S500の長〜〜い治療記録。 (完成記録)パート1


 2000年7月19日、記念すべき日がやって来ました。(S500がやっと私の手元に帰ってきました。) でも他人には何の記念にも成りませんし家族には邪魔なゴミが増えた日、くらいにしか思われないでしょう。

 でも、「いいのです。」この位の事でめげてはまだまだ続くこれからの仕事を完成できません。

 なぜなら、本日やっとボディの塗装と内装が仕上がった所です。チョット退屈でしょうが、昔話に少しお付き合い下さい。
 このS5が私の手元に来たのが約25年前に成ります。(遠い昔に成りました、私も若かったナ〜、まだ 15歳だったもの〜、というのは真っ赤なウソ!!

当時、名古屋の日産のディラーに勤めていた覚田氏(今回のS5のレストアショップのオーナー)から連絡を頂き、とにかく引き取りに行きました。確かあの場所は錦三丁目 (名古屋の夜の一番の繁華街)の駐車場に有りました。一応屋根は有りましたが、上側がスレートが有るのみで前後左右には何も無し。 と 言う状況に置かれていましたので、ボディの前後は雨ざらし状態の為前後がボロボロになりフレームまで錆びが進行しており、特にフロント部分は酷く、先端のボディマウントの取り付け部は腐って無くなっていました。

 そして、S500現役時代にS5をはやばやと手に入れた喜びもつかの間、半年も経たないうちにS600に変わるという悔しい思いをされた方々が沢山居られた様で、このS5にもそんなオーナーの気持ちの表れが、この車のフロントマスクに見えました。それは、フロントグリルがS6の物に交換してありました。それも、フロントマスクはS5のまま内側に折り曲げ、そこにS6のグリルが取り付けてありました。 ところが、このS500はオーナーが手放された後、一身上の理由から行方不明となり、連絡が取れず書類とウッドのステアリングホイールも共に行方不明と成っていました。

 とにかく、その時のHSOCのメンバー5〜6人に協力して頂き車庫に納めました。その時の車の状態は、先程書きましたように、ちょっとエンジンをいじって、外観を洗って車検を取るのはとても不可能な状態です。ましてや一番肝心な書類が有りません。
 装着されているパーツは、フロントグリルを除けばオリジナルのままでした。「さあ、どうしよう」 その25年前でもS500は希少な車でした。

 こんなある日の一コマからS500との出会いが始まりました。

 まあ、しばらく考えることにして、と置いてある間、4〜5年位過ぎた所、HSOCのメンバー鈴木さん、そう今年春(H12年)に亡くなられた若かれし頃のガレージ鈴木の社長、まだ ガレージを始めて間もない頃と思います。車探しに全国を飛び歩いておられたので頼んで見ました。

条件は書類付S500、待つことしばし、一年近くたったと思います。1981年頃と思いますが「やっと、見つけました」との連絡を受け、数日後の日曜日、いよいよご対面となりました。

 2台目のS500は、キャリアカーにて運ばれて来ました。一目見てハッと息を呑むようなボローッ。
内心 「どうしよう〜」と言うような心の動揺は少しも顔に出さず、一生懸命探していただいた鈴木さんに感謝をして、とにかく車庫に納めました。
 またまた、この為に家族の冷たい視線の温度がドーッと下がったのを感じました。

この時の外観を少し書き出して見ます。

* ボディの外観
フロントグリルは、外してトランクに入れてあり、フロントフェンダーは左右共下側にサビた大きな穴、モールはフロント一本欠品、この時は軽く考えてモール一本位何とでも、と思ったのですが、25年後にとんでもない事になるとは・・・・


ボンネットを見ますと、何やら見慣れない直径20センチ位の洗面器上の物が溶接してありました。「なんだろう〜?」と思いボンネットを開いて見ますと、何とそこには見慣れぬエンジンが鎮座し、でかいキャブが取り付けられていました。そのキャブをクリアーする為の「パワーバルジ」だったのです。

S8に先駆けること数年前にこんなパワーアップが有ったのです。エンジンに付きましては後ほど。
ボディは幸いにもドア下のステップ部分にはたいした腐りは有りませんでした。



リアフェンダーも少しのサビで大きなダメージは無いようでした。
 次はテール部分ですが、これがまた少々問題ありの眺めで昭和40年代の初めにマツダのファミリアロータリーが発売され、そのテールランプがSに良く似ていて一回り大きい物でした。これをリヤーのパネルを切り取り、大きなテールランプとおまけに大きなバックランプが2個づつついていました。



エンジン
先程少し触れましたが、ボンネットの膨らみはキャブレターのせいでした。ボンネットの下には見慣れぬキャブがあり、よ〜く観るとソレックスのダウンドラフトのキャブでした。縦型の為、そのままではボンネットに当たる為ボンネットをくり抜くという改造がして有り、その下のエンジンはL700が載っていました。エンジンはボディより少し新しく成りますが、まあ 500には変わりは無いので、先の500のエンジンを組むことに決定。
 でも、「この車のオリジナルエンジンが観たかったなあ〜。」と思いました。

*   色  
俗に言うブリティシュグリーンの名残りが艶消しとなって残っています。ハゲたというか、割れたというか、塗装の断面を見ますとパテと塗料が何層にも重なり、鉄板が無くなってもボディは崩れないような厚塗り、元色(オリジナル)は白でした。

*内装&パーツ

メーター、スイッチ類は一応揃いシート(赤)も有りましたが鉄板のフレームが折れている様でグニャグニャでした。内装は赤、後ろの棚はグレー。









と こんな所が観察したところです。ここからがまた長〜い月日を掛けてのパーツ探し、オーバーホール期間になります。後々書いていきますが、車をバラして判った事ですが初期の頃のS5でありかなりの珍車と言う事です。


ペンネーム 絵須 五百