桜川

【解題】

 
桜川は、茨城県(常陸の国)の桜川市と栃木県(下野の国)境界の雨巻山の中腹に源を発し、加波山と筑波山の西麓を
南流して、霞ヶ浦に注ぐ。昔は下流を男女の川と呼んだ。古くから桜の名所として知られ、歌などにも多く詠まれている
。また、謡曲『桜川』は、桜川磯部稲村神社に伝わる花見噺『桜児物語』を本にして世阿弥が作ったものである。この曲
の歌詞は、謡曲の一部を抜き出したものである。

【解析】


○あら玉の 、春   は|氷も解け初(そ)めて、浪の花こそ |寄す  |らめ と    、
 あら玉の |春になると|氷も解け始   めて、浪の花  が|寄せ来る|だろうと思うほど、
                                           
○      瀬々の白波 |しげけれ| ば 、霞 ぞ |流す         |浮島の、げに面白   や 、
 あちこちの川瀬 に白波が|多く立つ|ので|霞ヶ浦に|
                     |霞を  |流したように浮いている|浮島が|実に風情があるなあ、

○昔の春も|今  も|なほ 、変らで| 花の麗はしく  、水も濁らぬ 桜川    。
 昔の春も|今の春も|やはり|変らず、桜花が麗わしく咲き、水も濁らない桜川であるよ。

【背景】

 浪の花

○つね    よりも|春べになれば   桜河  |花    の浪こそ |間 なく|寄す|らめ
          |春 になると|あの桜河では|花が浮かんだ浪  が|
 いつもの川浪より |                        |間断なく|寄せ|ているであろうよ。

                                   (後撰集・巻第三・春下・107・紀貫之)

作詞:石崎某
作曲:光崎検校





【語注】


あら玉の 新玉の。「年・月・月日・春」などにかかる枕詞。
浪の花 桜の花びらが沢山浮かんだ川浪⇒背景










寄すらめ 「らめ」は現在推量の助動詞。目の前に見えない遠くのことを、今頃はこうだろうと推量する。

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