滲出性中耳炎 by はたの耳鼻咽喉科

■滲出性中耳炎

 滲出性中耳炎とは、中耳に液体が貯留している状態を言います。液体が貯留した結果、難聴・耳閉管・耳鳴りおよび自分の声が耳に響くなどの症状が起こります。
 耳は外耳、中耳、内耳の3つの部分に分けられます。外耳からの音を内耳に伝える重要な役割をもつ中耳は、鼓膜、耳小骨、耳管、乳突蜂巣からできています。中耳は1つの部屋(中耳腔)で、一定の空気が満たされています。中耳腔の空気の換気は、上咽頭(鼻の奥でのどの上の部分)に開いた耳管によって行われています(図)。

 カゼをひいて、のどや鼻の炎症が耳管に及ぶと耳管炎という状態になり、耳管の粘膜が腫れて中耳の換気が十分に行われなくなり、中耳腔の空気圧が大気圧と比べて陰圧となり鼓膜が奥にひっぱられ、耳がふさがった感じや難聴、耳鳴りなどの症状を起こします。耳管の炎症がさらに中耳腔まで波及すると中耳炎となり、中耳粘膜の炎症により中耳腔に分泌液が貯留します。

●滲出性中耳炎の原因
@急性中耳炎の治療が不完全で、中耳腔に水性〜粘性の貯留液が残存する場合
A耳管が開いている上咽頭にあるリンパ組織(アデノイドや耳管扁桃)が大きく耳管を圧迫したり、アデノイドや扁桃の慢性炎症が耳管を介して中耳の炎症を反復して起こす場合
Bもともと耳管の狭い人や、カゼ気味のときに飛行機やダイビングなどで急激な気圧の変化を受け、中耳腔の空気圧の調節がうまく出来ない場合などです。
 滲出性中耳炎は小児と老人によく見られます。小児の場合、耳管が太く短く直線的なため、カゼなどの際、のど・鼻の炎症が中耳に侵入しやすいのと、アデノイドや扁桃腺が生理的に大きいため炎症を繰り返しやすく、耳管を圧迫しやすくなっているためです。とくに幼稚園から小学校低学年の小児にかなり高率に認められますが、耳痛がないうえに、子供ですから難聴や耳閉感などの症状を訴えないため見逃されがちです。テレビの音を大きくする、後ろから呼んでも返事をしないなどの様子に気付いたら要注意で、専門医の診察を受ける必要があります。一方、老人の場合は年齢的に耳管の機能が低下して滲出性中耳炎を起こしやすいといわれています。

●滲出性中耳炎の検査
 顕微鏡などで鼓膜を十分に観察することが最も重要です。また、聴力検査および外耳から圧を加えて鼓膜の動きを検査(チンパノメトリー)することにより、中耳に液体がたまっているかを知ることが出来ます。さらに鼻から耳管の入り口に金属製の管をあて空気を中耳に送り込んで、そのときの音により、耳管の腫れ具合や液体貯留の有無を知ることも出来ます(通気)。

●滲出性中耳炎の治療
 中耳腔にたまった貯留液を排除させることが第一です。鼓膜切開をしたり、鼓膜を通して細い注射針で排液させます(鼓膜穿刺)。長期間、中耳腔にたまった貯留液は粘性が高く「ねばっこく」なり、穿刺ではぬけきらないことがあります。子供の場合、恐怖心で暴れることがしばしばあり、鼓膜の処置が十分に出来ないので、全身麻酔をかけることが必要な場合もあります。直接耳に対して行う治療のほかに、前述したように鼻やのどの治療も重要です。また、通気により中耳腔陰圧を解消しておく必要もあります。強く鼻をかむと鼻やのどの細菌をさらに中耳に送りこむ結果となりますので注意して下さい。
 中耳病変が慢性的となり、上記の治療を繰り返しても液が反復して貯留してくる場合はさらに積極的な治療が必要になります。それは、中耳腔の排液と換気を目的として鼓膜にチューブを挿入する方法です(鼓室内チューブ留置術)。鼓膜切開をして液体の排除後、そこに小さなチュ−ブを差しこみ固定させます。多くは外来手術として行われますが、子供で協力が得られない場合は全身麻酔下に行われることもあります。チューブ挿入期間中は鼻およびのどの治療、通気などを行います。チューブは通常数ヵ月後、自然に排泄されます。
 小児の滲出性中耳炎は、10歳前後で自然に治癒する場合が多いので、繰り返しやすい場合はそれまで定期的に診療し、分泌液がたまれば、その都度排除していく必要があります。滲出性中耳炎を放置すると、慢性中耳炎に移行する場合もあり滲出性中耳炎のうちにしっかり治療しておく必要があります。
                       (患者さんにお渡ししているパンフレットから) 



諸注意

@滲出性中耳炎とは鼓膜の内側に液体がたまっている状態です。自然に治る場合もありますが、子供に多いために知らないうちに難聴をおこしていることも多くありますので、専門医による診察が必要です。                                

A何度も滲出性中耳炎をくりかえしている場合や長期間、液体がたまっていると思われる場合は、早めに液体をぬく必要がありますが、通常は1〜2カ月は自然に液体がひく事もあるので鼻やのどの治療をしながら様子をみます。                      

B滲出性中耳炎は、鼻やのどの炎症がもともとの原因になっています。通院による治療は、鼻の処置とネブライザーによる薬の吸入と薬局から出されたお薬の使用です。成人や小学校以降であれば、鼻から耳に空気を通す耳管通気を行なうことも出来ます。通院による治療は週に2〜3回行なうと効果的です。                          

C鼻やのどの治療を行なっても液体がぬけない場合には、鼓膜切開を行ないます。通常は10分程度の鼓膜表面の麻酔をしてから行ないますので痛みはありませんが、切開後に液を吸引する際に音が生じます。小学校入学前の児童でも十分可能ですが、恐怖心があり出来ない場合は、切開せずにさらに様子をみるか慣れるまで通院していただくことになります。また難聴が高度の場合で乳幼児やどうしても切開ができない児童の場合は全身麻酔下に切開を行なう場合もあり、そのような場合には適切な病院を紹介させていただきます。
                                                  
D鼓膜切開を行なっても液体が再びたまってくることがあります。このように1回の鼓膜切開で治らない場合は、2回、3回と鼓膜切開を行なうことがあります(切開後、穴が残ることは通常ありません)。普通はこのように多くても3回程度の切開を行なえば治ることが多いのですが、さらにたまってくる場合には液をぬく目的でチューブを入れることもあります。                                             

E滲出性中耳炎をくり返しやすいグループに鼻すすりの多い児童があります。鼻すすりの習慣を改めて、一方ずつ鼻をかむ習慣をつけることが必要です。             

Fスイミングは滲出性中耳炎の急性期(痛みのある時期など)や鼓膜切開をした直後は出来ませんが、その他の期間は原則として問題ありません。


滲出性中耳炎関連ファイル                    

院長の出版物:ほのぼのマイタウン72・73号 滲出性中耳炎@、A