読書録(SF 編)


2001年4月以降の読書録(SF 編)

『ハイペリオン(上/下)』、 『ハイペリオンの没落(上/下)』
(ダン・シモンズ、ハヤカワ文庫 SF)

面白いじゃあないか。 構成/舞台/登場人物/小物等全てにおいて文句がつけがたい 1990年代ベストSF第1位にふさわしい傑作。 壮快なラストも最高。 文庫化されるまで読んでなかったのは不覚であった。

複数の超光速手段があったり(『エンディミオン』 ではさらに増える)、 (〈テクノコア〉、アウスタ−は人類の亜種だとして)人類だけの銀河が 舞台なのに〈獅子と虎と熊〉という超知性体(?神?)を登場させたり、 時間パラドックスを気楽に使ったりと、 スペース・オペラ的にかなり危ない(B級になりそうな)のに それを感じさせないのは作者の力量ゆえか。

ともあれ、これぞSF、これぞスペース・オペラ
何より、僕に数年振りに SF を読む気にさせたのが凄い(笑)。感謝。


『エンディミオン』、 『エンディミオンの覚醒』
(ダン・シモンズ、早川書房)

『ハイペリオン』2部作の続編。 荘厳なイメージの『ハイペリオン』とうって変わって "お姫様と騎士の冒険譚" とか "惑星巡訪" とかを詰め込んで明るくテンポ良く仕上ってる。 小説としては『ハイペリオン』2部作が圧倒的に上と思うけど、 十二分に面白い。

最初読んだ時は、ラストはともかく、 予定調和もエンディミオンの性格が気になっていたけれど、 読み直して感想がちょっと変わった。 これは "エンディミオンの冒険" じゃなくて "アイネイアーの選択" の物語 じゃないかと思えたから。 予定調和は救世主である彼女の選択による必然だし、 エンディミオンのような性格でなければ(生まれる前から自分の運命を知っている)彼女 と愛しあうことはできないのだろうと思えた。
「ロール、愛してる」 アイネイアーの最後の言葉。


『闇の左手』
(アーシュラ・K・ル・グィン、ハヤカワ文庫 SF)

'60年代の傑作SF。舞台は両性具有人類の惑星。 主人公は男性だけど、しばらく女性に思えてた(笑)。 作者が女性だからかな、ちょっと主人公の性格が女性からみた 男性の一側面という感じがする。男ってばもっと単純だって(笑)。 その他、西暦49世紀にもなって…という箇所もあるけれど小説としては傑作と思う。

もう少し、ル・グィンの小説を読んでみよう。


『月は無慈悲な夜の女王』
(ロバート・A・ハイライン、ハヤカワ文庫 SF)

超有名作だけのことはある。

『闇の左手』 や『歌う船』、『竜の戦士』もだが '60年代の小説がほとんど 違和感なく読めるというのは凄いと思う。 共通しているのは舞台となる世界設定が非常にしっかりしていることだろう。 特に、SF は何でもありなので作家の力量がもろに出るし。


『リングワールド』、 『リングワールドふたたび』、 『リングワールドの玉座』
(ラリイ・ニーブン、ハヤカワ文庫 SF/早川書房)

前作にあたる『中性子星』、 『プロテクター』等が見つからないので 仕方なくこっちから読む。 『リングワールド』は名作といわれるだけあって面白かった。 まだ続きがあるようだけど、『〜ふたたび』以降はちょっとイマイチ。 『〜の玉座』ともなるとちょっと新鮮さがないし、 それに、どうも登場人物への愛が感じられない。 プリルちゃん死なせたのが許せないだけかもしれないけど。 しかし「リシャスラ」ってのは(^^)

『SF の殿堂 遥かなる地平(1/2)』
(ロバート・シルヴァーグ編、ハヤカワ文庫 SF)

ハイペリオン』、 『ゲイトウェイ』(フレデリック・ポール)、 『歌う船』(アン・マキャフリィ) の外伝他、 しかも作者本人による解説付き、だなんて…買っちゃうじゃないか…。 で、手元にあるシリーズを再読しそうになっちゃうじゃないか…。 でも、こういうのがあるのがシリーズを読んでいる人への御褒美なんだよなあ。 (でも、『ゲイトウェイ』はほとんど忘れていた…。)

『〜1』の方はついで。 〈エンダー〉シリーズとか 〈知性化〉シリーズ も読みたくなったが、ちょっと癖がありそうだなぁ。


『所有せざるもの』
(アーシュラ・K・ル・グィン、ハヤカワ文庫 SF)

SF としてしか表現できない物語だけど、いわゆる血湧き肉踊る SF じゃない。 重いし考えさせられるけど、こういうのも好き。

ともにアメリカを代表する女性 SF 作家であり共通点も多い マキャフリィとの作風の違いがなんともいえない。


『塔のなかの姫君』
(アン・マキャフリィ、ハヤカワ文庫 SF)

