 1619 超三結 V1 アンプに若干似た音質が得られました。 
 試みに 6AW8-A を同じ口金接続をもつ国産球の 6R-HP3 に挿し換えて動作点調整を行った所、若干ゲインが低下したものの正常に動作しました。 
以上

改訂記録
2008/06:初版:試作試験
2008/09:改訂第一版:部分分解転用
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