12B4A 超三結V1アンプの試作実験

1998/06〜08 宇多 弘

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1 いきさつ

 12B4A に始めて接したのは岩崎通信機の古い当然故障したシンクロスコープを貰い受けて分解したときに遡ります。ウロ覚えですがおそらく1980 年のころでです。  これを五極管またはビーム管の超三結V1 なみの動作をさせて見ようというのが今回の12B4A 超三結アンプの製作の動機・発想でした。

1.1 シングル動作試験経験 

 最初に使って見たのは 1982/12 です。6AU6 - 12B4A 構成の A1 シングル・アンプで、出力トランスにはタンゴ U608 (7kΩ) を使用したシングルでした。 B電圧の高すぎを警戒して、Ebb=250V,Ep=230V 程度に抑え、プレートの様子を見ながら、Ik=25mA すなわちRk=1200Ω 程度に調整して、結構な音であったと記憶しています。 このアンプは 4カ月程稼働をしました。

1.2 PP 動作試験経験

 次に 1988/10 に試験したのが pp の動作試験でした。 B 電圧が高すぎて Ip を抑えるため深いバイアス電圧としたため、クロスオーバー歪を起こすやらで、ロクな音が得られず直ちに分解しています。 

1.3 再試験〜実用機、しかし予備機

 その後、1990/07 に前回の失敗を踏まえて再度 pp に挑戦しました。 こんどは低い B電圧=200V 程度に設定して、一発でうまく動作して目的を達しました。これも結構な音でした。 その構成は下記のとおりです。

 初段    直結カソード結合 C/R結合    出力トランス 電源トランス
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 5965パラ  5965       12B4A pp    菅野 OT42P 菅野 M11A

 この pp アンプは 1990/07/07 〜1991/07/028 の間、予備機として稼働可能なまま殆ど使われず、出力トランス OT42P の断線などもあって、遊んでいましたが、1994/07 に出力トランスをタンゴ U13-8 に交換し 6197(T) pp にして 1994/09 に会社の若い同僚にプレゼントしました。


2 再度のアタック

 12B4A は、シングル・アンプにしても pp にしても素材としては結構な球ですがバラツキがあり、一部には 5998A/6AS7GA/6080/6080WC 等と同様に内部スパークやグリッド焼けする球があります。

2.1 バイアス設定  

 すでに、CV18, 1626, 2A3 については 1998/05 に実験した終段プレートからP-G 帰還を掛けた強力 SRPP C/R 結合ドライブ・アンプの実績があるので、最悪の場合にはそれもよしとしながら、一般の電力増幅五極管/ビーム管による超三結V1 なみのドライブ方法による12B4A 超三結V1 アンプを試しました。

 設計上、特に注意した点は、初段の電圧増幅五極管の SG へ供給する電圧です。これまでの超三結V1 では、終段のカソード電圧そのままを初段電圧増幅五極管の SG に供給しており、同五極管のプレート供給電圧のほうが、直列にのせた三極管による電圧帰還管の負荷抵抗による電圧降下および終段のバイアス電圧だけ低い設定になっています。

 たとえば 6AU6 - 6BM8 の組み合わせの超三結V1 では、初段 Ep=29V, Esg=48V といった状態の動作です。これで初段電圧増幅五極管の動作が楽か否かは不明です。でも 6AK5 とか 6AS6 等はうまく動作していますが。

 しかるに、電力増幅五極管/ビーム管に比べて12B4A では、更に深いバイアスを必要とするため、初段電圧増幅五極管のEp/Esg の差が拡大するものと考え、終段の自己バイアスを初段五極管の SG に直接供給せず、それよりも 20V 程度低い〜すなわち初段五極管のプレート供給電圧なみに設定しようと考えました。 その方法として、終段のカソードバイアス抵抗を分割して分圧し、初段の SG には大容量バイパス・キャパシタを入れて交流的に浮かないよう配慮したことです。

 この回路では、終段のバイアス電圧を分圧して初段五極管の SG に供給することにより、超三結V1 構成全体の DC サーボ性能が若干低下することが懸念されましたが、終段のカソードバイパスにも大容量のキャパシタを投入するので、殆ど問題は起きないであろうと推測し、実際に本機および他の一例でも問題は起きませんでした。

2.2 回路図

 ここまでの検討結果を回路に盛り込みました。

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2.3 動作試験  

 最初の前段 6AS6-12AX7/2 の組み合わせによる試験では、大振幅時にクリップ性の歪があり、6AS6-12AT7/2 の組み合わせに変更したら収まりました。
 どうも B 電圧が低い場合は、前段の五極管にのせた電圧帰還管の三極管は、12AX7/2 よりも 12AT7, 6AQ8, 6DJ8 等の Gm の高いものが適合するようです。
 もっとも 6AU6 - 12AX7/2 の組み合わせでは、6AU6 の SG 電圧を高くセットすればうまくいきますが。 本機では B 電圧を上げる余裕がなくできませんでした。 また、大振幅時にアンプが窒息するトラブルがありましたが、グリッド電流が問題らしく 12B4A を交換して収まりました。

3 完成して

 かくして 12B4A シングルアンプが 15 年振りに再現しました。しかも超三結V1 です。 やはり C/R 結合のシングル・アンプに比べると、一味違います。 但し、宿命的な課題は、全体に NFB 量が不足らしいことです。 とりあえず、低音域の締まりを確保するため、急遽出力トランス二次側をひっくり返し、カソード NF (CNF) を掛けて切り抜けました。

 不完全ながら、本機の完成にて、小振幅ドライブの三極管の超三結V1 に対して道が開けたと考えています。 すなわち 6GA4, 6RA8, 6BL7GT, 6BX7, 6AH4GT, 6CK4 はては 6CL6/6197(T), 30A5(T), 6BQ5(T), 6L6GC/EL34(T) など、ドライブ振幅が 40V 程度までの三極管(接続を含む)が、大挙して超三結V1 アンプ構成の対象としてノミネートされた訳であります。

以上

改訂記録
1998/06:初版
1998/08:改訂第一版 6197/6CL6 超三結アンプに転用・消滅