後にシリーズ化されたものやシリーズの外伝からなる短篇集。 この本が先に出ているとはいえ、〈パーンの竜騎士〉や〈歌う船〉 シリーズとの訳語の違いがちょっと悲しい。 『フリーダムズ』(『パレヴィの茨』の長編化)や 〈九星系連盟〉シリーズ(『塔のなかの姫君』の長編化) も読むかなぁ。

改めて思ったけど、マキャフリィってテレパシー好きだなぁ。


『中性子星』
(ラリイ・ニーブン、ハヤカワ文庫 SF)

やっぱりシリーズものは順に読むべきだとちょっと反省。

『ファンタジーの殿堂 伝説は永遠に2』
(ロバート・シルヴァーグ編、ハヤカワ文庫 FT)

いわゆる剣と魔法のファンタジーは、あまり読まないけれど、 マキャフリィの『パーンの走り屋』目当てで購入。
才色兼備の少女が主人公でハッピーエンドというのは いつものパターンだけど、孤独じゃないってのは珍しいかもしれない。

ところで、 〈パーンの竜騎士〉シリーズは、完全に SF だと思うんだけどなぁ。 遺伝子操作で生み出された テレパシー/テレポート/タイムジャンプ能力を持つ竜と竜騎士、 という基本設定に加えて、最終的には宇宙船とコンピュータまで出てくるし。 そろそろ続編が登場するようなので期待。


『ゴールド』
(アイザック・アシモフ、ハヤカワ文庫 SF)

とりあえず、買っておく。
# 後半のエッセイ部分はまだ読んでいない。

『フリーダム・ランディング −到着−』、 『フリーダム・チョイス −選択−』、 『フリーダム・チャレンジ −挑戦−』
(アン・マキャフリィ、ハヤカワ文庫 SF)

マキャフリィにしてはかわいい女性主人公(ただし才色兼備はお約束)。 その分、男性パートナーが反則気味(っていうか地球の男はやってられません)。 普通ならカッコ良すぎるくらいのミトフォードが普通に見えるもの (曲がりなりにも最後に思いを遂げられて良かったね、って感じ^^)。

結局、名前が出た味方の登場人物が誰も死ななかったとか、 人数が増えても味方の団結がくずれないとかいう、 レジスタンス物/開拓物にはあるまじき大甘の展開といい、 あんなにあっけなくエオス人が打倒されていいんかい(個体バリアぐらい持っとけ)とか、 幾つもの謎(〈ファーマーズ〉、エオス人、キャテン人と人間の類似姓、 閉ざされた峡谷、等)がそのままなのに続編を期待する気にならないとか、 傑作とはいいがたいのに3冊(厚め)まとめて一気に読めるとか、 何か変な小説です。


『銀の髪のローワン』、 『青い瞳のダミア』、 『ダミアの子供たち』、 『ライアン家の誇り』
(アン・マキャフリィ、ハヤカワ文庫 SF)

〈九星系連盟〉シリーズ。
マキャフリィの典型的な小説だけど、 主役達の持つ超能力(テレパシー/テレポート/テレキネス)が凄すぎ。 最初こそ倫理とかトラウマとかで抑制されているものの レイヴンの登場以降はそんな制限もなくなってもう無敵。 単独で恒星間(最後の方では少なくとも銀河の端から端まで)の テレパシー/テレポートが使える上に融合すれば超弩級戦艦でも テレポートさせることができるなんて。 加えて一族は暗示能力やらヒーリング能力やら予知能力まで持ってるし。
"恋愛小説"である最初の2部はともかく、 スペースオペラ的な後半の2部は 敵である〈ハイヴ〉や味方の宇宙艦隊が可哀想に思えてしまう。 (パーンの竜騎士達も可哀想かも。)

『エンダーのゲーム』、 『死者の代弁者(上/下)』、 『ゼノサイド(上/下)』、 『エンダーの子どもたち(上/下)』、 『エンダーズ・シャドウ(上/下)』
(オースン・スコット・カード、ハヤカワ文庫 SF)

まだ、『エンダーのゲーム』しか読んでないけれど、 偶然にも〈九星系連盟〉シリーズ の後に読んだものだから、ちょっと妙な感じ。 敵は昆虫型種族(設定もほぼ同じ)で、それと戦うのは"天才"少年少女達という 設定が同じなのに、こうまで違うものかなぁ。 もし実際に同じ状況(対話できない異星人の侵略)があったら 人類はどう反応するのだろう。 やっぱり"ゼノサイド"するか"ゼノサイド"されるのかなぁ。

