新高砂
【解題】 謡曲『高砂』から、もっとも有名な尉と姥の住吉への舟の道行きをそのまま歌詞としたもの。 【解析】 ○高砂 や、この浦 舟に帆を上げて、|月 |もろともに| 出で 汐 の 、 高砂の浦! この浦で舟に帆を上げて、|月の動きと|いっしょに| 満ちてくる汐に乗って| |港を出て 、 ○波の|あはぢ |の島影や、 |遠く| 鳴 尾|の沖 |過ぎて 波の| 泡 のかなたに見える| | 淡 路 |の島影!、それも|遠く|なる 、 | 鳴 尾|の沖を|過ぎて、 ○はや |住の江に|着き|に| けり 、はや |住の江に|着き|に| けり。 早 くも|住の江に|着い|た|ことだなあ、 【背景】 謡曲「高砂」の荒筋 肥後の国の一の宮(一番格式の高い神社)、阿蘇神社の神主の友成という人が、都に上る途中、有名な高砂の松を見ようと高砂の浦へ立ち寄る。そこに尉(じょう・おじいさん)と姥(うば・おばあさん)が、熊手と箒を持って松の下を掃除している。友成が、この二人に、高砂の松と住吉の松が相生(夫婦)の松と呼ばれる理由を尋ねると、二人はその由来を語り、実は自分達はその相生の松の精で、これから住吉に行き、そこで待っていると語り、舟に乗って姿を消す。友成がこの二人を追って、住吉に行くと、二人は住吉の浜で神の姿を現わし、荘厳な神舞いを舞って、民の繁栄、君の寿命長久を寿(ことほ)ぐ。 友成の、高砂から住の江までの舟旅(道行)を歌ったのが、この歌詞の部分である。 |
作詞:世阿弥 作曲:戸川勾当 【語注】 高砂 播磨の歌枕で、松の名所。兵庫県の明石と姫路の中間あたりの浜辺。 月もろともに 潮の満ち干は月の引力によって海水が引き上げられることから起こるので、月の動きの後を追うように潮が満ちる。 鳴尾 兵庫県西宮市の武庫川の川口あたりに、鳴尾の地名が残っている。甲子園球場のある所。 住の江 住吉の入江なので住の江と言う。住吉大社のある大阪市住吉区の海岸で、松の名所。 |