(全部読んだ感想)
『エンダーのゲーム』、『死者の代弁者』は 2年連続ヒューゴー・ネヴュラ賞ダブル・クラウン だけのことはあると思ったけれど、 『ゼノサイド』、『エンダーの子どもたち』はいけない。 アイデアが『死者の代弁者』で出尽くしているというのもあるし、 登場人物の運命にも納得がいかないというのもあるけれど、 中国系惑星〈パス〉、日本系惑星〈神風〉がどうにもいけない。 ともに伝統云々を言っているのに全然違う。 (中国についても絶対違うってことだけは確信がある。) あまりにもキリスト教(モルモン教?)にとらわれている。 道教の贖罪や神子とかヤマト魂とかはまだ笑ってすましたけど、 原爆の解釈は酷い。 ああいう解釈(原爆や戦争に殺人以外の意味があるという解釈)が 存在するかぎり"ゼノサイド"の可能性があるというのが分からないのかなぁ。
ともかく、必要があって中国や日本を出したのやらもうちょっと考証すべき。 宗教や倫理を出すのならキリスト教やアメリカ的解釈から一度外れるべき。 シリーズ全体のためにも、もったいないと思う。 同じ様に宗教にからめて中国系惑星〈天山〉や一休の詩を出してきた 『エンディミオンの覚醒』 は、かなり頑張っていると思ったんだが。

最後に読んだ、 外伝にあたる『エンダーズ・シャドウ』は良かった。 個人的にエンダーよりビーンの方がはるかに共感できるのでそのためでもある。 ビーンが主人公の続編なら読んでみたいけれど、 ラストのままでもいい。


『サンダイバー』、 『スタータイド・ライジング(上/下)』、 『知性化戦争(上/下)』 (デイヴィッド・ブリン、ハヤカワ文庫 SF)

〈知性化〉シリーズ。未訳の続編(3編)あり。
設定に引いていて読んでいなかったけれど、 世界設定がぎりぎり破綻してなくてなかなか面白い。 ただ作者のサービス精神がない(;_;)。もうちょっと謎解きしてくれ〜。 登場人物(?)ではウサカルシン最高。 対して敵対知性種族の皆様の知能指数が低すぎ。 あれじゃ暴走族のなわばり争いと変わらん。

"知性化" に関しては遺伝子操作は(向こうから)要望がない限り やってはいけないと思う。(作品世界の全否定になっちゃうけど^^)


『風の十二方位』、 『内海の漁師』 (アーシュラ・K・ル・グィン、ハヤカワ文庫 SF)

短編集はちょっと苦手なので読みかけ。

『故郷から10000光年』 (ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、ハヤカワ文庫 SF)

作者は波乱万丈のすごい人生を送った"女性"

『愛はさだめ、さだめは死』 (ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、ハヤカワ文庫 SF)

作者が女性だとばれてない頃に読んだ男性の読者が、 女性だと知った時には衝撃とともに背筋に寒いものが走ったんじゃないだろうか。 男性の視線でこれだけ書ける女性がいる事に。 天才ですね。

『たったひとつの冴えたやりかた』 (ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、ハヤカワ文庫 SF)

初期の短編集とは趣きが違う。 女性的というか救いがあるというか。 同じ未来宇宙を舞台にした中編集なので長編を期待した人多かったんだろうな。 残念ながら遺作になってしまいましたが。
(しかし、この川原由美子さんによる少女マンガな挿絵。 良く合っているんだけど、イメージが固定されてしまう^^;)

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (フィリップ・K・ディック、ハヤカワ文庫 SF)

古典中の古典だけど読んでなかったので。

『竜の挑戦(上/下)』 (アン・マキャフリィ、ハヤカワ文庫 SF)

〈パーンの竜騎士〉シリーズ本編の待望の新刊(1991 年上梓)。
完全に SF している。もうファンタジーとは呼ばせない?

これまでの登場人物総出演に加えて、 外伝『竜の夜明け』からの伏線も絡めて、 本編としては完結したっぽい。 一応、シリーズはまだ続いているみたいだけど、外伝なのか続編なのか不明だし。 どっちにしても早く翻訳・出版して。


『変革への序章(上/下)』 (デイヴィッド・ブリン、ハヤカワ文庫 SF)

〈知性化〉シリーズ。 〈知性化の嵐〉3部作の第 1部。
何人もの登場人物(登場知性体?)の視点から語られるので、 最初はついていくのがちょっと大変。 ヒト以外の種族についてはヒトの言語〈アングリック〉を習っているという 設定のためか、なかなか人間らしくて(^^)面白い。
ストーリーは、さあこれからというところで、第 1部は終り。 『SF の殿堂 遥かなる地平』 所収の『誘惑』へと続くのだろうけど、 お願いだから早く第 2部以降を出して…